二十三話 ブリーフィング
目が醒めると、部屋は静まりかえっていた。
おそるおそるベッドから降りると、下の段でアクロバティックな上体反りの巨体が目に止まる。
宣言通り本当に寝相が悪かった。
床に打ち付けただろう頭を揺さぶってアキを起こす。
そんなタイミングでノックが響く。返事を待たずに部屋の扉が開いた。
「いつまで寝てるのよ」
ナツがハルを連れている。
ナツは部屋を見渡した後、床にしゃがみ込んでいたフユと目が合う。
「これからブリーフィングだって」
「ブリーフ?」
「言わせんな」
フユのつまらない聞き違いにナツは激怒した。
「チェリさんが呼んでるの。すぐ行かなきゃ」
そう言って部屋には入らず去っていってしまった。
「おい、アキ起きろ」
置いて行かれてはたまらないので、ここは武力行使もやむを得ない。
幾度か頬を叩いた後、起きないので頭を少し持ち上げる。
手を放すとゴツッと重たい音が鳴る。見かけによらず中はよく詰まった頭のようだ。
そこまでしてやっとううっと苦しそうに顔をしかめる。
目をさましたアキを連れ立って、ナツを追いかけた。
「ああ、やっと来たね」
ついた部屋は薄暗く、奥にいたチェリはモニタの光でぼんやり青白く照らされていた。
並んだ机と椅子に着席するよう勧められる。
「資料は配らないわ。一生懸命憶えて」
にこりと口元に笑みを浮かべると、突然説明を始めた。
「今回の勅令は要人の保護よ。地上鉄道の中で行うわ」
彼女が前方のスクリーンを見やると、写真が数枚投影された。
「貸し切り用特別車両。元々地上鉄道は誰も乗らないから貸し切りみたいな物なんだけど、一般人を巻き込むことがないから好都合ね」
写真に写る緑の曲線を描くボディが優雅だ。一見して普通の電車ではない、観光トレインのような雰囲気。
電車に胸躍らせるだけの幼い子どもではない。フユはわざと嫌そうな顔を浮かべた。
「どうして僕らがそんな事を」
「あなた達が参加する事自体が勅令だから」
冷静に告げるチェリの目は変わらずサングラスが覆い隠している。
「理由を後付けするなら、要人と一緒にいる敵幹部への牽制かな」
ふっと怪しげに笑みを浮かべた。
対照的にナツの機嫌が悪そうだ。
「敵の幹部?」
「そうよ。フユくんはこの前会ったでしょ。木の弟って馬鹿なお面付けていた人」
ナツ達に向かって肯定を示す。
「あれの仲間よ。今回の敵は、金の兄」
「カノエ?」
「そう、金の兄。裕福なのがぱっと見てわかるわ」




