二十一話 基地の外観
「あーはっは、サイコー」
転がり落ちるようにして助手席から出てきたザキは長く続いた緊張のせいでハイになっている様子だ。
憔悴したシュウも後部座席に向かって弱々しく降りていいぞと声をかける。
かというフユも歯を食いしばりすぎたのかあごに変な痛みを感じる。
「何かの建物の跡、ですか」
車から降りると周りの石垣を見てハルが呟く。
「そうよ」
突然聞こえた女性の声に振り返ると、いつの間にやら背後にチェリが立っている。
「おつかれ、気付いてくれてよかった」
にっと笑うと、くるりときびすを返す。ポニーテールを左右にゆらし、先導するように歩き出した。
ザキがひょいひょいといち早くついていく。
フユ達もついていこうとしたときに、先頭の彼女があっと立ち止まり振り返った。
「息もつけないままで悪いけど、シュウは見張りをお願い。車の中でも良いから待機してて」
「一人で見張り? 珍しい命令もあるな」
「基地は追っ手を気にしているみたい。でも、この子達のこれからもあるしあまり人を割けないの」
ちらりとフユ達の方を黒いサングラスがうかがう。
「車だろうと外だろうと、仕事がはっきりしているなら何所でも良いさ」
慣れっこだと肩をすくめながら苦笑している。
本当に悪いねとチェリの方も苦々しそうにしながら駐車場から離れていく。
そして急な坂を滑り降りると、小屋とも呼べない粗末な建物があった。山の管理に使う道具でも入っていそうだ。
本当に全員入れるのか不審に思いつつもぞろぞろとその中に入っていく。
入ってみて驚いた。
真っ暗な部屋が奥まで続いている。トンネルのようだ。
このトンネルを隠すように崖に面してあばら屋が建っていたようだ。
薄ら寒い中、チェリがペンライトをかざす。中途半端に周りが浮かび上がるのが恐怖心を煽る。
その細く頼りない明かりの中でナツの派手なヘルメットを弄る。
ナツの頭に乗っけると、チェリはボタンを押した。それまでとは比べものにならない明かりが辺りを照らし出した。
光源が眩しすぎてとてもじゃないが直視できない。壁を見つつ、少し頭を下げた。
「うわ、まぶしっ」
点けた本人もそう言っている。
音の響かない湿気た床はほどよい落ち着きをもたらしてくれた。
少し歩くと、それまで手を伸ばせば届きそうだった低い天井から開けた場所に出た。
そして今いる位置も確認できた。長い長い通路がある、奥の方には巨大な建造物がある。
ナツの明かりを頼らなくても、光が見える。
「この基地は最大規模の施設なの」
青白く浮かび上がる地下都市は恐ろしいほど近未来的で、逆にそこへと至る道が歪で車輪向きではなく、自転車すら通りにくそうなのが原始的だった。
岩を避けながらチェリは先を急ぐ。
「到着したら少し休みをあげるように言われているの。元気でない?」
ひゅーひゅー言うのどを押さえながら、フユは力無く笑ってしまう。
「元気出たみたいね。オーケー行きましょ」
軽やかに岩の向こうへ姿を消してしまう。
おいていかれそうな不安を振り払うように全身を使って走った。




