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十八話 突然の襲撃

ハクとチェリが外に出た後、暇をもてあましてプレハブの中を徘徊する。

ザキもシュウもパソコンの前に座って仕事をしているのでつまらない。

本棚に並ぶ技術書だったり経営の本だったりの背表紙を眺めていると、背後からコマのついた椅子が動く音がした。

ザキが立ち上がりポットのお湯を汲んで戻ってくる。

戻ってくるザキと目が合うと、人なつっこそうな笑みを浮かべて話しかけてきた。

「初潜入はどうだった?」

鼻声に近い高音で、非常に陽気だ。

「まあ、びっくりしました」

どう答えて良いのかわからず、小さい声で答えると相手はケタケタ笑った。

「博物館って確か、木の弟の配下による拘留所なんだよねー。いやー迎えに行ってそのまま捕まったりしなくてよかったよかった」

実際には迎えに行って一度捕まった身であるので、反応が難しい。眉間にしわを寄せながらも相手の笑顔につられ苦笑を浮かべてしまう。

そんな愛想笑いもすぐに止めて、聞き覚えのある固有名詞についてザキに疑問を投げる。

「キノトってやつは人の名前なんですか?」

ザキは片眉を上げて、困った様子を見せた後、何を言ってんのと否定する。

「木の弟は役職名だよ。木属性の陰側、甲乙丙の乙とも書いたと思うんだけど、そうだ、ねー先輩。十干の話くらいしてやってくださいよ」

ザキの呼びかけにより、シュウがゆっくり椅子から立ち上がった。

その動きが威圧的に感じたのは、彼の身長があまりにも高いからかもしれない。

「べつに構わんよ」

そう言ってこちらを向くと椅子に座り直す。

さっき感じた威圧感は気のせいだったようだ。

「女神様に許可もらってこなくていいんすか」

「これくらいいいだろ」

はははと笑いあう。何が面白いのかわからない。

「さて、現代の勉強が足りていない子ども達に授業のまねごとをさせてもらうか」

「わーい、シュウ先生の社会科の時間だ」

変な茶々を入れて盛り上げようとしたザキは先生にしばかれた。

「だまっとれ」

「ありがとうございます」

そうして静かになったプレハブ教室だが、外の異音が気になり始めた。

ばたばたと空気が振動する。その音は段々近くなりさっきまでふざけていたザキとシュウが慌ててカーテンを開ける。

「やばい。外に出ましょう」

ザキの声を号令にプレハブ小屋の電気も消さずに、急遽避難が始まる。

シュウが先導するまま外に出ると、見たことがないほど低い高度でヘリコプターが存在していた。先ほどの異音はこいつのせいで間違いない。

それだけではない、遠くを見やると荒れた道路を車の団体がこっちに来ている。

見覚え有る車だ。

それは、一度敵からチェリ達がかっぱらってきたあの五輪のマークっぽい印がついた車と同じ形の物。

シュウは前に奪ってきた防弾ガラスの車の運転席に飛び込んだ。パスコードを入力している間にハルナツアキフユの四人が後部座席に座ると、後ろから来たザキが助手席に飛び乗る。

助手席のドアが閉まるか閉まらないかのタイミングで、目の前に炎をたたきつけられた。

狭い範囲に突如現れた圧倒的な火力は、普通では燃えない物も溶かし、形を変えてしまう。

「あーやばい、バックアップ有りましたっけ」

「舌噛むから喋るなって」

燃えさかるプレハブ小屋を前にしながら、急アクセルを踏んだ車は駐車場を飛び出した。

段差があった記憶はないが、一瞬座席から浮き上がり、その後椅子できつく尻を打つ。

歯を食いしばって衝撃に耐えながら、支柱を持つ手に力を込め場所を確保する。

気絶しそうなほどの速度と荒い運転に、誰もが必死で自分を確保する必要があったため、シュウの舌打ちが聞こえた以外はエンジン音しか聞こえなかった。


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