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プロローグ
何故か遠くで鳴っている目覚ましの音を無視し続けていたら、母さんの怒鳴り声が響いてきた。
寝ぼけた目に映る部屋の様子が見知らぬ場所に思えたのは、この部屋が僕のものになって一月も経っていない事も一つだが、それよりも作業中に寝たことが原因のようだ。
遠く離れたベッドの脇ではまだ目覚ましが鳴っている。
複数に絡み合うコードを下敷きにしていたせいで身体があちこち痛む。寝相で変なものを蹴飛ばしたり、眼鏡が歪んでいないかも気になったが目に見える被害はない。被害探し中に、横に転がっていたぼろぼろのぬいぐるみに目がとまり、思わず口元がにやけた。
昨日は世紀の大発見をしてしまった。中学二年の僕が、世界を変えてしまう発明品を発見してしまったのだ。
学校に着いたらあいつらに自慢しよう。
父さんの遺品から良い物を見つけたのはこれで何度目だろう。
手作り感あふれる電光掲示板と本棚の隅の過激なエロ本をおさえ、今のところトップの成果だ。
……どうもにやけがとまらない。
母さんに悟られないよう、顔を合わせないで用意をすませるとそのまま家を出た。