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one play  作者: kotoha74
7/9

第4Q 開始!

一時間後。入り口側コート上には既に第一試合の選手たちが並んでいた。

「…にしても初っ端から春が相手かぁ」

「なんだ前川、ビビってんのか?」

健司のつぶやきを拾ったのは、この体育館内で最も体つきの良い、肌黒い男だった。

「そんなことないっすよ森下さん。ただ…」

「ただ、なんだよ?」

「こないだのジュースの借りをかいさねぇとなぁって」

言いながら健司は、バッシュの裏を手で拭き、まっすぐに相手を見据えた。


一方のチームは円を描き座っていた。

「…んじゃ最初はそんな感じでやって、後後は臨機応変にやってく感じでいっかな?」

話をしていたのは、先ほど達也と呼ばれた生徒だった。対し周りは頷きを作り立ちあがった。

「んじゃ春、とりあえずお前が引っ張ってけ」

春がわかりましたと答え、そこに顧問が体育館に入ってきた。

「Aチーム、Bチームは整列!」

顧問がセンターサークルに来ると同時に両チームが整列した。

Aチーム

森下 一樹 三年 C

池尾 大地 三年 PF

前川 健司 二年 SF

桐山 翔太 一年 PG

横山 和也 一年 PG


Bチーム

東郷 達也 三年 PG

一ノ瀬 春 二年 SG

日下部 純 二年 PF

里見 拓 一年 SF

米原 大和 一年 C


「これより、第一試合を始める。礼!」

「「おねがいっしゃす!」」


センターサークルの中に二人、そして周りを八人が取り囲んだ。

ボールが宙に上がり最高点に達したところで弾かれる。いや、落とされる。

ジャンプボールを制したのはAチームだった。

対するBチームのディフェンスはワンツーマンだった。

一年桐山、横山のツーガードには同じ一年の里見と米原を、前川には同じ二年一ノ瀬が付き、池尾には東郷が、森下にはチーム一高い日下部がつく。


そのマッチアップを外から見ていた女子バスケ部キャプテン、白石は隣にいた宮地に

「どう思う?このマッチアップ」

コートを見たまま疑問する。その答えは、妥当だと言う面白くもないものだった。

「おそらく攻守が変わってもこのマッチアップだろうな。お前だってこうするだろう?」

「そー言われれば、まぁそーなんだけどねぇ」

つまらなそうに試合を見ると、攻守が変わっていた。マッチアップは宮地の言う通り、変わっていなかった。ただ…

「達也君じゃなくて、一ノ瀬君がボールを運んでる?」


バスケットボールには大まかに五つのポジションがある。

コート上の監督、司令塔と呼ばれるPG(ポイントガード)、外から得点を取ることを主とするSG(シューティングガード)、オフェンスの要となるSF(スモールフォワード)、ゴール付近でのプレイやリバウンドに努めるPF(パワーフォワード)、そしてゴールしたの絶対的存在のC(センター)

それぞれの選手がそれぞれの役割を持ち、うまく機能することで、一つ一つのプレイが動き、より多くの得点へとつながっていく。


しかし、本来PGのポジションとされるところにいたのは、PGの東郷ではなく、SGの一ノ瀬だった。

「…達也お前、楽したかっただけだろ」

マッチアップについていた池尾の言葉に東郷は笑いながら

「人聞き悪いなぁ大ちゃんは。そんなわけないじゃんよ。それに…」

言いながら一度中に押し込み、外に開いてボールを受け取る。

そこから流れるようにシュートモーションには入り…放つ。

「っ!!」

指先から離れたボールは高く弧を描き、リングへと吸い込まれた。

「…その分点取りゃ良いじゃん?」

「こいつ…!!」


「ドンマイな、池尾」

背を叩いてきたのは森下だった。二人はボールから目を離さずに

「わかってるよ、一樹。まだ始まったばかりだしな」

「おうよ。チームメイトだからって遠慮はいらねぇ!」

桐山、前川とつながってきたボールに対し、森下が台形の下の方、左側のローポストでポジションを取った。リングを背にしてボールを受け取った森下は、一度左に行くそぶりを見せた後、右側へと体を滑り込ませた。そのままゴール下へと入り込んだ勢いでシュートまで持っていくが、そこには日下部の手があった。がしかし、その手を物ともせず、パワーでシュートを決めた。

「よっしゃ、森下さんっ!」

「おうよ、前川!」

差し出された手を思いっきり叩いて森下は言った。

「おっし、ここ止めんぞ!お前ら!」

その言葉とプレイに、一年二人の緊張もいくらか解けたようだった。


「相変わらず一樹はごっついな」

スローインを出しながら言う達也に答えるのは

「あのパワーは間違いなくチーム1ですからね」

パスを受け取った春だった。彼もまた笑いながら

「でも、勝ちは譲れませんよね」

ドリブルと共に進みだした。




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