プロローグ
大きな河川をわたる橋の下。そのゴム製の床には、縦14メートル横15メートルの四角が描かれてあり、その中央付近には二分する線の入った円が描かれていた。そしてすぐそばには赤いリング、バスケットリングがあった。
そこはストリートバスケット、通称ストバスを行う場所だった。
そこには今、三つのものがあった。
音と動きと、声だ。
形式は単純かつ王道とも言うべきだろうか。三人対三人。THREE ON THREEだった。
ボールを持っているのは、髪の毛を少しばかり逆立たせた短髪の少年だった。
彼はドリブルでキープしつつ、ポジションをトップから右45度付近まで移動した。
「悪いけんど、ジュースは貰ってっから」
そう言って一度体を左下へと傾け、左手にキープしていたボールを右手にかえ、そのままの勢いでリングへと向かった。
左に行くと見せたフェイクからのクロスオーバードライブだ。
しかし、彼に対するディフェンスはしっかりと対応していた。
ぺたりと寝た髪の少年はオフェンスの少年の進行方向を完全には塞いではいないものの、ボールとリングを直線では繋いでいなかった。
そして、それだけで守りとしては十分だった。
「そうそう抜かれない、よっ!」
ディフェンスが動きを止めると同時に、次の動きが生じた。
「バカッ!後ろ!」
呼び名を呼ばれたオフェンスの少年は声の持ち主へとパスを出した。
そのパスを受け取ったのは前髪をピンでとめた、短髪の少女だった。
そしてその少女はフリーだった。
マークマンがいなかったわけではない。スクリーンプレイの結果だった。
味方が自分のディフェンスの壁となり、その壁を利用して自分はノーマークとなる。オフェンスの攻め方の一種だ。
ボールを持った少女は迷うことなくシュートを放った。そのボールは放物線を描き、パスッという音と共にリングを通過した。
「よしっ」
シュートを決めた少女の手には小さく拳が握られていた。
そしてオフェンス側には「ナイッシュ」や「次ディフェンス抑えてジュース取んぞ」と言った声が生まれ、ディフェンス側には「オッケ、次で決めれば良いよ」や「ジュース、勝つ」と言った声があった。
攻守が交代し、プレイが再開した。