表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

第二章  【007】



  【007】



――次の日の朝。


 俺は寝てる間に『潜在意識』の中で、シッダールタからいろいろと「事の経緯」や「今後のこと」を教えてもらった。

 何だかよくわからないことだらけではあるが、少なくとも「自分は一度死んでいる」ということ、それと「シッダールタの力の回復の手伝いをする」ということだけはわかった。

 現在は、俺の身体の中に「シッダールタ」がいるのだが、普段の生活は前と同じでシッダールタが出てきたりすることはない……と思っていたがそうではなかった。

 自称、「人間界オタク」のバカ(シッダールタ)は、事あるごとに俺に話しかけてくるので、はっきり言ってうるさい。


《『うるさい』とか、そんな冷たいこと言うなよ~零時くん》

「わかった――ウザイ!」

《もっと、ひどくなってるし!》

 こんな感じだ。

「お前さー、そんな何度も俺に話しかけても大丈夫なわけ?」

《? 何が?》

「いや、魔界の悪魔に見つからないのか? てこと」

《ああ。それは大丈夫。だってこの会話は別に力を使っているわけじゃないしね》

「そうなの?」

《ああ。力ではなく、仕組みというか、その~まあ『法則』みたいなもんかな?》

「法則?」

《ああ。君たち人間は言葉でしゃべるだろ? そこに力はほとんど必要としてないだろ? まあ厳密に言えば力を使っていると言えるが、まあ、普通はそんなの意識しないものだろ?》

「ま、まあな」

《それと一緒。ワタシたちは『言葉』ではなく、君たち人間界で言うところの『テレパシー』に近いもので会話をしている。それは君たち人間が『言葉』を使うくらい当たり前に、ね》

「へ、へえ」

《だから会話くらいでは、別に魔界の悪魔には見つからない》

「なるほど」


 そんな感じで、俺はシッダールタと会話しながら学校へと向かっていた。

 しかし周囲から見ればただの「ひとり言」のようなものなので、当然、周囲の生徒からは、

「お、おい……あいつ何かひとり言しゃべりまくってるぞ」

「しぃーっ! 顔も怖いし、なんか危なさそうだから無視しろ、無視っ!」

 と、言っているような顔をしながら、俺から距離をとって歩いていた。


 すると、そんな「危なさそうな俺」は、後ろから声をかけられた。

「おっす、零児。どうした? ひとり言なんかして。頭に後遺症か何か残ってんのか?」

 昨日、事件について俺に気をつかってしゃべっていたと思ったが、どうやら高志はそうでもなかったらしいということに落胆をしつつ、でも、ちょっと気が楽になった俺は、

「お前な~、ちょっとくらい気を使った発言ができないのかよ?」

 と、冗談交じりに返した。すると、

「知るか。もう学校に来るってことは元気になったんだろ? なら、もういつもどおりでいいじゃねーか」

 と、気軽に、でも、すごく気持ちが暖かくなる言葉を返してくれた。

――が、もちろん、そんなことコイツに言えるわけないので、

「ふ、ふん。お、お前は相変わらず……相変わらずだよな~」

 と、嘯いた。

「何、『相変わらず』二回言ってんだよ。意味わかんね」

「う、うっせ」

 そうして俺と高志は、いつもの通学路を、いつもと変わらない「くだらない会話」をしながら歩く。


「零時、高志、おはよう!」

「おう」

「よっ!」

 遊馬は、今日は朝練だったらしく早めに学校に来ていた。

「なんだ? 大会近いのか?」

「ああ、う……うん。まあね」

「?」

 何となく――だが、「歯切れの悪い答え」のように感じた。

「遊馬……何かあったのか?」

「べ、べつに……何もないよ」

「?」

 ますます「歯切れの悪い答え」だったので、さらに詰め寄った。

「本当に何もないのか?」

 すると、遊馬は「キッ!」と目を鋭くさせ、逆に詰め寄られた。

「零時、いつから女性の知り合いなんてできたの?」

「はっ?」

「何っ?」

 俺は遊馬の言っていることの意味がわからなかった。

 高志は単純にバカな期待をした反応だった。

「さっき二人が来る前に、女性が尋ねてきて零時のこと探してたんだよ」

「!?」

 まさか……新手の追っ手、か?

《いや、そうではないだろう。そんな気配はしない》

 シッダールタが答えた。

 び、びっくりした! 聞いてたのかよ?

《当然だ。お前の『心の声』はワタシにすべて届く。それにしても……》

「?……それにしても?」

《予想だが、これはおそらく……》

 すると、教室の入口から零時を呼ぶ声がした。


「あ、零時くん!」

「!?」


 だ、誰だ?

 俺を呼んだその女の子は、小柄で少し頼りない感じで、男なら誰もが「守ってあげたい」と思わせるような、そんな女の子だった。

「れ・い・じ・くん……だぁあぁ?」

 遊馬が普段とは少し違った「黒いオーラ」と「口調」でその女の子に向かって「威嚇」していた。

 どうしてお前が「威嚇」する? やっぱり遊馬の反応はいろいろとおかしいが、そこは触れないようにした。

「お、おい、零児。お前……舞園利恵まいぞのりえとどういう関係だよ?」

「舞園……利恵?」

「た、高志! 『どういう関係』ってそんな言い方……どういう関係なの? 零時。詳しく聞かせて」

《はっはっは……お前の友人、面白いな》

 シッダールタ、お前はちょっと黙ってろ。


「ちょ、ちょっと待てよ。お、落ち着け……特に、遊馬」

「そ、そんな。零時はいつもそう……ボクの気持ちをわかってて」

「……何の話かよくわからないし、わかろうとも思わないし、とりあえず落ち着け」

「遊馬のことはいいんだよ。零時、お前、『あの舞園利恵』を知らねーのか?」

「だから何者なんだよ?」

 高志と遊馬が俺にいろいろと詰め寄っているところに、その女の子(舞園利恵?)が割り込んで入ってきたと思うやいなや、いきなり俺の左手首を掴み、そのまま強引に俺を引っ張っていき教室から飛び出した。

「「えっ?」」

 高志と遊馬はその光景に唖然としていた。周りも似たような感じだった。

 こうして退院まもない零時は「初対面?」の女の子……「舞園利恵」により、言うなれば「拉致」されたのであった。


「ご、ごめんなさい、零時くん!」

「お、おう。少しビックリしたけどよ。だって、そんな子には……見えなかった……から」

 俺は、屋上の扉の前まで「拉致」されていた。

「と、ところで……お前、誰だよ?」

「えっ?」

 そう言うと、その女の子は一瞬、戸惑った顔を見せたが、すぐに我に返り、

「あ、すみません、でした。わたし『舞園利恵まいぞのりえ』と言います。零時くんと同じ一年生でクラスは一組です」

 と、舞園は簡単な自己紹介をしてくれた。

「お、俺は……」

「八峰零時くん、ですよね?」

「ど、どうして俺の名前を? て言うか舞園はどうして俺のこと知ってんの?」

「そ、それはですね……秘密です」

「へっ?」

「ふふっ。今は秘密です。それより……」

 と、少し悪戯っぽい顔を見せた後、舞園は改めて真顔に戻った。

「実は、零時くんにご相談が……あるんです」

「!?」

《やはり、な》

 シッダールタ。

《そんなオーラをこの子から感じたんでね。もしかしたら……と思ったが》

「零時くん、じ、実は……あの……こう言うと、信じてもらえるかどうか、わからないのだけれど……でも、本当のことだから、話を聞いて欲しいの、ダメかな?」

 舞園は、『下から覗き込むように』という『素晴らしい角度』からの聞き方をした。

 か、かわいい。

《い、いいね!》

 お前まで言うな、シッダールタ。

「お、おう。俺で良ければ。でも、俺なんかで良いのかよ? 怖くねーのかよ、お前?」

「ううん! そんなこと無い! そんなこと無いよ! むしろ、零時くんじゃなきゃダメなの!」

「えっ?」

「あ、いや……その……と、とにかく話を聞いてくれるかな?」

「お、おう」

《おう、おう、青春してるね~零時くん》

 う、うるせー。

「実は、その……簡単には信じられないかもしれないけれど、実はわたし……幽霊に取り憑かれているみたいなの!」

「!?」

 一瞬、沈黙の空気が包んだ。


「ご、ごめんね。い、いきなり変な事言ったよね? 言ったよね? あ、あの別に、その宗教の勧誘とかそういうのじゃないから……その、えっと、あの……」

「もっと詳しく聞かせろよ……舞園」

「えっ?」

 これって、やっぱり……。

《ああ、おそらく『第一相談者ファースト・コンサルター』だな》

「いいの? 零時くん? こんな変な話、聞いてくれるの?」

「いいも何も……舞園はそれを相談しに来たんだろ? 話くらい別にどうってことねえよ」

「あ、ありがと」

 舞園は俺があっさりと話を聞いてくれることが意外だったようで、少しビックリしていた。

「じ、実は、わたし一週間くらい前から変な夢を観るようになってて……」

「夢?」

「う、うん。その夢って言うのが……」

 と、ここで「始業ベル」が鳴った。

「わわっ。始業ベル! ごめんなさい、零時くん」

「いいって。俺は授業サボっても大丈夫だから。それより話聞かせろよ、舞園」

「れ、零時くん……」

「?」

 舞園は、目を大きく開き、少し顔を赤くして戸惑っているように見えた。

「? どうした舞園? 顔、赤くして」

「れ、零時くん。い、意外と積極的なんだ、ね。ちょっとイメージと違っててビックリ……」

「えっ?」


「コラーーー!」

 すると、階段から大きな声を上げて遊馬が高志を連れて上がってきた。

「よっ、零時。あ、舞園さん、はじめまして~」

「ど、どうも」

「高志っ!」

 すると遊馬が、零時と舞園利恵の間に入り、

「はい、そこまでー! 零時、授業遅刻だよ! さあ、行こう!」

 そう言うと、遊馬は俺の手首を掴み、強引に引っ張っていった。

「わわっ! お、おい、待てよ、遊馬」

「待たない! ボクは待たないよ!」

 そう言うと、遊馬はさらに強く握っている手に力を込めた。

「わ、わりぃ、ま、舞園。とりあえず、今日、放課後にまた教室に来てくれ。話はその時に……な~~!」

 と、俺は遊馬にすごい力で引っ張られながら、舞園にそう告げた。

「あ、はい、わかりました~!」

「れ、零時! そんな約束……ボ、ボクが許さないんだから~!」

「何だよ、零時。やっぱ友達だったのかよ、水臭いな~、そういうこと早く言えよ。ところで……俺たち友達だよな?」

「……」


 遊馬も、高志も、相変わらず「欲望」に忠実で、もう入院のことで気を遣うことは無くなったようで、それは俺にとっては少し安心した部分ではあった……が!

 その分、いつもどおりの「面倒くささ」もまた元に戻ったようで、これから「女の子の相談を受ける」というシッダールタの協力に対して、俺は、先行き不安になっていた。


《いや~、やっぱ人間界っておもしろいね~》


「……」


――放課後、改めて俺は舞園利恵と会って相談を受けた。



週一投稿頑張ります。


よろしくお願いします。

m(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ