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第二章  【013】



  【013】



「まず最優先事項は――ワタシの『力の復活』……つまり『マナの収集』だ」


 と、シッダールタが口を開いた。


「次に『天界の女王アマテラス』の捜索。幸いにもアマテラスはこの『秦氏学園』にいるようなので、ここは皆で手分けして探したいと思っているのだが……」

「……はい、おそらく、そう簡単には見つからないなのだぞ」

 マリアも舞園と身体を入れ替わってシッダールタと会話をしていた。

 俺と舞園はその二人の話を自分の身体の中で聞いているという「奇妙な状態」にあった。

「うむ、そうだな」

《な、何でだよ?》

「『天界の女王アマテラス』は人間に紛れる能力がかなり高くてな……俺たち天界の者でもそう簡単にみつけられないほどなんだ」

《でも、お前ら天界の人たちってテレパシーが使えるんだろ? それで話かければいいじゃねーか?》

「もちろんそれは可能だが……だがしかし、今の天界と魔界の衝突が起きているこの状況で、アマテラスは相当に『警戒』していると考えられる。ただでさえ、臆病なやつだからな……」

《?……お前、そのアマテラスってやつのこと詳しいのか?》

「!?……そ、そんなことはないっ!」

 シッダールタは一瞬ハッとした後、思いっきり否定した。

《?……なんでそんなに全力否定なんだよ》

「ふっふっふ……何を隠そう、二人は……」

 ここでマリアが嬉しそうな顔をして間に入ってきた。

「わーマリア、やめろーっ!」

《恋人同士……なんですねっ?》

 と発言したのはマリアではなく、舞園理恵だった。

「ぐはっ!?」

 シッダールタは、舞園の言葉に貫かれ倒れこんだ。

「勝者・舞園利恵……なのだぞ」

《一体、何の話だ!》

「うう、舞園ちゃん、それは……言っちゃダメなやつです」

《す、すみません》

「別にいいじゃないですかなのだぞ、本当のことなんですし……」

「ちがーう。あれはアマテラスが勝手に……」

「あれっ? そんなこと言うんですか、シッダールタ様?……それは、アマテラス様を守りし、我ら従属天使アテンダントを敵に回すということになりますなのだぞ?」

「うっ……」

 シッダールタは、どんどん追い込まれ、顔からは生気が失せていた。

「……す、すみません。言葉が過ぎました」

「わかればよろしいなのだぞっ」

《な、何なんだよ、この茶番はっ!》

《天界にも色々あるんですね……》

 と、シッダールタはマリアの謀略に気づきつつも、抵抗することは無理だと判断し、観念した。


「そこで、わたくしマリアはアマテラス様を発見するべく作戦を考えましたのだぞ。名づけて……『シッダールタ様を餌にしてアマテラス様をおびき寄せる作戦』ですなのだぞ~っ!」

《……そのままじゃねーかっ》

《……そのままですね》

「……俺は撒き餌か?」

 三者三様の突っ込みをいただいた。

 いよいよマリアの「謀略」が動き出す。

「大丈夫っ! アマテラス様はシッダールタ様をかなりお慕い申しております。そんな『乙女心』を計画的にご利用すればアマテラス様は喰い付きますなのだぞっ!」

《……サラ金業者かよっ》

《……マリア、黒いっ》

「い、いつもどおりのマリアの調子が戻ってきたな……」

《えっ? あいつ、あれが普段の調子なの?》

《うそっ? そうなんですか? シッダールタさん》

「うむ。これが……筆頭従属天使ファースト・アテンダントたる所以だ」

《うーむ……マリア、恐るべしっ》

《敵に回したくないですねっ》

「……お前ら人の不幸を楽しんでるだろ?」

「というわけでシッダールタ様……早速、明日アマテラス様の捜索を始めましょうなのだぞっ!」

「……まあ、そうだな。そこから行くか」

《ちょ、ちょっと待てよ……『マナの収集』はどうすんだよ? そいつが最優先事項なんだろ?》

「まあ、本来そうなのだが『マナの収集』に関しては、こちらでどうすることもできないからな」

《あ、そうか! 『マナの収集』は『相手からの相談待ち』だから……》

「舞園ちゃん、ピンポーン。そう、つまり、ただ待つのもいいけど、今は『アマテラス捜索』もあるからね。だから『アマテラス捜索』をしつつ、相談者コンサルターを待つというのが最善……なのだけれど」

《……自分が『餌』となって捜索することが怖いってか?》

「う、うるさい。そ、そんなことはないっ。怖いわけ……ない、だろ?」

《声にいつもの『軽さ』が微塵も無いな……》

《で、でも、アマテラス様はシッダールタさんのことが大好きなのでしょう? だったら別にどうってことないんじゃ……》

「違う……違うんだよ、舞園ちゃん。そういうことじゃないんだ……」

《えっ……?》

《んっ……?》

「ウォホン。まーまーシッダールタ様も零時も利恵もいいじゃないですかなのだぞ。とにかく、わたしの作戦どおりにやればきっとアマテラス様はお出になってくださりますのだぞ」


《そう言えば……さ》

 と、ここで零時がマリアに質問をした。

《昨日、マリアが言ってたウチの学校のこと……教えてくれよ》

「ああ、なるほど。その件もありましたなのだぞ」

「そうだな。ワタシも全く知らない。教えてくれ、マリア」

「……そうですね。アマテラス様捜索には必要な情報でもありますので、今、お話しておきますなのだぞ」

《……》

 そうマリアが話し出す中、舞園利恵だけが一人無口になっていた。

私立秦氏学園しりつはたうじがくえん――この学校は一般的な、よくある、男女共学制の学校ですなのだぞ……表向きは」

《「表向き?」》

 零時とシッダールタが一緒に反応した。

《……》

 舞園利恵は依然、黙って反応を示さない。

「秦氏学園の実態……それは『人間界を守護する者』を養成する機関であるのだぞ」

「なんと……」

《そ、それってどういう……》

「つまり、この学校では、『魔界の悪魔』や『堕天使』から『人間界を守るための人間』を養成しているのだぞ」

《う、うそーっ! お、おい、舞園っ……お前、知ってたか?》

《えっ……? う、ううん》

《だよなー。俺も初めて聞いたよ……マジかよ》

《零時くん、あの……》

《んっ?》

 舞園は零時に何か言いかけようとした……が、

「ちなみにっ! この秦氏学園は『魔界の悪魔』や『堕天使』から『人間界を守護する者』を養成するため、『天界』からの協力を受けているのだぞ」

《「協力?」》

「そう……つまり、この学園で教えている『担当官』は『天界の天使たち』が行っているのだぞ~」

《「えええっ!」》

「『担当官』とは、まあ一般の学校でいうところの『先生』みたいなものだが、それらが『天使』たちだ。そして、その先生たちを取りまとめている『大天使』もいる。まあ、これ以上詳しく話す必要は今のところはないので話さないが、まあ、そんな感じなのだぞ」

《じゃ、じゃあ……この学園の中には『天使』がいるってこと?》

「だから今、そう言ったじゃないかなのだぞっ! お前、話聞いてなかったのか?」

《い、いや、そうじゃないけど……あまりに非常識な話だから、さ》

「非常識も何もこれが『現実』なのだぞ。まあ、一般生徒で入学した零時には無理ないとは思うがなのだぞ……」

《ま、まあな。お前だってビックリしただろ? 舞園》

《……》

《?……舞園?》

《わ、わたしは……》

「ごめんねっ! 舞園ちゃん……」

《シ、シッダールタさんっ!》

 すると、舞園の言葉を遮ってシッダールタが割って入った。

「ちょっとショックが大きかったかな? まあ、ワタシも初めて聞かされて多少なりとも驚いているからね。まして『一般生徒』で入学した零時くんと舞園ちゃんであれば言葉に詰まるのも無理はない。大丈夫、心配しなくていいからね」

《シッダールタさん……あたし》

《そうだよ、舞園。驚いているのは俺も一緒だ。まあ、俺的にはまだ半信半疑なんだけど、な》

《零時……くん》

「おいっ! 八峰零時っ! お前、またそういうこと言うのかなのだぞっ!」

《な、何だよっ! 別にマリアのこと疑っているわけじゃねーよ。ただ、あまりにも突拍子もない話だから混乱してるだけだって……》

「本当かなのだぞ~?」

《ほ、本当だって。そう凄むなよ》

「がるるぅ~」

 と、マリアが零時に少し突っかかった後、改めて話を再開した。


「要するに……この学園はそういう『曰く付き』だから『アマテラス様』がここに潜んでいるのも頷けるという話なのだぞ~、わかったか~……そこの一般生徒~」

《て、てめえ~……》

 零時はコブシを握り締めた。

「ちなみに一般生徒よりも、この養成のために入学した生徒たちのほうがこの学園の大半を占めるのだぞ~」

《えっ? う、うそ?》

「ホントなのだぞ~。ちなみにこの育成のために入学した生徒たちには『厳しい秘匿義務』が科せられているから、零時が学校でその話をしても誰も教えてくれないのだぞ~。むしろ、そんな話をしたら『お前、頭おかしいんじゃね?』ってクラスのみんなからハブられるのだぞ~」

《マ、マジかよ……》

「まあ、零時のハブられぶりを見てみたいというのもあるので、別に止めはしないのだぞ~」

《しねーよ。てか止めろよ……。でも、その話が本当なら、まさか俺の知り合いの中にも……》

「まあ、その可能性はあるかもね。でも、聞くのは控えたほうがいいと思うよ」

「いやいやいや……シッダールタ様。そこはあえて聞かせてみるのも一興かと……」

《だからしないっつってんだろっ、コスプレ幼女!》

「何だ、聞かないのかなのだぞ~……」

《当たり前だっ!》

 と零時は一人ふて腐れていた。

《れ、零時くん……わたし……》

 と、小声で何か零時に伝えようとした舞園だったが、

《利恵……大丈夫。わたしたちは『わかってる』のだぞ》

 と、マリアに止められた。

「その話はまた……今度なのだぞ、利恵」

《わ、わかった》


 こうして「丘の上公園会議」は幕を閉じた。




投稿が超遅れてしまい、申し訳ないです。


週一ペースで投稿できればと思っています。

よろしくお願いします。


(*´д`*)

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