4
今日行く場所がお墓であること、お墓参りに付き合ってほしいということを聞いた晴香は、ビックリしながらも、最初想定していたどん引きという感じはなかった。むしろ逆に拓人についての話をしてほしいと言ってくれた。
奏太にとって大事な友だちのことを、もしよかったら教えてほしいと言ってくれた。どん引きするんじゃないかというのは、僕の勝手な思い込みだった。僕は、どこから話せばいいかまとまらないけれどもと前置きをして、拓人のことを話し始めた。
家が隣で、保育園から一緒の幼馴染であること。拓人の2個上の兄である大和を含め、3人でよく遊んでいたこと。
小学校に入ってから、拓人は野球を、僕はピアノを始めたこと。そのことで遊ぶ時間は減ったけれども、相変わらずつるんで、いたずらをしたり、一緒に出かけたりしていたこと。
4年生になって、ピアノと並行してクラリネットを始めたこと。
拓人と大和と3人で高校野球の予選を観に行ったこと。
「あれ?」
僕の家からの最寄駅に近づいたとき、駅にいたまさかの人物にビックリして話を中断してしまった。大和だった。
「なんで…」
「いや、たまたまカーテン開けたら、出かけるのが見えたから。それに、ぼちぼち月命日だし、もしかしたら行くのかなって思ったから。こんにちは。晴香ちゃんだっけ?」
「あの…鎌田さんですよね?」
なぜか晴香は大和を知っていた。
聞けば、晴香の姉さんとバイト先が一緒なんだそうだ。先月出かけた時に、たまたま大和に会い、紹介してくれたんだそうだ。だから、電車で大和とばったり会ったあの時、晴香を見て「山田さん」という言葉がすっと出たんだ…気がつかなかった。
「じゃ、せっかくだから一緒に行きましょうか?」
晴香にニコニコされてしまい、不本意ではあったが、大和を含めた3人で、拓人のお墓に行くことになった。