Sota Side 2
ずっと考えていた。
それで、言うなら今しかないと思った。
「ところで、晴香、明日、暇?」
暇であってくれ。でも暇だったらなんて言えばいいんだ。
「え?」
「だから、明日の日曜日、暇かどうか聞いたんだけど。」
「明日?特に予定ないから暇だけど?」
心の中でガッツポーズしてしまったが、どう続ければいいんだ、この会話。とりあえず、明日付き合ってほしい場所があるってことにすれば、おかしくはないだろうか。
「ちょっとさ、付き合ってもらっていい?」
「え?」
「一緒に行ってほしいところがあるんだけど。」
黙っちゃうよな、そりゃ。突然すぎるよな。分かってたけどさ。
沈黙が辛い。突然二人で出かけるなんて、やっぱり無理かな。
「無理ならいいよ、一人で行くから」
「い、いや、無理じゃない。っていうか、突然すぎて。何で?」
予測できていたが、言うべきか、言わぬべきか。言ったらどん引き?というか、どこから話せばいいのか、話したらどこまでも話がつながりそうだ。僕の想いは重たいと言われかねない。いろいろなことがぐるぐる回ってしまう。
短い沈黙を破ったのは晴香の方だった。
「彼女に何かプレゼント、とか?」
黙っている間にいらぬ誤解。
覚悟しているようで、僕の方が覚悟できてない。晴香、ごめん、時間をくれ。
「いや違う。違うけど……明日でいいか?」
なんとか約束を取り付けた。少しだけほっとした。
ただ、これでよかったのか、ケリをつけられるのか、というか、ケリをつけなくちゃならないのか、いったい何にケリをつけるのか、行くだけでつくのか、どこからどこまで話すのか…
晴香を好きな気持ちは、似ているからじゃない。だけれども、どうしたって拓人に似ていることから生まれる不安と重なれば、本当の自分の気持ちは一体どこにあるのか。
反対側のホームで、電車を待つ晴香が見えた。手を振ってみた。電車が来て、窓越しに晴香が手を振った。
ふと、我に帰った。
そう、あの笑顔が大好きだ。
それだけで、ただそれだけでいいんだ。晴香が笑顔でいてくれたら、それだけで何もいらない。そばで、いやそばでなくても、その笑顔があるってだけで、ちょっと幸せな気分になる。それでいい。
拓人のところに行けばいい。
大和の言葉がすんなり降りてきた。自分の中の答えが見つかった今なら、拓人のところに行けば、不安を消すことができる気がする。
ひとまず、花を買っておこう。
晴香には言っていない、しょっぱなから墓参りってビックリ通り越してどん引きかもしれない。嫌われたらその時だ。腹をくくろう。
晴香の答えがどうあれ、自分の気持ちにケリをつけなければ、あらゆることにおいて、先に進めないだろう。