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Epilogue

 結局その日は部活を休んだ。寝不足が祟って、午後の授業は船をこぎまくり、後ろの席でその様子を見ていた都並くんから「部活に出るな」ときつく言われてしまった。健康第一だし体が資本の部活なんだから、体調管理はしっかりするようお灸をすえられた。


 電車を乗り過ごしたり、途中で体調崩して誰かのお世話にならないようにと、奏太に送っていくようお達しが出た。クラリネット2人も休んだら迷惑じゃないの、と2人で抗議したが、ここで無理をして、今週長期離脱されるより、1日休んでしっかり治すことが優先、疲れ方が尋常じゃないっぽいから心配なので、どうせパート練だからついてあげなさい、と、まるでお母さんの如く指示が出た。


 先輩には都並くんがきっちり説明しておくと言っていた。きっちり…どこからどこまでをきっちりなんだろう…と不安な顔をしていたら、奏太から「あいつなら、隠すべきは隠し、説明すべきは説明するから」と諭された。


 なんてこった。いや、よかったのか。


 こんな明るい時間に帰るのは久々だった。もうすぐ定期試験だから、いやでも明るい時間に帰る日が来るのだけれども。そして、こんな明るい時間に奏太と帰るのは、夏休み以来だったような気がする。


 「荷物、持とうか?」

 「いや、大丈夫だよ。」


 うーん、という顔をした後、奏太にカバンを取られた。


 「何のために一緒に帰ることになったのか、ちゃんと自覚してください。」

 「寝不足になったの、誰のせいだよ…」

 「悪かったなー。っていうか、人の親切、ありがたく受け取れ!」


 無理やり取られたカバンを見ながら笑えてきた。2人で顔を見合せて笑った。


 「ありがとう、奏太。」

 「どういたしまして。」


 突然何かがすべて変わるわけではない。ゆっくりゆっくり、それでいいんだと思った。


 大丈夫という言葉をよそに、奏太は私の家の近くまで送ってくれることになった。空はまだ夕焼けの茜色で、隣に奏太もいて、会わないとは思うが、家族に発見されたくないというちょっとびくびくした気持ちにもなった。


 「毎日、この景色を見てるのか。」


 ビックリして隣を見て、なんだか少しほっとした。なぜかは分からないけれども。


 「少しづつでいいんだ。」

 「なにが?」

 「少しづつ、晴香のこと、教えて。」


 ドキッとした。


 「晴香の知らない僕だってまだまだ沢山あるから。」

 

 そう言うと、奏太は私の手をすっと引いた。心の奥をぎゅっとつかまれたような、不思議な感覚があった。


 「都並センパイの指令をちゃんと全うせねば」

 「あはは。」


 顔を見合せて笑った。ドキドキする気持ちと一緒に、たくさん笑った。


お付き合いいただき、ありがとうございました。

完結させた物語は初めてなので、なんとも拙い、ダメダメな作品ですが、ご意見ご感想、お時間ございましたら頂けるとありがたいです。


どうもありがとうございました。

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