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葉桜~late spring days  作者: ともかlabo
点と点を結ぶ
19/24

3

 うちのクラスの時間割を決めた先生を恨みたくなる月曜1限が終わった。何が楽しくて、月曜日の1限から古文なんだろうと晴香に愚痴ったことがある。だけど、逆に晴香からうらやましがられた。大河ドラマとか好きだから、奏太がうらやましいなと言っていた。


 いつもは朝練で早めに来ている晴香が、今日は音楽室に来なかった。


 昨日の今日で顔を合わせづらいのかもしれないと思っていたら、遅刻ギリギリの時間、校門で猛ダッシュをしている晴香が見えた。珍しい。


 古文の教科書をしまって、溜息をついていると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと泰一郎がいた。珍しい。いや、何か察したんだろうな。


 「ちょっといいか。」


 僕と泰一郎は教室を出て、廊下で話をした。


 「晴香が遅刻寸前で学校来たかと思えば、1限終わって、隣のクラスのヒヨコちゃんが2人来た。」

 「ぴーちくぱーちく、うるさかった?」

 「まあな」


 泰一郎の聞きたいことがすぐに分かった。話しだす前に僕の方から切り出した。


 「したよ、玉砕。」

 「え?」

 「うそ。玉砕はしてない。言ったよ、晴香に好きだって。」


 泰一郎は苦笑いしながら、聞いてきた。


 「それで?晴香ちゃんは何て言ってた?」

 「混乱してた。あたり前だよな。答えはまだ。急がないって言ってある。」

 「そうか。」

 「大丈夫、これぐらいでぐちゃぐちゃになるような仲じゃないし、このことで部活に影響出さないようにする。それは約束する。

 ただでさえ、引退してぐちゃぐちゃにして、卒業してった人たちがいるんだからさ。これ以上面倒を増やして、楽器続けたくなくなるようなことはしないから。」

 「それ聞いて安心した。」


 ほっとした泰一郎の顔を見て、僕もほっとした。短い休み時間が終わるチャイムが鳴った。

 2限が数学、3限が体育で、朝の出来事を半分忘れかけていた。


 教室に戻る途中、晴香から声をかけられた。遠くに泰一郎が2人のヒヨコちゃんと称したサックスコンビが見えた。呼びとめたのに勇気が出ないといった様子だった。晴香がおずおずと一度振り返ると、2人は知らんぷりをした。その様子がおかしくて、笑ってしまった。


 「ごめん。面白いわ、晴香。」

 「人が真剣に呼びとめたのに。」

 「真剣に、ね。ごめんごめん。で?」

 「えっと…あとでちょっと話がしたい。昼休み、時間もらえるかな?」

 

 遠くにいるサックスコンビに目をやった。2人そろって何やら両手を合わせて拝んでいる。『奏太、頼む』って顔をしていた。おかしくてしょうがなかったけれども、笑わないようにした。


「大丈夫だけど…畑中と高城はいないところがいい。」


 晴香の顔が不安で歪んだ。笑いをこらえながら、もうどんな答えでも驚かないという気持ちになった。どんな答えであったとしても、晴香とあの2人のフォローは忘れないようにしよう。


 「わかった。じゃ、あとでね。」

 

 それだけ言って、晴香は2人の元に走り去って行った。


 今日も何とか笑顔でいれているならそれでいい。心からそう思った。


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