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葉桜~late spring days  作者: ともかlabo
心の中
12/24

4

 手桶を元の棚に戻して、僕たちはバス停へ向かう道を歩いた。


 「ありがとう、晴香。」

 「どういたしまして。」


 少し間が空いた後、晴香が話しかけてきた。


 「あのさ、奏太」

 「ん?」


 分かってる、聞きたいこと。顔に書いてある。そう思っていた。


 けれども、出てきた言葉は意外なものだった。


 「たまには、逃げたっていいんだよ。なんて言うか、たまには、頼ってよ。頼りないだろうけど。」


 意外すぎて、動けなくなっていた僕の手を、晴香がすっと引っ張った。


 「は~らへった~、は~らへった~」


 そのまま手をつないで歩いた。どんな心境から来るのかよく分からない。手をつなぐって、どう受け取ればいいのかよく分からない。僕の混乱をよそに、晴香はつないだ手をぶんぶん振り回してきた。


 「たまに難しい顔してるとき、声かけていいか分からないんだよ。」


 晴香がぶんぶん振り回しながら、真面目な顔して話し始めた。


 「私、頭悪いし、気が利かないから、どう切り出したらいいのか、何を考えているか、どう聞いたらいいか、ずっと分からなかった。」

 「頭悪いってことはないと思うけど。」

 「でも頭悪くてよかった。奏太よりは単純だし。」

 「なんだそれ。」


 手を離した晴香が、僕の目の前に立った。ビックリして止まったら、真面目な顔をしたまま、僕の頬を両手で思いっきりつねってきた。


 「いたたたたた」

 「どーだどーだ痛いだろー」

 「いたい」

 「あの時、私も痛かったけど、ほっとしたんだ。」


 あの時と言われて、いつだか思い出せなかった。けど、気がつくとさっきまでの真面目な顔から、いつもの笑顔に戻っていた。


 「トイレ行ってきていい?お寺さんで借りれるかな?」

 「たぶん大丈夫だと思うけど。」

 「ごめん、ちょっと待ってて。」


 とりあえず、境内のベンチに座って待つことにした。


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