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当たり前だけれども、なんの変哲もない、普通にお墓だった。
「拓人、久しぶり。」
「俺は1か月ぶり。命日にも来たから。」
「えっと…」
「拓人、同じ部の山田晴香。ま、知ってるか。そっから見えてるもんな。」
「は…はじめまして。」
「不思議な感じだよな、こんなとこであいさつするなんてな。」
笑いながら、まずは墓石を磨いて、お花を入れ替えて、お線香をお供えして、手を合わせた。
「生きてたら…たぶん、大いにからかわれてるだろうな、奏太。」
「それを言うな。」
「一番話しづらいとこは代わってあげたから、あとはちゃんと自分で話せよ。俺はバイト。」
「え?」
奏太と同じタイミングで「え?」と言ってしまった。それぐらいお互いビックリした。鎌田さんは「じゃあな」と言って、去って行った。あっけにとられて隣を見ると、奏太と目があった。
「ごめんな、昨日からあれこれ。」
「いや、別にいいよ。」
少し間が空いて、何で私とお墓参りに連れて来たのかを聞こうと思ったところで、奏太が切り出した。
「とりあえず、はらへった~。昼飯行こうか。」
「う、うん。お腹空いたな~。何食べようかな~。」
いつも通りの奏太の笑顔だったから、やっぱり聞けなかった。
聞いていいのかどうか、うやむやなまま、奏太と話して、来た道を戻って駅まで行くことにした。