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葉桜~late spring days  作者: ともかlabo
心の中
10/24

2

 お墓までは、バスで15分ほどかかる場所にあるそうだ。


 「中途半端になっちゃうと気になるだろうから、続き話そうか?」

 「え…えぇ、奏太が大丈夫であれば。」


 奏太は黙ってうなずいた。それを見て鎌田さんは話し始めた。


 「本人には言っていなかったし、奏太にも、その時は話さなかったんだけれども…」


 バスの中で、鎌田さんが拓人さんのことの続きを話してくれた。


 予後不良の腫瘍で、余命は持って半年と言われたこと。

 生きたいという意志と治療の効果が出て、一度は退院して、3人で出かけたりすることもできたこと。

 再入院したあとは、あっという間であったこと。

 鎌田さんの中学卒業を待っていたかのように、卒業式の翌々日に亡くなったこと。


 奏太や鎌田さんにどんな言葉をかけていいか分からなくて、ずっと「そうなんだ」と聞いていた。聞きながら私はここにいていいのか、なぜ私にこんな大事なことを話すのか、不思議な気持ちになっていた。


 「生きてくれるなら、自由なんていらなかった。拓人の生きている不自由のほうが欲しかった…ごめん、重たいよね。」

 「うん、確かに。重たいけど、大丈夫。話すとラクになることもあるだろうし。」


 でも何で私なの、とは聞けなかった。その話を私にするのは何でなんだろう。


 バスを降りて、お墓への道を歩きながら、鎌田さんはニコニコしながら私にこう尋ねた。


 「どうして拓人の話をしたと思う?」

 「え?」

 「奏太も、話聞いていたら辛いはずなのに、止めなかった。さて、なぜでしょう?」


 気になっていたことを逆に聞かれて、何も言えなかった。


 奏太を見ると、なんだかどぎまぎした顔をしていた。ますます分からない。


 「答えはね、晴香ちゃんが拓人に似てるんだってさ。な、奏太。」


 意外な答えにビックリしたような、なんだかちょっとホッとしたような顔をして奏太が答えた。


 「そうなんだよ。…おっちょこちょいのとことか、うっかりしてるとこ」

 「え?何それ。ちょっと!」

 「ほら、着いたよ。」


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