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変えるもの

 夜になりました。

 地震が起きてからの魔物の変化はないようでした。あまり気にしなくていいのかもしれません。

 今日も野宿です。このところすっかり寒くなったので外で寝るのは少しつらいです。風邪をひかないようにしないと。

 さてと、おやすみなさい。


 ふと気が付くと、私は高校の教室で国語の授業を受けていました。

 ん……あ、これ夢ですね。

 夢だとわかったのはいいのですが、あまり自由にはできないようで残念です。夢だとわかっている夢では空を飛ぶこともできると何かの本で読んだことがあるのですけど。

 黒板の前で先生が小説の作者のことを話しています。同級生はみんなちゃんと席に座っているみたいです。懐かしいようなそうでもないような。

 なんとなく「そろそろかな」と思って時計を見ると十一時四十五分でした。

 直後、スピーカーから大音量で、


 目が覚めました。

 ……あー、びっくりしたー……。

 辺りはほんの少しだけ明るくて、鳥の鳴き声が聞こえます。今何時でしょうか。時計……ああ、目覚まし時計なんてないんだった。

 体を起こしたら小声で話しかけられました。

「夢でも見た?」

 ……あ、エドワードさん。

「おはようございます」

「まだ早いし寝てたら? ジークも寝てるし」

 あら、本当。ジークさんが寝ているところを久々に見た気がします。

「夢でびっくりして眠気飛んじゃいました」

「へえ。どんな夢だったんだい?」

「えっと、学校で授業受けてて……」

 それで……そうだ、サイレンだ。

「避難訓練が始まって、びっくりして起きたんです」

 地震による火災の発生を想定した訓練が始まったのでした。夢の中の私は避難訓練が予定されていることを知っていました。

 夢の中で、教室のスピーカーから聞こえてきたサイレンの音に驚いて夢が終わり、目が覚めました。

 起きていなければきっと先生の指示で机の下に潜ったことでしょう。そしてその後には火災報知器がなって、体育館か校庭に避難を始めたと思います。でも、夢ですから何か変なことになったかもしれませんね。出火したとされる場所が学校にはない所とか、どこかから魔物が出てくるとか。

「地震があったのが影響したみたいです」

「魔物じゃなくて代わりにレイちゃんの夢が変わったのかな」

 ふふ、そうだったらいいですね。

 いやあ、なかなかリアルな夢でした。

 黒板は漢字とかひらがなでいっぱいで、髪の毛は黒か茶か金で、こちらの世界の要素がありませんでした。

「先生も生徒もみんないたんです」

「友達と話せたりした?」

「先生が喋ってるの聞いてるだけでした」

 夢のことや現実の避難訓練のことをエドワードさんに話していると、

「ギョエー」

 空から嫌な鳴き声が聞こえてきました。

 この耳障りなのは……!

 私が杖を握り締めたのとほぼ同時にジークさんが、ぱっと起きました。

「ギョエエェェ!」

「ギョエエエエ!」

 出たな翼付き狼もどき!

 狙いが私たちか他の何かか知りませんがどこにも行かせませんし何もさせません。

【落ちろーっ!】

 飛んでいる魔物の群れに向かって叫ぶと、魔物たちは空からドサドサと落ちてきました。全部で五匹いて、一匹も地面に激突した程度では消えませんでした。しかも二匹がうまい具合に着地しました。

「ギョエー!」

 うるさいなあ、もう!

【動くな、黙れ!】

 ひとまずこれでいいでしょう。

 以前見た翼付き狼もどきより体が一回り大きいです。

 そうだ、あの魔法の練習用の的になってもらいましょう。

「私がやります」

 私がそう言うと、エドワードさんもジークさんも頷いて任せてくれました。

 火が出る魔法を使うので、先に消火用の魔法の魔法陣を描いておきましょう。えーっと、描き方は……。

 どちらの魔法も、何も見ないで魔法陣を描くことができました。それにそこそこ綺麗に描けたと思います。

 火が出る方の、楕円形の魔法陣を指してエドワードさんが言いました。

「それ、何の魔法なんだい?」

「盗賊が使ってきた、クオ皇国のです」

 使ってみたかったのですよね、これ。

 クオ皇国の魔法の本『魔法基礎一』を見せると、エドワードさんはすぐ思い出したようでした。

「ああ、あれか。あの時はレイちゃんにしては大胆なことしたよね」

 うっ。

 エドワードさんに続いてジークさんも言いました。

「悪党に『なかなかの悪党だ』って言われてたな」

 うー……。

「……反省してます……」

 後悔はしていませんけどね! 今後ユニコーンに会えなくても、別に……ええ、構いませんとも! どうせ大人になれば、いえ、その前に帰れれば会えなくなるのですから……一度見ることができただけでも、十分……

「僕はあの時、気にしなくていいって言ったはずだけど」

「盗賊を捕まえるのに貢献した報酬ってことにしておけばいい」

 ……報酬か……まあ、そういうことにしてもいいですよね。ちゃんと盗賊が捕まったのか知りませんけど。

 さて、実際に使うのはこれが初めてですから、間違いがないか確認しなければ……うん、大丈夫そうです。

 失敗してしまったときのために、エドワードさんとジークさんには少し離れてもらいました。基礎の本に載っていて比較的簡単な魔法とはいえ、戦闘で使えるなかなか強いものですし、出てくるのは火です。気を付けなければ。

 さあ、やりますよ!

【点火】

 呪文を唱えると、魔法陣が輝いて、丸くまとまったような火が出ました。よし!

 あとはこの火の玉を飛ばすだけです。

【飛んでいけ】

 火の玉が飛んでいって、魔物に当たりました。魔物は苦しそうな鳴き声を少し出して倒れました。

 空気に溶け始めた魔物を見てエドワードさんが言いました。

「盗賊が飛ばしてきたのより速いしずっと強い気がする。魔力の強さの違いかな」

「あんまり差は出ないようにしてあるみたいですけど……どうなんでしょう」

 もしかしたら私か盗賊のどちらかがどこか間違えたのかもしれませんが、私が間違えたのだとしたらすごく悔しいです。

 この魔法を見たのは一度きりですし、その時に魔法を使ったのがまともに勉強していないであろう人なのでよくわかりません。お手本になってくれる人がいたらなあ。

 とりあえず、もう一回やってみましょう。

 今度は本を見ながら魔法陣を描きました。

 呪文を唱えると先程と同じような火の玉が出て、変わらない速さで飛んでいきました。

 また魔物を一匹倒せました。

「きっと、これくらいの威力のものなんだね」

 そのようですね。少し自信をもつことができました。

 それでは残りもさっさと倒してしまいましょう。

 何も見ないで魔法陣を描いて、火の玉を出しました。ここまでは順調です。

 これで三度目ですし、火の玉の飛ばし方を変えてみましょうか。

【飛んでいけーっ!】

 火の玉がびっくりするくらいの速さで飛んでいき、魔物に直撃し、爆発しました。

 ……え、あ、あれ? 先程とは威力が全然違うではありませんか。狙っていた個体だけでなくそのそばにいた二匹も一緒に倒せてしまいました。これで飛んできた魔物は全滅しました。

「……これは……間違えちゃったかな……?」

「えっと、あの『火を出してからの呪文を元気よく唱えると火の玉がより速く遠くに飛ぶ傾向にあります』って書いてあって、そのとおりにしてみたんですけど……」

 今の威力は「速くなった分強くなった」では済まないと思うのです。エドワードさんの言うとおり、どこかを間違えてしまったのでしょう。

 ああ、私たちに被害がなくてよかった。辺りが火事にならなくてよかった。でも、朝から失敗するなんてなあ……。

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