五日前、釘を刺される
国王に謁見する日がやってきました。ううう、緊張するぅ。
なーんてことを思っていました。十分ほど前までは。今は緊張より驚きの方が勝っています。何故かというと、国王が想像していた人と全然違っていたから。
ここニールグという国は、このイリム大陸の三分の一を占める国だそうです。この大陸がどれほどの大きさかはよくわかりませんが、この国は大国なのです。そんな国の王はどんなに威厳のある人なのかと思っていました。
それが、実際に会ってみると、国王はとてもにこにこしていて優しそうです。しかも、なんとびっくり、彼はとても若い男性、というより男の子でした! どう見ても中学二、三年の歳の子です。威厳はほぼゼロ。あのふわふわした金色の髪に触ってみたいものです。
彼は今、勇者であるハルクロードさんとお話し中です。国王らしい話し方をしようとしているのがわかります。時々年相応の話し方になっています。つい先ほども「僕」と言って慌てて「私」に直していました。きっと国王になりたてなのでしょう。ちょっとほほえましいです。
数分後、謁見は終了し、退出しようとすると、
「ちょっと待ってください。藍色の髪のあなた、なんだっけ……レイ・コバヤシさん!」
国王に声を掛けられました。彼、聞き間違いでなければ私の髪を藍色と言いましたか? 私は髪は黒いですよ? 名前を呼ばれなければ私に用があるとわかりませんでした。
「何ですか」
「あなたは魔法を使いますよね。決して他国にこの国の魔法の構成などをもらさないように。使用の際はなるべく見られないように。特に呪文だけの魔法は聞かれて覚えられてはいけません。わかりましたか?」
うわ、ちょっとこわい。言葉は丁寧ですが何ですかこの威圧感。さっきは威厳はほぼゼロと思いましたがそうでもないようです。やはり彼は王なのですね。
そういえば魔法って国ごとで違うんでした。魔法の仕組みを他国に知られたら不利になるのです。
「わかりました」
私が返事をすると国王様はにっこり笑って言いました。
「くれぐれもお気をつけていってらっしゃい」