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朝起きて

 ゴーン……

 あ~、お寺の鐘の音が聞こえる~。

 目が覚めました。目に入ったのは見なれない白い天井。ああそうだ、私、異世界に来たんだっけ。夢じゃなかったのか。

 部屋に置かれた時計を見ると、五時二分。さっきのは五時を告げる鐘だったようです。この世界もたぶん一日は二十四時間でしょう。今のうちに腕時計の時間を合わせておきます。

 カーテンを開けて外を見てみます。まだ少し暗いですね。

 まだ眠かったのでベッドに腰かけてぼーっとしていると、ドアがノックされました。返事をします。

「はい」

「入るよ」

 そう言って入ってきたのはスチュワートさん。手には何か全体的に白い布。服ですか?

「おはよう」

「おはようございます」

「これ、見習い司教の服だよ。これに着替えて」

 見習い司教? 何それ? 疑問に思いつつも服を受け取り、着替えているとスチュワートさんが、

「勇者の旅についていく人が着るものじゃないとは思ったんだけど、他に無くてね。まあ、今日から魔法を教わるわけだし、動きやすいし、いいよね?」

 と言いました。いいよね? とか言われてもなぁ。なんと答えれば?

「そうそう、中庭に鐘があるんだ。この部屋からなら鳴らすところが見れるね」

 中庭? 教会の鐘って建物の高い所にあるって印象なんですけど。

 着替え終えたので中庭を見下ろしてみました。この部屋は三階にあるのです。広い中庭です。お、壁のない小屋のようなものが真ん中にあります。

 ……ここからその小屋らしきものの屋根の下が見えるのですが、そこにある白いものは、形が、どう見てもお寺の釣り鐘です。

 そういえば、ここには鳥居がありましたね。あれも白かったですね。さすが異世界ですね。混ざってるのですね。では昨日から気になっていることを質問してみましょう。

「あの、ここは何て言う宗教の教会なんですか」

「……レイちゃんはやっぱり違う宗教の信者なの?」

「……まあ、そうですね」

「どんな宗教?」

「どんなと言われても……よくわからないです」

「わからないって?」

「一応、お葬式とかは宗教に則ってやりますけど、普段は気にしないっていうか、私は、神様のことは信じてますが、あまり宗教は信じていないんです」

「なるほどね。で、何て言う宗教かっていうのだけど、カーメイ教だよ」

 カーメイ……うん、覚えた。明日には忘れてそうですが。

「さてと、私は訓練に行くんだけど、レイちゃんはどうする? 部屋にいてもいいし、中庭を散歩するのもいいと思うよ」

「中庭に行きたいです」

「じゃあ行こう。途中まで送るよ」



 現在、私は散歩と花の鑑賞中です。太陽もすっかり顔を出しました。この中庭は広いしいろいろと植わっているので見て楽しめます。

 お、雑草を抜いている人たちを発見しました。四人いて、全員が私と同じ服を着てます。ということはあの人たちは見習い司教なのですね。年齢はバラバラで、中学生くらいからおじさんと呼べる人までまでいます。

 ちょっと近寄って彼らを眺めていると、私と同じくらいの年の人が私に気付きました。彼は私のすぐそばまで来ると、話しかけてきました。

「見ない顔だね。新入り? 何でここにいるの? 迷った?」

 新入りの見習い司教だと思われたようです。

「違います。他に無いからこれを着とけと言われたんです」

 私の答えを聞いた彼は目を丸くしました。

「きみ、女の子……?」

 私は頷きました。質問からして、彼は私の答えというよりも声に驚いたみたいです。

「いやあ、見習い司教服を着てたからてっきり男の子かと」

 つまり女は司教にならないというわけですか。シスターにでもなるのでしょうか。

「きみ、散歩でここに来たなら、あっちの方に行くといいよ。きれいな花がいっぱい咲いてるし、鐘もあるし。そろそろ七時だろうからちょうど鐘を叩くところを見れるよ」

 ……鐘を叩く? 突くんじゃないの? まあ、あれも「叩く」に入るかな。

 私は彼にお礼を言い、言われた方へ行きました。あ、鐘だ。白いことを除けばやっぱりお寺にあるやつです。ん? 鐘を突く太い棒がぶらさがっていません。棒は鐘の下に置いてあり、ちょっと短くて細めです。

 しばらくして、白い服の人がやって来ました。おそらく司教です。大柄で強そうですが、表情は穏やかです。この人が鐘を鳴らすのでしょうか。

 彼は棒を持ち上げ、鐘を正面にして立ちました。そして深呼吸をすると、野球でバットを構える時のように棒を持ち、

「アチョー!」

 というかけ声と共におもいっきり振って鐘に叩きつけました!

 ゴーン……

 鐘の音が響き渡ります。七時ですかそうですか。

 確かにあれは「叩く」ですね。

 鐘を叩いた彼は棒を元の位置に戻し、去っていきました。

「レイちゃん」

 鐘の音の余韻に浸って考えていると、スチュワートさんに声をかけられました。そういえばここに迎えに来てくれると言っていました。

「鐘を叩くところ見た?」

「はい」

 ゆったりとした白い服を着た教会の聖職者が釣り鐘をあのかけ声で叩くさまはなんとも言えなかったですよ。

「この大教会の鐘叩きは有名なんだよ。他の村とか町の教会は二、三人であれよりちょっと長いくて細いのを持ってやるんだけど、ここのは一人でやるし、豪快に叩きつけるからね。さ、朝食の時間だよ。行こう」



 えー、現在私は質問攻めにあっています。何故かというと、スチュワートさんが、私が釣り鐘を見てから話したことを話題に出したから。

 今日も昨日と同じ席で同じメンバーで食べていたところ、彼女が思い出したように言ったのです。

「そういえばレイちゃん、神様は信じてるけど宗教は信じてないって言ってたけど、どうしてそんな考えを持ったの?」

「宗教を信じていないのはたぶん、周りの人たちの影響だと思います。神様を信じてるのは、たまにすがりたくなるからだと思います」

 それに昨日、お会いしましたし。でも、あのことは夢だったんじゃないかと思うくらいぼんやりとしか思い出せません。

 で、私の答えに他の人たち、特にブラウンさんが反応しました。

「周りの影響で宗教を信じていないとは一体あなたの周りにはどんな人がいるのですか?」

 このブラウンさんの質問から始まり、日本はどんな国なのか、どんな宗教があるのか、隣の国はどんな国かなどなど聞かれまくりです。おかげで食事が進みません。私にご飯をたーべーさーせーてー! 朝ごはんは大事ですよ!

 ていうか、ブラウンさんは質問し過ぎです。レルアンさんなんか何も質問してませんよ!

 

 三十分後、最後の質問に対する私の答えを聞いて、ブロンテさんが言いました。

「世界って広いな!」

 …………そうですね。

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