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そして役割を知った。

 嗚呼、とんでもない所に来てしまいました。いやまあ、行ってみたい、と何度も憧れたし、変わったものを見れたので、そんなに悪いことではない気もしますが。

「ちょっといいですかな、お嬢さん」

 ぼうっと考えていたら、おじいさんに声を掛けられました。

「実は、夜中に神様からお告げがありましてな」

 そうおじいさんは前置きし、次のことを話し始めました。

 死の浜――私が目を覚ましたのはそんな恐ろしい名前の場所でした――に直ぐに行け、勇者の助けになる者がいる。というお告げを受けたおじいさんは、ご自身は歳を取り、行くのが大変なので、司教二人(神官でも僧侶でもなかった!)と剣士四人に行かせました。六人がペガサスで近くの村まで行き、そこからは徒歩で浜に向かって林道を進んでいたところ、私がいました。

 六人は、私がほぼ目的地にいたこと(林に少し入った所にいましたからね)と、変わった服装をしていることから、お告げの人物だろう、と判断し、私をここまで連れてきたそうです。 で、勇者というのは、魔物を倒しつつ世界中に散らばる、神の道具と呼ばれる武器やら何だかよくわからないものやらを集め、復活が近づいているという魔王が本当に復活したら倒すために儀式で選ばれた人のことで、明日にはこの大教会に来るらしいです。

 というわけで、私にはその勇者の旅についていって欲しい、とのこと。

 本やゲームで、異世界に行って勇者や英雄になる話は多いと思いますが、ついていけというのはどうなのでしょう。無いということはないでしょうが。

「……私が勇者の助けになるとは思えません」

 勇者の旅なんていかにも危険な旅にただの高校生の私がついていけるはずがありません。攻撃力も防御力もほぼゼロですよ。勇者の足引っ張ってばかりですよ。というようなことを言い、私には無理だと伝えてみました。すると、

「それならば、私が魔法を教えて差し上げます。勇者も直ぐに旅に出るわけではありませんから、素質があるなら少しくらいは修得できるでしょう」

 金髪でオレンジの目のもう一人の白服(おじいさんの話によると司教)の男性に言われました。お姉さんやお兄さんと同じ二十歳過ぎくらいの人です。

「もし魔法が駄目なら私が剣を教えるよ」

 お姉さんがそんなことを言いました。一体お二人はどのくらいの期間で私に何かを教えようとしているのでしょうか。不安です。でも、私は特にすることが無いし、魔法がどんなものか興味があったので、

「お願いします」

 と言いました。



「そろそろ夕食の時間ですから食堂に行きませんか?」

 とお兄さんが提案したので、私たちは食堂に来ました。おじいさんは別の所で食べるそうです。

 食堂は広く、長いテーブルが並んでいます。隅の席に七人で一緒に座ります。

 料理は昼食が質素になった感じです。味が薄い。

「自己紹介をしましょう」

 青い髪と目の彼が言い、他の人も賛成しました。

「まずは私から。私はジョゼ・ブラウン。司教です」

 ジョゼ・ブラウン。よし、覚えた。

 次に、私に魔法を教える、と言った人が口を開きました。

「私はカール・エリエント。同じく司教です」

 うん、この人のも大丈夫。

「私はマリア・スチュワート。教会戦士だよ」

 お姉さんが言いました。教会戦士というのは、教会に仕える戦士のことだそうです。魔物が出たら戦うのだとか。ちなみにここにいる四人は剣士ですが剣士の他にも弓や槍を使う人もいるそうです。

「おれは、レオ・ルファット」

 そう名乗ったのはお兄さん。昼食同様、大盛りです。そして笑顔が素敵です。

「オレ、ケイ・ブロンテ。よろしくな!」

 次に名乗ったのは、青い髪とオレンジの目の活発そうな人です。17歳くらいでしょうか。この人が日本人ならば高校の運動部にでも所属していそうな感じです。

「ジーク・レルアン」

 無表情、無感情な声で名前だけ言ったのは赤い髪と目の人。ケイ・ブロンテさんと同じくらいの歳でしょう。この人、イケメンというかハンサムというかかなりの美形です。美形で無表情な人は今まで読んだ本に何人か出てきましたが、実際に見るのは初めてです。

 マリア・スチュワート、レオ・ルファット、ケイ・ブロンテ、ジーク・レルアン。うん、よし、覚えた!

「で、君の名前はレイ・コバヤシで合ってるかな?」

 マリア・スチュワートさんに聞かれたので、私は頷きました。

「じゃあレイちゃん、聞きたいことがいくつかあるから答えてくれるかな?」

「はい」

「ニホンとかいう国から来たみたいだけど、それ、どこにあるの?」

 うわ、答えにくい質問! どうしよう、異世界って言っちゃう? いや待て、信じてもらえるような話じゃないし、もしかしたらここは異世界じゃなくて地球から遠く離れた星かもしれない。うーわー、どうしよう。……誤魔化せるかな? よし誤魔化してみよう!

「中国の近くです」

 お姉さんは首を傾げました。私はさらに言います。

「ロシアの近くでもあります」

「どちらも聞いたことがないですね」

 ジョゼ・ブラウンさんが言いました。

 そうでしょうね。聞く機会なんてないですからね。

「とにかく遠い所から来たんだな」

 レオ・ルファットさんがそう言ってまとめました。よし、誤魔化しは成功かな? 念のため話を変えてみます。

「そういえばさっき、『ダマレ』っていうのは黙らせる呪文の一部だって聞きましたけど、『ダマレ』って私の国の言葉で『黙れ』って意味なんですよ」

 親しい人以外だとうまく話せない私にしては随分滑らかに話せました!

「それは面白い偶然ですね」

 カール・エリエントさんが言いました。

「はい。お店で『ダマレ』って聞いた時、あの二人が声を出さなかったのはブラウンさんの気迫にやられたんだと思いました。魔法をかけられていたんですね」

 私がそう言うと、スチュワートさんが言いました。

「じゃああの時、レイちゃんがあんなびっくりした顔してたのは、ブラウン司教が魔法を使ったことじゃなくて、レイちゃんの国の言葉で黙らせたことに驚いてたんだね」

「そんなに顔に出てましたか」

 普段、私は感情があまり顔に出ないのですが、「あんな」と言われるくらいに出ていたそうです。



 夕食を食べ終えると、お客さんが来た時に泊まるという部屋に連れていかれました。とりあえず今夜はここで寝ろとのこと。

 今日はいろんなことがありました。

 目が覚めたら異世界で、ペガサスに乗せてもらったり神様が助けてくださったり。

 これから私はどうなるのでしょう。

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