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初勝利!

 やって来ました、町の外。道は、首都に通じているので、大きくて歩きやすいです。町の外ですが、人は大勢います。首都は人の出入りが多いのです。

 首都を出て一時間ほど歩くと道が二つに分かれていました。一方は大きく、もう一方は小さいです。私たちが行くのは小さい方。こちらに行く人は少ないです。しばらく歩くとまた道が分かれていました。今度は三つに分かれています。人が全くいない道へ進みます。

「ここから先は魔物が出てくるかもしれないけど、この辺りのはかなり弱いだろうね」

 エドワードさんが私を安心させるように言いました。が、彼にとっては弱くても私にとっては強いかもしれません。少し不安です。

 歩き続けると、林に入りました。ふと、この世界に来た時のことを思い出しました。あの時は知らない木を見たくて林に入りましたっけ。

 ぼーっと今までのことを思い出しながら歩いていると、

「いる」

 ジークさんがぽつりと言って立ち止まりました。

 いる、って何が。やっぱり魔物ですか。

「どこですか」

「あの太い木」

 十メートルくらい先にある木の横に小さくて黒い何かがいます。犬型ですね。こっちを見ています。獲物を見る目で。

「レイちゃん、僕があいつの気を引くから、その間にあいつ後ろに回って杖で殴ってごらん。大丈夫。あいつは弱い。しかも馬鹿」

 エドワードさんはそう言うと剣を抜きました。魔物はそれに反応し、エドワードさんだけを警戒しているみたいです。私やジークさんのことなど忘れたかのよう。馬鹿ですね。

 私は言われたように、慎重に木の間を通って、こっそり魔物の後ろに回りました。魔物は、私とは一歩分くらいしか離れていないのに、私のことには全然気付きません。よし、殴る!

 ポフッ

 あら? もっと手応えあると思ってたのに。かなり柔らかかったです。

 殴られた魔物はドサッと地面に倒れると、黒いモヤモヤした塊のようになりました。さらさらと端から空気に溶けていきます。魔物らしい消え方ですね。ああ、なんてファンタジー。しゃがんで観察しちゃいますよ。

 ん? 溶けていくモヤモヤしたものの中に、文字らしきものが見えたような……。

 ん~、あっ! わかりました! このモヤモヤしたものは小さな文字の集合体です。ではこの文字は何で出来ているのでしょうか。何だか嫌なもので出来ている気がします。例えば悪意みたいなもので。

 ところで、これは、何語の何という文字でしょうか。読めません。ローマ字を崩した感じです。

「魔物が消えてくのが珍しい?」

 エドワードさんに声を掛けられました。知らないうちに彼とジークさんはすぐ側まで来ていました。

「はい。空気に溶けていく生き物なんて見たことないです」

 魔物はきれいさっぱり消えました。

 私の答えにエドワードさんは首を傾げ、聞いてきました。

「レイちゃんは魔物を生き物だと思ってる? あれ、斬っても血とか出ないんだけど。文字みたいなので出来てるみたいだし、倒すとすぐ消えるし」

 む……。そう言われると生き物じゃないのかも。生き物じゃないなら悪霊とか? うーん。

 考え込んだ私にエドワードさんは言いました。

「ま、そんなことは置いといて、さっさと行こう。お昼過ぎくらいには目的地に着きたいし。それに、魔物が生き物かどうかなんて問題は学者にでも任せることだと思う。それに、レイちゃんには魔法のことを考えて欲しいな」

 そう言われると確かにそうですね。魔物より魔法の方が私にとっては優先すべきことです。エドワードさんとジークさんの足を引っ張るわけにはいきません。

「わかりました」

 私が立ち上がって言うと、エドワードさんは微笑み、ジークさんが独り言のように言いました。

「魔法ならレイは世界一になれるかもしれない」


 世界一かあ。なんて大きな夢だろう。でも目指すのもいいかもしれない。

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