表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/102

今日、旅に出る。

 ゴーン……

 今日も鐘の音で目が覚めました。

 夕べは泣いて泣いて泣きまくりました。そのうちに疲れて寝ましたよ。

 すっきりしたようなしていないような微妙な感じです。

 とりあえず、着替えて食堂に向かいます。この大教会のご飯を食べるのは、今日で最後かもしれません。

 食堂にはハルクロードさんとレルアンさんがいました。今回は三人だけで食べるのです。食堂は食事の時間は混雑していてにぎやかです。にぎやかなところしか見ていないので、三人しかいない今は、まるで別の場所のように思えます。寂しいです。

「あ、レイちゃん。おはよう。よく寝れたかな?」

 ハルクロードさんが爽やかに挨拶してきました。朝早くから元気そうです。

「おはようございます。よく寝れました」

 まだ少し眠いのは秘密です。

 あ、ずっと黙っているレルアンさんにも挨拶せねば。彼一人に挨拶するのは実は初めてです。

「おはようございます。レルアンさん」

「おはよう…………俺のことはみんな名前で呼んでる」

 えーっと、苗字じゃなくて名前で呼べと?

「あ、じゃあ僕のこともエドワードで。長くて嫌ならエドで」

 エド、えど、江戸。……はっ、こんなことを考えてしまうとは。我が家も日本も恋しいです。でも、昨日みたいに家や日本のことを考えても涙は出てきません。夕べ泣いておいて良かったです。



 朝ご飯を食べて一旦部屋に戻ってきました。この部屋ともお別れです。

 旅にはこの世界に来た時に持ってきたバッグも持っていきます。これ、旅に持っていくのにふさわしくないかもしれませんが。あと、魔法の教科書も持っていきます。エリエント先生の言葉を信じて努力しますとも。

 荷物を持って白い鳥居の所に行くと、人がたくさんいました。にぎやかです。あ、いつも一緒に食事をしていた人たち発見。彼らに近寄るとスチュワートさんが気付いたようです。彼女は手招きしてきました。

「おはよう。レイちゃん」

 彼女に続いて他の人も挨拶をしてきました。一人一人に「おはようございます」と返します。

「みんな見送りに来たんだ。ジークたちはあっち。レイも早く行った方がいいぞ」

 ブロンテさんが指差す方を見ると、ハル、いえ、エドワードさんとジークさんが大司教さんと話しています。

 早く行った方がいいらしいですが、あの二人の所に行く前に五人にお礼を。

「今日までありがとうございました。最初は、言葉が通じなくて怖かったんです。でも、言葉が通じるようになってからは、皆さんが優しい人たちだ、ってわかって、安心しました。食事の時には私が知らない事とか面白い話をたくさん教えてくださって、それがとても嬉しかったです。短い間でしたけど、楽しかったです。お世話になりました」

「こちらこそ、あなたの話は興味深いものばかりで楽しかったですよ。また聴かせてください」

「次に会った時、あなたがどんな魔法使いになっているか楽しみです」

 司教二人はまた会えると考えている様子。

「そんなもう会えない、みたいな顔するなよ。オレはまた会えると思ってるぞ」

 ブロンテさんも、また会えると思っているようです。もし、魔王を倒したら、その時点で元の世界に帰ることになるかもしれないと私は思っているのですが。

「おれは、レイたちは無事にここに三人で戻ってくると思ってる」

 ルファットさん、確かに昨日私は死ぬかもしれないって言って泣きましたが、今は死んで戻ってこないとかいうことを考えているわけではないのです。

「私もそう思うよ。それに、戻ってこないと駄目だよ。レイちゃんがここに来た時の服を取りに戻ってこないとね」

 あ、そうですね。あの服はお気に入りです。無事に目的を果たしたら、取りに来なければ。

 戻って来ることを決めたのなら私が言うことは一つ。

「いってきます」

 私の言葉に五人は声を揃えて言いました。

「いってらっしゃい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ