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FILE00:疲れきった帰郷

world environment is assembling to purify of nano-machines.

上の言葉はとある国家で、もはや人の住めなくなりゆく環境を回復するために掲げられた言葉らしい。

計画の下、星の数ほどの試行錯誤を繰り返し出来上がった夢の機械。と言っても結局完成したソレは、環境改善の為に使われなかった。

原因は簡単、終末戦争の勃発だった。

“核を使わず戦争に勝利する”と矛盾した理想を押し通す為にソノ国家はソノ技術を軍事利用することとなる。グレイグー防止と最低限のプログラミングしかされていなかった、ナノマシンの分解=化合を改良し、特殊なインターフェースを通した電波により瞬時に周りの素材から兵装を作成する技術を完成させた。

だがココでミスが発生したのだ。何者かがソノ研究データと設計図を研究施設から奪取し、ネットの海に流したのだ。漂っていたデータを入手した各国はソレを複製し改良し、瞬く間に夢の機械は世界に広まった。

やがてソレは開発目標の言葉を縮め、weapon-そう呼ばれるようになった。

画期的なweaponによって泥沼化した終末戦争は、痺れを切らしたトアル国の核の焔を引き金にして終わりを向かえる事になる。

そしてニンゲンの文明が滅んで千と余年が流れた――



酷く現実味を帯びていない世界の中、僕は全力で駆け抜けた。『力』を手に入れても僕は大切な人達を守れなかった。誰か僕を人殺しと呼んでください、きっと楽になる。

 お願い、教えてください僕は如何すれば救われるのですか。

 お願い、答えてください僕は如何して生れ落ちたのですか。

最後まで僕は何一つ見つけることが出来なかったけど、こうして今を生きている。傍らに君は居ない、友人は僕に二度と語り合えないけど、僕は生きている。君達の分まで生きる保障はないけど、でも僕は君達の居ない世界を歩いていきたい。

だけどさ何時もこう考えるんだ。もしかしたらキミは、僕の知らない遠くの国で幸せに暮らしていて、いつか逢えるんじゃないかって。有り得ない話だって分かってる、それでも僕はそう思う。

未来がどうなるかなんて、占い師でもない僕には何も言えない。もう一度戦争が会戦するかも知れないうえ、革命が起こらないとも限らない。馬鹿な僕でも非常に不安定な国だと思う。

コレはそんな僕が歩くヘンテコな世界のお話。


「…どうして」

凍えるような真っ青な土砂降りの雨の下で、僕は村での娯楽だった小説の主人公のような台詞を呟いた。僕の生身の右腕の中で、彼女は真っ赤な染みを広げつつ呟いた。

「ごめんね……アタシは人として終わりたかったから…クロ…私…を忘れて…ね」

腕の中の彼女は静かに瞳を閉じた。彼女の重さが増した気がして、僕は何も言えずにいた。止め処なく流れ落ちる涙のせいで、僕は何一つ見えなくなっていた。冷たい鋼の左腕は、未だ彼女の血を滴らせていた。


ガバリと眼を開く、忘れようもないアノ日の夢だ。戦場でのアイツの高笑い、操られた彼女、僕は成す術も無く彼女を殺しかなかった。

初めて恋した相手を僕は自らの手で殺してしまったんだ。泣き続けて涙も涸れ果て、そして復讐の鬼と化した僕は上官だったアイツを戦闘の混乱に紛れて消したけど、だけど、だけど心は晴れなかった。

僕が下らない戦争に巻き込まれることとなった原因は一つ。唐突な隣国の侵攻だ。国境近くの村の住人だった僕たちは、たとえ戦いたく無くても国を村を家族を守るため戦うこと余儀なくされた。

銃声と硝煙の真っ只中、僕は始めて人を殺した。殺した相手の返り血を浴びて真っ赤な両手を呆けて眺めたのを今も忘れない。そこで気付いてしまったんだ。僕は人を殺しても何一つ感じないと言うことに。

アノ戦争は色々な事が有り過ぎたと思う。数え切れない人の死があって、そして沢山の物を失った。生きて帰ると誓った親友も砲撃の犠牲となった。村で唯一の軍人で、前の宗教大戦での英雄だった僕の父さんでさえ、『勇者』との戦闘で殺された。

それだけじゃない、国境の向こうの農村の村人たちを殺さねばいけなかった。非戦闘員でも容赦なく殺せと上官は叫び、仲間は泣きながら村人に銃口を向けていた。心が壊れてしまった人もいた。

今回の戦争で僕の村の男性の大半が戦争に駆り出されたが、その中で無事に帰ってきたのは半分にも満たなかった。腕や足を失った人も含めてだが。 

そんななか当時最年少だった僕は、しぶとく生き残った。時には戦死した味方の死体さえ利用し、降伏した敵兵さえ撃ち殺した。子供でさえ殺して見せた。

そして左手を榴弾砲で吹っ飛ばされた時、僕は生き残るために一か八かに賭けた。

「死にたくない」ソレが戦場で生き残る全てだった。

皮肉にも神の領域を蹂躙して生まれ、『箱庭の庭師』に欠陥品とコードを打たれた、ヒトと本当に定義できるのか怪しい僕は、父さんの『形見の品』が見事に適合した。だがソレからの毎日は、ソレまでの日々より酷い物に変わった。在るのは敵襲と、砲撃の轟音だけだ。

敵兵ならずとも、敵国の人間なら問答無用で薙ぎ払い、彼らの降伏の声明など、耳を傾ける間も無く焼き払う。焦げた人肉の鼻につく臭いが離れず、機械油と煙の煤と返り血で何時しか僕の軍服は真っ黒に染まっていた。目に見え、肌で感じられる狂気に包まれた戦場で、僕が自分を見失わなかったのは彼女のお陰だろうと思う。

…もし僕がアノ作戦を失敗しなければ、彼女は生きていたかもしれない。あの時、僕は初めて人を殺すのを躊躇った。しかしその迷いが『勇者』とっては好都合だった。

瞳の奥で未だ燻るあの日は忘れていない。


米神に手を当てているとトンネルに差し掛かった。途端に鏡へと変貌した車窓が僕を写す。

ボサボサとキューティクルの無い灰色の髪に、気持ち垂れ気味の二つの黄土色の眼。長身痩躯と聞えは良い痩せた体つきの・・・少々無精髭と隈で疲れた青年が座っている。

そうソレが僕、クローヴィス・O・カーネギー。

通称はクロ、猫や犬みたいだと僕は気に食わないがしかたない。

今、僕は旧式もいい所の蒸気機関車の車窓から、黄昏時に差し掛かった外を眺めている。上層部が結んだ講和条約の下に、麦芽戦争が終結したのだ。僕は懐かしき故郷に、戦友の形見を抱えて戻ってきたのであった。

なだらかな麦畑と草原が黄金色に輝きながら何処までも続く。長閑な我が故郷は、悲しい戦争を知らないような顔つきのままだ。麦芽戦争が始まったのは二年前、丁度僕たちが成人した年だった。それから故郷には帰ってないことになる。ドタバタと逃げるように故郷から戦争に向かったが、家の方は大丈夫だろうか。

そんな心配をしながら、何一つ変わっていないホームへ汽車は滑り込み、終着駅に汽車は疲れ切った汽笛を響かせ停車した。錆びて開けにくいドアをこじ開け、僕はプラットホームに降り立った。

「帰って来れたんだ…」

ふとそんな台詞を口にしてしまう。赤煉瓦造りのプラットホームで感傷的に浸る暇なく、僕らは村に向けて歩き出した。木製の改札を駅長のグラテウス爺さんに開けてもらって、樫のドアを開ける。

傾いた大理石の噴水を懐かしく思いながら、僕らは駅から村へと伸びる石畳のこの道を、二年前とは逆に上がっていく。丁度刈り入れ時の麦畑を過ぎ、トーマスさんの牧場を眺め、小川に掛かる質素な石橋を渡る。

五回曲がる最後の坂を上り、簡素な門を潜ると、僕達は村の中心に辿り着いた。日干し煉瓦の家々が変わりもせず立っていて、その全てに暖かな灯火が煌々と煌いていた。

「…それでは一先ず家族に会おう」

夕暮れの広場での誰かの提案を聞き入れた僕達は、めいめいの家族が待つ家へと向かって別れた。皆が立ち去るのを眺めてから、僕も丘の上の自宅へと歩き始めた。お気に入りの『星を数えて』を口ずさみながら、僕は砂利道を歩き続けた。

父さんが好きだったコノ歌を風に流しながら僕は丘を登り続け、程なくして小さな赤煉瓦の家が目の前に現れた。思い出の欠片が見えた気がして思わず眼を擦る。

懐かしさで胸が一杯になりながら、僕は留守を任せた彼女の姿を探し始めた。

夕暮れ時の丘に秋風が吹き黄金の稲穂を撫ぜて駆け抜ける。ソコから歩き大きな栗の木が生えている上を目指す。辿り着いてみれば、昔よく遊んだ古い切り株に腰掛けていた彼女の銀の髪が風に遊ばれるまま軽やかに流れていた。

どんな宝石よりも鮮やかに輝く太陽が彼女の横顔を橙に染めていた。

「ただいま」

なんだか照れくさかったけど、その一言が僕の思いの全て表してくれた。僕は振り返る彼女の整った顔が驚くのをずっと眺めていた。

「…クロ?…嘘?」

バネでも仕掛けてあったかのように、切り株から勢いよく彼女は立ち上がり、俺を驚きと怒りの混ざり合った目で見つめる。それから、小さくて可憐な唇を真一文字に口を結んだかと思うと、強烈なビンタを僕の顔面に放ち首根っこを掴んだ。

炸裂した右の頬がヒリヒリと焦げたように痛んだし乙女らしからぬが、悪い気分じゃなかった。ラベンダーのような彼女の瞳が僕を見上げていた。

そんな余裕がある僕とは対照的に、彼女は肩を小刻みに震えさせていた。二重瞼の綺麗な瞳に大粒の涙が見え、今にも泣き出しそうだった。僕は悩んだり躊躇いながらも、

「ごめん…クリス」

彼女の震える細い華奢な体を僕は強く強く抱きしめる。

彼女の鼓動が、吐息が、直ぐそばで感じられる。二年前に僕が彼女を裏切った事が今更頭を駆け巡り、甘く切ない髪の香りは何一つ変わっちゃいなかった。

「…どれだけ私が心配したと思っているの……」

涙声で彼女は僕の胸で鳴き続ける泣き声はあの日と同じようだったと思う。

名目だけの志願兵として戦場へ行くと彼女に告げたときも、同じようにビンタをされた。曇り空だった出発の夜、駅の電車は使わずに僕は馬で中央に向かう積もりだった。でも、深夜の馬小屋の前に彼女は一人立っていた。

大喧嘩だったと思う。僕は彼女を突き放すように、馬に飛び乗って走り出した。

『いってきます』の一言を彼女に告げずに。

「…ごめん」

 繰り返すように、僕は彼女の長い髪を撫ぜながら謝った。彼女は曇った声で

「クロは昔からそう…何でも一人で背負い込んで私の前では空元気で笑うの…何故一人で抱え込む…私はこんなにもクロを…」

とだけ告げる。その台詞に僕は小さな針が胸を突いて痛くなっって、言葉を返そうとしたのだが。お邪魔虫がやってきたのであった。

「あつ!クロ兄ちゃんだ!」

木の上から落ちたきた短パン少年は告げる。

「ほんとだクロだ」

オマセなちびっ子淑女はスカートを穿いてる事関係無しに落ちてきた。

「お帰りクロ!」

はなたれ小僧は僕の軍服の裾で鼻をかんだ。

「クロ〜」

最後の一人はあろうことか頭の上に落ちてきたのであった。

―ムードぶっ壊しが大好物のチビ助たちがゾロゾロと出て来たのである。

「ただいま皆」

滅茶苦茶引きつった顔で答える、本来僕は気のいい性格なのだが今回ばかりは腹が立つ。

やっと親が帰ってきたと言うのに、このガキどもは。

「女好きのクロだっ」

唐突にトニーさんの娘さんが僕を指差す。露出癖の君が?!

「はっ?!何でよさ?」

「クロは女好きだから!!!!!!!」

全員で声をそろえて大音量それも発掘された音波兵器並みのノイズで叫ばれる。

「ななななッ!何を仰る!」

ドもってヘンテコな発音で訊ねると短パン小僧がダンディズムに顎を擦りながら呟く。

「ふっふっふ!父ちゃんの手紙にあったんだクロはクリスに浮気してるって!」

いつ僕が浮気をしたと言うのだ、そもそもクリスはフリーではないか。だいち僕は創世主に誓って誰かに永遠の愛を語ったわけではないのだ。

…確かに真剣に愛した人も居たけれど。

「…チビいい加減にしてくれ僕だって怒るぞ」

「「わークロがオッこった〜!」」

ドッタバッター!!って感じでチビどもは村に消えていったのだった。

「やれやれ…さてとクリス?家の鍵って持ってるっかい…って…!!」

阿修羅の如し憤怒の表情を浮かべたクリスがいた。

「あ〜あっあのう?クリスさん?何故お怒りでしょう?」

僕の台詞に彼女は唇の端を引きつらせ激怒したのであった。

「あんったって人……ッ!何処の誰!私にプロポーズしたオ・ト・コは!!」

「ひぇッ!!」

ナンダかトラウマちゃんが警告する記憶の扉が開きかけたところで、僕は鉄槌を脳天に受けて七色の花園に飛び立ったのであった。

下手糞なりに書いてみましたので…つたない文ですがどうぞヨロシク。続編書いてみますので

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