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第94話 ……多分見間違い

 草の無い大地を超え、8本足の馬は草原に入る。 スレイプニルの上に乗るのは3人と1匹。 最初この人数を乗れるか不安だったが意外と行けた、流石神様を乗せただけはある。 確か神話だと大陸の端から端まで行けるんだっけ?


「レイさん! 速すぎです!」

「アリア、大丈夫だってば。 落ち着いて落ち着いて」


 アリアがスレイプニルに乗った時から俺に抱きつきながら恐怖を主張している。 まあ、この速さはアリアにとっては初めてなのだろう。 怖いのはしょうがない。 けどアリアの後ろに居るネイは楽しそうに声を上げる。


「おー、良いね~。 速い速い!」

「ね、ネイ! 慣れるの早すぎです!」

「いやあ、酔ってる時は大変そうだけど、凄い楽しいじゃん。 レイちゃん、もっと速く出来ない?」

「や、止めて下さいレイさん!」


 すっかり楽しんでいるネイの言葉を聞き、俺に更に抱きつき懇願してくるアリア。 その様子は少し苛めたくなる位可愛い……けど


「流石にアリアが気絶しそうだし、これ以上速くするのは止めとくよ」

「……もうギリギリです」


 俺の言葉を聞いたアリアはぐったりした声を出していた。


『取り敢えず我慢』

「そうそう……ねえ、レイちゃん。 この速度ならハイナ教国に今日中に着いちゃうんじゃない?」

「うーん、どうだろ?」


 正直ハイナ教国の距離を詳しく知らないし、アリアの為に度々休んだ方が良さそうだしもうちょっと掛かるだろうと頭の中で予想する。

 そういえばスレイプニルって見た感じ車より速く走っている気がするが俺達には「ぶおぉぉ」という風の音が聞こえない。 スレイプニルの力なのだろうか?


「どう思う?」

「し、知りません!」

「私にはわかんなーい」

『さあ?』


 周囲から見ればとんでもなく速い何かが走っているように見えるのだろうが、原因である俺達は相当呑気な会話をしているのであった。

 そしてまさに風の如く走っていると、茶色い何かを思いっ切り轢いた。


「あの……レイさん?」

「ちょっと、ストップストップ!」


 スレイプニルに指示を出し、動きを止めて後ろを確認する。 だが相当速かったせいかひいた何かの姿は見えない。


「た、多分モンスターだよね……」

「茶色に見えたし、きっとそうじゃない?」


 俺の言葉にネイが平然と言ってくる。 そうだよな。 幾ら「平原の主」が消えたからって平原を単独で歩こうとする人は少ない筈。 轢いたのは1人だし恐らくモンスターだろうし大丈夫だろう……だよね? 人じゃないよね?


「……まあ、ここで休もっか」

「は、はいそうですね」


 俺の現実逃避しようとする言葉にアリアが同調する。 ……ここでハイナ教国へ突っ走ったら焦っているように見えるとか考えているのは内緒だ。

 スレイプニルから降りて草原に座り込み水筒に入れた水を飲む。 水は温いが飲めない訳ではない。


「あれ? レイさん水筒なんて有ったんですね」

「ん? アイテムボックス探したら見つかったよ。 アリアも飲む?」

「あ、じゃあ頂きます」


 アリアに水筒を渡す。 彼女は水を少し不思議そうに水筒を眺めていた。


「けどレイさんがこんな道具を用意するなんて……何か意外」

『確かに』


 うんうんと納得するように頷く2人。 ……相変わらずこの2人は俺の事を猪突猛進だと思って居るようだ。 間違っては無いけど俺だって必要最低限の用意はする。


「確かに、今日もしかしたら槍の雨でも降るかもね」

「ネイも言うの?それ」


 真面目な顔してうんうんと頷くネイ。 ネイも同じ事考えてたのか……。










「さて、そろそろ行く?」

「……はい」


 しばらく草原で休憩兼日向ぼっこをしていた俺はアリア達に話し掛ける。

 アリアはその言葉でスレイプニルに対する恐怖を思い出したのか顔が強張るが了承の返事をしてくれた。


「けどああいうの良いね。 あんなに速く走ったの初めてだけど楽しい!」

「そ、そうですか?」


 ネイが笑いながらそう宣言するとアリアが恐ろしい物を見たような表情になる。 アリアはスレイプニルに乗る事は相当嫌な様だ。


『どうでもいいから早く行こ。 好きでも嫌いでも乗るのに変わりないから』

「……そうですね」


 黒猫さんの言葉にとどめを刺されたのか如くうなだれるアリア。 流石に可哀想だが俺がここで声を掛けるべきなのだろうか……と悩んでいるとネイがアリアの肩を触りながらうんうんと頷いている。


「まあ、アリア頑張ろ」

「な、何か悲しい気持ちになりました……」










視点変更 レイ→レオーナ


 見渡す限り何も無い大地を私達は進んでいく。 一面殆ど変わらない景色に騎士達の顔にも疲れが見える。 予定では首都には明日の昼頃には辿り着く。 だが騎士達の士気が下がっているし首都に直接攻めるのは得策では無さそうだ。 それに


「この状況じゃ攻める相手が居るのかすら分からない」


 ヴェルズ帝国の首都が近いにも関わらず人の気配がせず、怪しい雰囲気で満ちているのみ。


「団長」

「ん?どうした」

「雪が降ってきました」


 書記官の言葉を聞き空を見る。 すると上空から白い雪が灰色の雲から舞い降りていた。


「雪……オルアナ王国じゃめったに降らないが、ヴェルズ帝国では降るのか」

「団長、急ぎましょう。 寒くなればヴェルズ帝国の兵の方が有利になります」


 私は書記官の言葉に頷き、進む。 その時何となく私は上を見た時何か黒い鳥の様な物が空を飛んでいた気がした。


「……?」


 1回瞬きした時にはその姿は居なくなっていた。


「気のせいか」

「団長?」


 私は書記官の言葉で顔を前に向く。 恐らく気のせいだ。

 あれは人の姿をしていた様に見えたが、恐らく違う。



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