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第92話 ボイルの港町の平穏

 その後俺はミカに手伝って貰い近くの宿屋に何とか泊まった。 宿屋の主人はネイの姿を見て少し目を丸くしたが明るく泊まらせてくれた。 俺はアリアとネイを寝かせた後、俺は黒猫さんの姿が無い事に気付いた。


「あれ? 最初は居たような?」


 アリアが酒を飲んだ辺りから姿が見えなくなった気がする。


「……探してみようかな?」


 【召喚】を使えば黒猫さんを呼び出せそうな気がするが、黒猫さんの事情も有るだろうししばらく足で探すことにした。


「……ま、のんびりやりましょうか」










 そしてしばらく町を歩き回る。 町の至る所には酔っ払った人やお酒を勧めて来る人が幾つも見えるが黒猫の姿は見えない。


「よう、お嬢ちゃん」

「あ、ダイナン」


 酔っ払った人達の間を通りながら黒猫さんを探しているとダイナンが俺の前に現れる。 手にはもちろん酒瓶が……。


「あれ? ダイナンお酒飲んでないの?」


 ダイナンは酒瓶を持っておらず、顔も赤く無い。


「あ?ああ、俺は酒が嫌いでな。 もしもの時に判断が鈍っちゃ嫌なんだ」

「おお、何か冒険者らしい理由」

「俺は冒険者だ」


 溜め息を吐きながらダイナンは俺を軽く睨む。


「お前は酔ってるのかよ」

「みんなに飲まされたの」


 俺が抗議するとダイナンは苦笑いをしていた。


「まあ、良い事じゃねえか。 ライヴァン同盟ではな、気を許した仲間としか酒を飲まねえんだ。 お前達と飲んだって事は仲間と認めたんだろ? 特に獣人族のお嬢ちゃんもだ」


 ダイナンがネイの事を知っているのに驚きながらもあの騒ぎの後に居たのなら知っても納得だと感じ、話を続ける。


「じゃあボイルの港町のみんなはネイの事を認めてくれたんだ」

「ああ、少なくともボイルの港町はな」


 そういう話を聞けるとネイの事を本当に認めてくれたのだと更に実感出来心が安堵する。


「そうなんだ……」

「ああ、良かったな……にしてもお嬢ちゃん」

「ん?」


 ダイナンが俺に笑顔を向けた後、直ぐに真面目な顔になる。


「お前はまだ大事な事が有るようだな」

「へ?」


 思考力がやや低下しているがガントの言葉に少し体がピクッと動く。 それって「魔神」の事?


「何で分かるの?」

「顔で分かる。 まだ完全に終わった感じはさらさら無さそうだ」


 やだ、このドワーフ最初の印象と全然違う。 何て思っていると俺の肩に手を置く。


「ま、頑張りな。 お嬢ちゃんの敵はどんなのかは知らないが。 お嬢ちゃんなら勝てる……絶対にな」

「うん、大丈夫。 これが終わったらダイナンとまた闘ってあげる」

「それは勘弁だ」


 ダイナンは俺の言葉に笑いながら返し俺の元を去っていった。










「さて、黒猫さんを探さなくちゃ……」


 ダイナンが去ってからボイルの港町をゆっくり歩く。 すると前でメモ帳を持ちながら酔ってる町の人達に話しかけている女性が居た。


「記者さん」

「あ、どうもどうも~レイさん」


 ガレーナニュースの記者さんは俺の姿を見て明るく手を振る。


「色々記事出来た?」

「はい!つい先日の魔族の件や、病院の開かずの部屋が開いた件色々有りますよ~。 大豊作です!」


 とても楽しそうな記者さんの声。 記事に出来る出来事が多くてとても楽しそうだ。


「あ、記者さん黒猫さん見た?」

「黒猫さん? 黒猫さんなら確か港の方で見ましたよ」

「ホント! ありがとう記者さん!」

「いえいえ、どう致しまして~」


 とても楽しいのかやや浮かれた声で俺に返答して来るのを見て俺も思わず笑ってしまう。


「レイさん、これからどうしますか?」

「とりあえずハイナ教国に行くよ。 その他の事は後で考えるよ」


 俺は少し嘘をつきながら記者さんと話をする。 記者さんにヴェルズ帝国に行くって言ったら一緒に着いて来そうだしな……。


「そうですか……じゃあ、私はこれから次の取材をしたいと思いますよ~」

「うん、じゃあね。 また会おうね~」


 俺は明るく記者さんに言い、手を振る。 そして記者さんが見えなくなった所で手を下げる。 そして自分の言った言葉を少し考える。


「また会う……」


 敵は今魔族を統べている「魔神」。 俺はそいつに勝てる気が全くしていない。 でもまた会う為に


「勝たないとね。 絶対に」


 俺は思わず手に力を入れ記者さんの行った方向を見る。


「うん、また会おう」

『誰に言ってるの?』


 俺が呟いた後、後ろから聞き慣れた鈴みたいな澄んだ声が聞こえる。 振り向くと黒猫さんがそこに居た。


「あ、黒猫さん何処に行ってたの?」

『町はうるさいから海を見てた』


 俺の不安をよそに黒猫さんはサラッと言葉を発する。 黒猫さんが急に消えたから不安だったが特に問題は無かった様だ。


「そうだったの。 あ、2人は宿屋で寝てるよ」

『そう……ご主人様はこれから何かする?』

「特に無いから私としては戻りたいけど……黒猫さんはどうする?」

『私も行く』


 そう言い俺の隣に歩いて来る黒猫さん。 そして2人で宿屋に向かって歩き出す。


『祭りの後にはハイナ教国に向かうの?』

「うん、「魔神」の事は流石に急がないとね」


 とは言いながらこうやって祭りを見ているのはどうかと感じなくもないが、退院したばかりだし、ガント達からのネイへの贈り物とかも有るししょうがない。


「それにここに来るのは最後になるかも知れない」


 そう思うと何だか名残惜しい……というか次へ進みたいという気持ちが恐怖に近い感情で薄らいでしまう。


「でも進まないといけない」


 例え敵が強大でも知り合いを守る為ならば。


「やらないとね。 黒猫さん」

『何が?』


 俺の言葉に黒猫さんが不審な顔をしながら返して来る。


『さっきからブツブツと言って』

「うーん、勇気付けみたいな物かな? これからの為に気合いを入れようと思って」

『怪しいから声には出さないで』


 黒猫さんから厳しい言葉を入れられる。 ……流石黒猫さん容赦ない。


「でも黒猫さん大丈夫? 心構えとか」

『問題ない。 何時も通り』

「凄いなぁ黒猫さんは」


 これから自分より強い敵と戦うというのに相当冷静な黒猫さんに素直に感心する。 やっぱり経験が違うのかな。


『ご主人様も冷静じゃないの?』

「そう?」

『お祭りも楽しんでるし』


 黒猫さんはそう答えるとゆっくり先に行ってしまう。


『ま、楽しめるときには楽しまないといけないよ』

「黒猫さん、年寄りみたい」

『失礼な』


 そういえば黒猫さんって【補助 変身】した時の見た目で騙されるが俺よりも年上だったな。


「ま、黒猫さんは可愛いから気にしないけど」

『くっつかないで暑いから』


 俺が黒猫さんを持ち上げ、抱きしめると軽い抗議はするが抵抗をしない黒猫さん……うーん、黒猫さんフカフカしてて中々良いな。


「私がこのまま宿屋まで連れて行ってあげよう」

『……暑い』


 俺が黒猫さんを更に強く抱き締めると黒猫さんは愚痴を呟きながら目を閉じていた。 顔の感じからしてそんなに嫌がっては無さそうだ。 俺は騒がしい町の中を1人と1匹は静かに歩いていた。 ……何だか俺もアリアやネイみたいに眠くなって来たな。


「早く帰ってねよ……」


 初めてお酒を飲んだせいかな? そう思いながら俺はゆっくり進んで行った。

しばらく間延び感が有りましたが次回辺りからストーリーが動く予定です。


……乞うご期待?

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