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第91話 お酒は適度に

「俺にはまだ準備が有るからな。 まあ、お祭りを楽しめよ」

「ああ、うん」


 少し俺達と会話したガントはその後、手を振りながらついでに体も少し左右に揺れながら俺達の元から離れていく……かなり強そうなガントがあのクタクタ。 一体どれくらい大変な準備なのだろうか。


「……まあ、いっか。 私達は楽しもっか!」

「うん、そうだね」

「はい!」

『当たり前』


 俺がみんなに声を掛けると明るい声が3つ返ってきた。










「良く見たら周りの建物も凄いね」

「そうですね。 とっても装飾をこだわってます」


 ボイルの港町の周囲を見ながらネイとアリアが会話している。 町の建物はどの家も壁に明るい布のような物が幾つか垂れ下がっていたり、金鎚が交差している独特の模様が有る旗が立ったりしている。 あれがライヴァン同盟の国旗のような物だろうか……ここは国じゃないけど。


「あ! そこのエルフの嬢ちゃん」

「はい?」


 急に前から酒瓶を持っているドワーフの男に話しかけられるアリア。 何というかかなりそわそわしている。


「早く挨拶してくれよ! その挨拶が有るまで酒を飲むなって言われてるんだ」

「え?挨拶?」

「ああ、そんな事言ってたね~」


 ガントがそんな話をしていた気がする……けどそんなに酒を飲みたいのか。 宴会をしたいだけというのも事実かもしれない。


「で、挨拶ってのは何処でするの……ってあれ?」

「居ませんね……」


 何時の間にか酒瓶を持った男の姿は無かった。 あの人もう酔ってたんじゃないか? っていうか挨拶の場所が分からない……。


『また迷子?』

「だね~」










 その後俺達は何時も通りに町の人達に場所を聞き何とか会場に辿り着いた。 アリアが会場についた瞬間ナギを含む弟子達に連れて行かれ、いきなり民衆の前に立たされていた。 アリアは挨拶をしっかり考えていたようでしどろもどろになりながら挨拶を成功させていた。 そして今、会場の周囲は酒を飲みながらバカ騒ぎしている人で一杯だった。


「ってネイ大丈夫?」

「大丈夫ぅだよぉ」


 俺達の前に居るネイはボイルの港町の人達によって酒を飲まされ完全に酔っていた。 ちなみに俺もアリアも周りの勢いで少し飲んだのは内緒だ。


「すみません、レイさん。 ちょっと頭痛いです」

「そういえばアリア飲んだの初めて?」

「はい」


 そう言うとアリアは頭を少し抱え、近くに有ったベンチに座る。 何か俺も頭クラクラする気がする……何かこの後、直ぐ寝そうだな。 あ、大事な話がアリアに有った気がする。


「そうだアリア、私とネイと黒猫さんはハイナ教国に行ってからヴェルズ帝国に行こうと思うんだけど」

「「魔神」の事ですが?」

「うん、アリアはどうする?」


 ベンチに座って頭に手を当てていたちょっと顔が赤いアリアが俺の方に目を向ける。


「行きますよ。 もちろん」

「あ、あっさりし過ぎじゃない?」

「何がですか?」


 そう言い眼を細めるアリア。 何か顔の赤味が増しているような気がする。


「レイさんは私が居なくちゃ駄目なんですから」

「ん?アリア?」

「私が居ないと国の事も分からないし、思い付いたら周りの事考えずに直ぐ動いちゃうし心配させるし。 後可愛い物が好きだし」

「え、最後関係有る?」


 俺が突っ込みを入れるがアリアはベンチの背もたれに手を置き、何かチャラい人みたいな体制になりながら「全くもう……」と溜め息をつく。 もしかして相当酔ってる?


「とりあえずレイさんはね。 私が居なきゃ駄目なんですよ」

「う、うん。そうだね」

「でも私は邪魔かも知れないです……それでも良いなら」


 そう言い寂しそうな顔をするアリア。 酔ってるせいか情緒不安定になってる。


「良いよ。 アリアは私にとって大事な人だもん」

「そうですか! じゃあ私と結婚しましょう!」

「あれ?ん?」

「そしてずっと居ましょう! 暮らしましょう」


 あれ? 何か話が可笑しいぞ。


「レイさん、子供は好きですか?」

「え、うん嫌いじゃ無いかな……」

「そうですか、3人ですか」


 んんん?


「あ、アリア? お酒そんなに飲んでないよね?」

「はい、頑張ります!」


 か、会話が全く通じていないしアリアの顔がかなり赤い。 更に頭がクラクラと揺れていて相当酔ってるのが伺える。


「とりあえずレイさんは私にとってとても大事なんですぅ! だから私がしっかり支えるんですぅ」

「あ、うん分かった分かった」


 多分、アリアも心の中でネイと黒猫さんみたいに俺の事を心配しているんだ。 多分、酔って無くても答えは同じだったに違いない。


「レイさん、聞いてますか! レイさぁん」

「あ、うん聞いてる聞いてる」


 ……と、とりあえず今の状態のアリアを何とかしないと。










「あ、レイとアリア。 こんにちはぁ」

「ミカ……とネイ?」


 酔ったアリアはその後しばらく俺に色々な文句を付けた後寝てしまったのでベンチでアリアに俗に言う膝枕をしていた所ミカと彼女に支えられた今にも倒れそうなネイに会った。


「ネイ、大丈夫?」

「の、飲み過ぎたよ……」

「と、取り敢えず座って。 ホラ」


 俺はアリアが寝ているベンチを頑張って人1人分のスペースを開け、そこにネイを座らせる。 どうやら俺がアリアと話している間にガントの弟子の集団に捕まり盛り上がっていたらしい。 まだ昼なのに。


「確かこのお祭り夜までするんだよね? あんなに飲んで持つの?」

「大丈夫じゃないですかぁ? ギルドには朝からずっとお酒を飲んでる人も居ますからぁ」


 ……それとこれとは話が違く無いか?と思いミカを見た所彼女の顔も赤い。


「みんな酔ってるのね……」

「そういうレイさんも顔が赤いですよぉ」


 確かに俺も酒は飲んだけど……俺って酒に弱いんだな~っと思っていると隣に座っていたネイが俺に寄りかかって来る。


「ネイ、ネイ……寝ちゃってる」

「相当飲んでましたからねぇ」


 小さな寝息をたてるアリアとネイ。 2人共可愛いし俺にとっては天国だが。


「……ここから動けない」

「そこでしばらく待つしか無いですねぇ」


 ベンチで困っている俺を見てミカが楽しそうに笑い、それに釣られて周りに居た町の人達も笑っていた。


「……ま、これも良いかな」


 周りの人達も楽しそうに見ているし、俺も幸せだし、悪いことは無いしちょっと位恥ずかしくても良いかな。

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