第90話 嬉しい贈り物
視点変更 彰→レイ
「……でレイさんは今日退院ですか?」
「うん、そうだよ」
魔族の話から次の日の朝、俺の病室にアリアと2人で居た。 俺は医者にやや無理を言いながら、元気っぷりを見せつけまくり退院する事に成功した。 なので今、退院の為の準備を色々としている。
「……で、それは準備何ですか?」
「うん、準備」
俺は今病室のベッドの上にアイテムボックスから出した服が大量に置いてある。
「アリアも着替えるんだよ」
「へ?」
「ほら、ライヴァン同盟の時に……」
「あ、有りましたね……そんな事」
ライヴァン同盟に入るときに服を替える条件を出したのを朝起きたときに思い出したのでついでに俺の服も替えようと思ったのだ。
「ほら、これとかどう? ブレザーだよ」
「また高そうな物を……レイさんは決めたんですか?」
「うん、これ」
ベッドの上にズラッと並んでいる服を1つ取り、アリアに見えるように持ち上げる。 その服は白い布地にピンクの刺繍が草木の様にしてあるドレスでスカートの所が四枚の葉っぱのようになって居る。 この服は「森の王女のドレス」と言うアイテムでBランクのアイテムだ。 防御力は低いが精霊の影響を受けやすくエルフに優しい防具だ。 流石に「魔神」と戦うときは防具をもっと凄いのに変えるがまだまだ可愛いのを着ていたいのでこの服にした。
「あ、じゃあアリアお揃いとかどう?」
「いや、それは……何か嫌です」
「酷い!」
「いや、レイさんが嫌な訳じゃ無くてですね……」
俺の冗談半分の言葉にアリアが必死に言い訳をする。 相変わらずの真面目っぷりに少し笑いながらアリアに似合いそうな服を探す。
「あ、アリアこれ良くない?」
「流石にお揃いは……ってレイさん何ですか?」
まだ言い訳していたアリアが俺の言葉を聞き俺が指差した服を見つめる。 それは淡い青が中心のドレスで胸元やポケットに貝殻が付けてあり、華やかではないが優雅さを感じる綺麗な逸品だ。
「これ、似合わないかな?」
「だからレイさん。 どうしていつも高そうな服ばかり……」
「そういうのは気にしないの。 ほら、着替える着替える」
「……まあ、レイさんとの約束ですからね」
そう自分に言い聞かせるような言葉を呟き病室で服を脱ぐアリア。 流石にアリアの裸も何回か見てるので男の俺でも慣れてきたがやっぱり顔は少し赤くなるので自分も服を着替える事で意識をそっちに移す。 大丈夫、俺は服を着たアリアの姿で萌えたいのであって決してエロ目的じゃないんだ。 裸で興奮するなんて類人猿のする事なんだ。
「よし、オッケー……セフセフ」
「?」
俺が思わず呟いた言葉にアリアが首を捻った雰囲気を俺は感じた。
「おお、アリア似合うね」
「でしょ?」
「ネイとレイさん。 その……恥ずかしいんで大声上げないで下さい」
お祭りをしている町の中。 俺とアリアとネイと黒猫さんという何時もの面々で道を歩いている。 ちなみにネイも俺が【魔法】で元気にしたら医者に無理を言って退院したらしい。 そしてお祭りを見に行こうとしていた俺達について来た。 もちろん俺達の服は着替え終わっており新しい服になっている。 まあ、そんな事は気にしないネイは周りを見渡しながら声を上げている。
「にしても凄いね。 賑わってるよ」
「私こういう雰囲気好きだよ」
「私はちょっと……人が多いのは苦手なので」
アリアがそう小さな声で呟く。 まあ、その気持ちは判らなくも無い。 今の町は露天が昨日、一昨日よりも圧倒的に多くなっていて人の密度ならハイルズより多そうだ。 更に周りに居る人の殆どがドワーフなのでエルフの多いハイナ教国にずっと居たアリアにとっては怖い物なのだろう。 何てアリアを少し心配していると後ろから少し横に大きいドワーフの女性がアリアに話し掛けて来た。
「あら、あなたは昨日の……」
「はい?」
「あなたのおかげで早く避難出来たわ。 ありがとね」
「あ、はいどういたしまして……」
アリアの言葉を聞き、微笑みながら通り過ぎる女性。 多分、アリアが避難の手伝いをしてたらしいから、その時に避難した人かな? その後もアリアに何人か話し掛けて来る。 アリアはその1人1人に対して戸惑いながら返答する。
「何でこんなに話し掛けて来るんでしょうか……」
「アリアちゃんが珍しかったんじゃない? ほら、みんなドワーフなのにアリアちゃんだけエルフだし」
「ああ、成る程」
日本だと外人さんが目立つようなものかな? と何となく理解しながら3人と1匹で歩いていると前からドワーフの男が俺達に近づいて来た。 その男は知らなかったが手に串に刺さった肉らしき物からして露天で食べ物を売っている人だろうか。
「おい、そこの女」
「え、私?」
ネイがその男に話し掛けられ、体をビクッと動かす。 まだネイはドワーフに話しかけられるのには慣れてないようだ。 その男は手に持っていた串をネイの前に出す。
「ふぇ?」
「俺は獣人族が嫌いだ。 だが、町を守った事位は感謝してやる」
そう言い無理矢理串をネイに渡すとその男は去っていた。 その男が始まりだったのか今度はネイの周りに色んな人が集まって来る。
「あ、あんたこの前の時はありがとね」
「やあ、獣人族の嬢ちゃん。 このネックレス上げるよ。 つりはいらねえ」
「あ、あの時の! 獣人族の方。 あの時はありがとうございます!」
露天を開いている女性や男性に声を掛けられ商品をプレゼントされるネイ。 最後の女性に至っては頭を地面にぶつけんばかりに頭を下げお金の入っている袋を渡してきていた(ネイは遠慮し受け取らなかったけど)。
「2人共、大人気だね」
「私、こんな事初めて……」
俺がネイとアリアに冗談半分で話しかけるとネイが目を潤ませながら貰った物を見ていた。 俺とアリアはそれを少し驚きながら見ていた。 黒猫さんはそれを理解したような目をしている。
「おい、ネイ」
ネイが目をこすって居ると後ろから声が聞こえる。 そこには物凄いオーラを感じる鉄仮面ドワーフガントが居た。 けれどどこか眠たそうなオーラも感じる。 お祭りの準備徹夜だったのかな?
「贈り物はまだ有るぞ」
「へ?」
ネイは急に現れたガントとその言葉に声を上げる。
「あ、そういえばガントの弟子達とかが贈り物をしたいんだっけ?」
「そう、それだ。 何でもあいつ等の最高傑作らしいぞ」
「へぇ~」
俺が何を作ったのか少し興味を持っていると、ガントが欠伸を1つ点く……相当眠そうだ。
「大丈夫? ガント」
「あぁ、その贈り物作るのに俺も手伝わされたからな」
「……それ、最高傑作なの?」
「手伝ったのはデザインだけだから大丈夫だ。 作ったのはあいつ等だしな」
ガントって意外とアバウトなんだな……と俺は眠たそうなガントを見ながら思っていた。