表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/142

第86話 「魔神」について

「ほう、貴様は「魔神」を倒すのが目的なのか」


 クルルシュムから「魔神」の話が出たので2人に「魔神」の話を追及する。


「そう、「魔神」について何か分かる?」

「諦めろ」


 あれ、ラズと会話が通じていないぞ?


「な、何で諦めろ?」

「貴様は話を聞いていなかったのか? 我に勝つのもギリギリの状態で「魔神」に敵うわけない無いだろ」

「うっ、そりゃそうだけど」

「それに王も居るぞ」


 う~……ラズが全然教えてくれないから埒が開かない。 ならクルルシュムに……


「あ、俺もラズと意見は一緒だ。 諦めた方が良いぞ」


 駄目でした。 そんなに「魔神」っていうのは強いのか……。


「でも、私はそれでも「魔神」と戦わなくちゃいけない。 だから何か教えて」

「だからレイ。 諦めろと……」

「お前は何でそんなに「魔神」と戦おうとしてるんだ?」


 ラズの言葉の途中でクルルシュムが話に入って来たのでそっちを向く。 そこにいたクルルシュムの顔は何処か面白がっている顔だった。 ……何で戦おうとしてるのか? 精霊に言われたから? それも有るけど多分違う。 頭の中で悩んでいた時にふとラズと戦っていた時の感情が蘇った。


「嫌なんだよ」

「何がだ?」

「私の目の前で自分が居た場所や出会った人が無くなるのが」


 嫌だ。 ハイちゃんやサラ、アルカが居るハイルズが無くなるのが。 そして俺が知り合った人が辛い顔するのは。 ボイルの港町だってミカやガントにその弟子達。 色んな人と出会ったんだ。


「「魔神」はこの後大陸全土を侵略する気だって精霊から聞いた……本当かは分からない。 けどあなた達をここに向かわせたって事は精霊の言ってた事合ってるよね?」

「ああ、大当たりだ」


 クルルシュムが口の端を大きく吊り上げる。 まるで面白い物を見つけた様に。


「だったら私は守りたい。 大切な人とその人達が居る場所を。 だから教えて「魔神」の事を」


 俺がクルルシュムに向けてそう言った。


「クッ……ハァーハァッハッハハッファー!」


 するとクルルシュムは急に大声で笑い始める。 クルルシュムの声が壁に反響して、音がまるでライブハウスの様な轟音になり、俺は耳を塞ぐ。


「きゃっ!」

「うぐっ!」


 ガントとアリアも俺と同じ事を感じたようで耳を塞ぎ、アリアは更に目を塞いで必死に耐えていた。 ガントは大丈夫かもしれないけどアリアは今にも倒れそうになっているので、思いっきり息を吸い込み思いっきり叫んだ。


「うるさい! クルルシュム!」










「悪い悪い、ったく俺を思いっきり笑わせて来やがって……」


 俺が注意した後もしばらく笑い続けていたクルルシュムの声がやっと止まった。 俺の理由がそんなに変だっただろうか?


「ああ、俺としてはてっきりもっと強い奴と戦いたいとかだと思っていたからな」

「私はそんな戦闘狂じゃ有りません!」


 何でそんな考えに至るんだこの男は……。


「それは貴様だったらの動機だ。 クルルシュム」

「ん?そうか? 大体の奴は戦いたいと思ってねえのか?」


 クルルシュムは戦闘狂だったのか……と納得しつつ呆れながらクルルシュムを見る。 するとクルルシュムは「さて、「魔神」についてか……」と呟きながら右手を顎に持って来て考える態勢になる。


「そうだな……奴は強いが……対策をすれば勝機は有るかもな」

「本当!?」


 クルルシュムの言葉に俺は思わず声を上げる。 対策とか有るんじゃん。 クルルシュムはもったいぶらずさっさと言えばいいのに。


「ま、対策って言う程の事じゃない。 「魔神」の能力とかを教えてやるだけだ」

「それでも良いから! ほら、ハリーアップ!」

「レイさん、落ち着いて下さい。 大事な情報を聞き逃すかもしれませんよ」


 俺が思いっきりクルルシュムを急かすと、アリアから咎められる。 確かに冷静に成らないとな……敵は強いんだし情報をしっかり聞かないと。


「じゃ、言って良いか?」

「うん」

「まず、「魔神」は【魔法】が中心だ……俺が見た限りじゃ闇属性しか使ってる所を見てないな」

「ふむふむ、闇属性か……」


 となると闇属性に耐性が有る装備に替えなくちゃな……。


「ま、後は全体的に化け物クラスの力を持っているのと、恐ろしいスキルを持ってる位か?」

「スキル?」


 クルルシュムの言葉に首を縦に振りながら聞いていた俺は質問する。 するとクルルシュムは


「ああ、生き物全てを消滅させる恐ろしいスキルだ」


 と楽しそうな表情で言ってきた。


「いやいや、聞く限りそんな楽しそうな内容じゃないでしょ!」


 さも楽しそうに言うクルルシュムに俺は突っ込む。 彼は俺のその声を聞いたとき更に愉快そうに笑う。


「ああ、笑えないぞ。 あいつが味方だと思った奴以外はみんな消せるんだ」

「笑えないとか言いながら笑わないで下さい!」


 うん、アリアの言うとおりだな。 にしても味方以外を全て消すスキル……そんなの有りかよ。


「……そのスキルについて詳しく教えて!」

「ああ、いいぜ。 お前が知りたい事は何でも教えてやる」


 俺の言葉にクルルシュムは疑いたくなる位あっさりとした返事をしてきた。










 俺はクルルシュムに何回も質問し「魔神」のスキルに関する情報を纏めた。 まずそのスキルは黒い煙の様な物を周囲に放出する物らしい(クルルシュムは【魔法】の一種ではないかと予想。俺には見覚えは無い)。 その煙を浴びると毒を飲んだかのように苦しみだし、徐々に消えていくらしい(モンスターや他の魔族に使っていたのを見たらしい)。 そしてそのスキルは最低で自分の周囲、最高で国一つを飲み込む位の範囲で発動出来るとのこと。


「……ってえ? 国一つ分?」

「ああ、俺がこの目で見たんだ。 間違いねえ」


 クルルシュムが自信満々で言って来る。 自信満々なのは良いがそんな広範囲を一体何処で……。


「2回見たぜ。 最初は俺達が居たバアル氷結地帯で。 そしてもう1回はヴェルズ帝国でな」

「ヴェルズ帝国? そこって確か今……」

「オルアナ王国と戦争中だな」


 さっきまで一言も言わず、話を聞いていたガントが俺達の話に加わって来る。 するとクルルシュムは「へぇ、知らなかった」と簡単に返す。


「にしてもおかしな事だ。 あそこは「魔神」と俺達魔族のせいでもう人どころか草木1本残って無いぞ?」

「何!?」


 クルルシュムの言葉にガントが驚いた声を上げる。 それは無理もない。 俺もびっくりしたし。 にしたって国一つを全滅……それって俺が思っている以上に「魔神」の力って恐ろしいんじゃないだろうか……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ