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第78話 戦いの後

視点変更 ネイ→レイ


 目が覚めたら茶色の天井が有った。 周りは暗く、弱々しいランプの光が1つだけ有る。 俺はベッドの上に寝かされていた。


「……ここは?」

「あ、レイさん! 大丈夫ですか?」


 左の方から馴染みのある声が聞こえたのでそっちを向くと、アリアが椅子に座って俺を心配そうに見ていた。


「アリア……ここは?」

「ボイルの港町の病院です。 あ、ネイも病院の中に居ますよ」


 ……病院、ああラズとか言う魔族と戦った後に気絶したんだっけ。


「町はどうなった?」

「被害は港の近くには有りますが、そんなに多くないそうです。 後、怪我人は多いですが死者は出なかったそうですよ」

「……そう」


 死者が出てない……その事実を聞き取り敢えず安心する。 ミカやそれ以外のボイルの港町の冒険者ギルドの受付嬢達、ガレーナニュースの記者さんとかが無事だという事が分かったからだ。


「……魔族は?」

「2人共捕まったそうですよ」


 捕まった……ラズは黒猫さんがやってくれたから分かる。 ……けど町に行った魔族を倒せる人が居たんだ。 ラズのレベルからしてもう片方も高そうだけど。


「町の方に居たのは誰が倒したの?」

「ガントさんとネイと黒猫さんが倒してくれましたよ」

「え……何か意外なメンバー」


 黒猫さんはレベル高いから戦ってるのは分かるけど……ネイとガント? ガントってネイの事かなり嫌いじゃなかったっけ。


「驚いたのは私もですよ。 あんなに嫌ってたガントさんが一緒に戦ったなんて」

「ちなみに誰情報?」

「ガレーナニュースの記者さんからです」

「ああ……」


 記者さんなら信用できるな。 何て考えながら体をベッドから起こすと左肩辺りを中心に激痛が走る。


「痛!?」

「レイさん! 無理しちゃ駄目です! 医師の方も余りの怪我に驚いてましたし……」


 痛めた体を気にしながらもこっちの世界の医師って何やるんだろ? 何てふと考えた。 ポーション以外にも薬が有るのかな?


「ああ、アリアごめん……」

「別に良いですけど。 自分の体を余り無理させないで下さいね」

「うん、ごめん」


 自分の怪我でアリアを心配させちゃったのか……女の子に自分の事で心配させるのは何だが申し訳なくなり謝る。 するとアリアは手を前で振りながら焦った感じで俺に話し掛ける。


「あ、いえそんな謝る程の事では無いですよ! ただレイさんの怪我、本当に酷かったんですから」

「そんなに?」

「はい、3時間位ずっと死んでるかのように寝てたんですよ。 レイさん」


 3時間……っという事はまだ1日も経ってないのか……何て思いながら視線を自分の体に移す。 服は変えられていて白い飾り気のない服になっていた。 その服の中を覗いてみると体のあちこちに包帯やらガーゼやらが有り、左肩は何やらギブスの様な物が取り付けられている……明らかに重傷者扱いだ。


「……スキルを使えばこの位の傷」


 治るだろうと思い【魔法】を使おうとするが、直ぐに強烈な目眩が起き、アリアの方にもたれかかってしまう。


「れ、レイさん!」

「あれ……?」


 アリアの心配した声が頭に響く。 スキルが使えない?


「レイさんの魔力今殆ど無いんですよ。 だから【魔法】とかは全く使えないそうです」

「ああ……成る程」


 意識がハッキリしない中アリアの言葉を聞き、意識を失う前に黒猫さんが言っていた言葉を思い出した。 魔力が少なくっても気を失うのか。


「……ごめん、アリア。 もう一眠りさせて」

「え、レイさん!?」


 アリアの慌てる声を聞きながら俺はゆっくり意識が消えていった。










視点変更 レイ→黒猫さん


「大丈夫?」

「……無理」


 私の呼び掛けにベッドの上に居るネイは小さく反応した。 彼女は服を全く着ていない状態で背中を上にして滑って転んだかのような体勢で顔だけ私に向けている。 ちなみに先程から全く動いていない。


「……」


 私はネイの肩甲骨辺りを指でつついてみた。


「うにゃあぁぁ!」


 ネイの口から悲鳴が爆発物の如く出て来る。 その声に私は思わず自分の耳を塞ぐ。


「黒猫さん……痛いからやめて」

「……分かった」


 ネイの満身創痍な感じの声に私は耳を塞ぎながら頷く。 どうやらネイは何か強力な薬を使ったらしい。 今の状態はその薬の副作用だとか。


「それ、いつ頃治る?」

「……分かんない」

「分かんないのに使ったの」

「別に良いじゃん。 緊急だったんだもん」


 ネイが小さな声で私に文句を言って来る。 私はネイのその言葉を聞いて少し凄いと思っていた。 幾ら自分の周囲が危険だからって自分に冷たく当たる人が多い場所を守る為にこんなに成るまで頑張ったのだ。 この人の勇気は本当に凄いと私は思っている。


「何?どうしたの? 黒猫さん」

「何でもない」


 私の言葉にネイが不思議そうな表情をする。 ……そうだ、今ここで聞いておこう。


「……ねえ、ネイ」

「……何?」

「何でそんなに成るまで頑張ったの?」


 私はそれが知りたくなった。 ここまで無理をした理由を。 それを聞いたネイは少し考え、こう呟いた。


「認められたかったのかもね……」

「?」

「ああ、いや何でもない何でもない」


 ネイは恥ずかしかったのか手を顔を隠すように動かし


「うにゃあぁぁ!」


 体の痛みで悲鳴を上げていた。

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