第67話 元気な受付嬢って良いね
今回はストーリーがあまり進んでません
次回こそは……次回こそは……
視点変更 サラ→レイ
「レイさん、レイさん起きて下さい」
「レイちゃん、朝だよ」
2人の声が俺の耳に入って来る。 ゆっくり瞼を開けるとアリアとネイと黒猫さん、ついでに私が【召喚】したモンスターが何体か俺を上から見ていた。 その上には青い空が広がっている……ああ、そう言えばボイルの港町の宿には入れなかったから野宿したんだっけ。
「……ん? ああ、おはよう」
「おはようございます。 レイさん」
「さ、早く冒険者ギルドに行こうよ」
「……? 冒険者ギルド?」
俺は寝ぼけた頭でネイの言った言葉を反復する。 何故、冒険者ギルド?
「そうだよ、私達これからオルアナ王国に行くんでしょ? だから冒険者ギルドで護衛の依頼を探そうとしてたんじゃないの?」
「あ、あー昨日そんな事言ったかも……」
朝早いから頭が動かん……。 何て思いながらネイの言葉に頭をガクガク縦に揺らす。
「じゃあ行こうか」
「はい!」
『行こう』
召喚解除しながらゆっくり腰を上げる。 朝食はギルドで取ろう……等と考えながら俺はポツリと呟いた。
「あ、髪直すからちょっと待って」
「あ、レイちゃん支度まだしてなかったね」
「すみません、私達レイさんが起きる前に全部済ませちゃいました」
「いや、良いよ良いよ」
ん?何か今まで自然には言わなかった台詞が……。
「あ、レイさん櫛と手鏡です」
「あ、アリアありがとう……」
「にしてもレイちゃんの髪綺麗だよね……冒険者とはまるで思えないよ」
「そう? 特に手入れはしてないけど」
あれ? 俺は何時のまにこんな女の子らしい会話が出来るようになったんだ? 流石に男だった頃でもこんな反応はしてなかったし……後、俺髪褒められてちょっと嬉しくなってるし。
「……何時のまにか私の女子力上がってる!?」
「ど、どうしたんですか……いきなり大きな声出して」
『女子力?』
アリアと黒猫さんが首を傾げているが今はそれどころじゃない。 俺はアリアや黒猫さん、ネイ等の女の子達と一緒に居たせいか無意識に女性らしくなって居たようだ。
「わ、私は何時のまにそんな事に……」
男だった頃は男らしくなろうとしていたのに、何でこんな事に……っと俺は手を膝を地面に付けOTLの体勢についなってしまう。
「あ、あの~レイちゃん……大丈夫?」
「れ、レイさんどうしたんですか?」
2人の心配する声が聞こえるが、しばらく俺は動けなかった。
その後、約3分位で何とか復帰し、髪を整え冒険者ギルドに到着した。 そう言えば昔は手櫛なんかで済ませてたのにな~何て思いながらも。 冒険者ギルドで料理を注文する。 ネイは昨日の一件以来ドワーフ恐怖症みたいになってしまって居るようだ。 ギルドの人達は普通に接してたのに……。
「……大丈夫? ネイ」
「ま、まあ普通に接してくれるとは分かってるんだけどね……」
俺はギルドの椅子に座っているのに俺の後ろに隠れているネイ。 猫耳がピンと立って周りを警戒している模様。 なかなか可愛いが、あなた一応年上だよね?
「ネイ、座ったら?」
「あ、うん……そうだね」
そう言いおずおずと座るネイ。 明るくはなったが、ドワーフにはまだ警戒してるようだ。
「はぁい、お待たせしましたぁ」
しばらく時間が掛かり受付嬢が料理を運んで来た。 料理を持って来たのは昨日居なかったドワーフの少女(顔で判断するなら)。 その少女は体は小さめながら今の俺と同じくらいの胸を持ち、腰の細さも受付嬢の制服の上から中々の細さだという事が確認出来る。 その少女のやけに明るいが間延びした声にネイは体をビクッと動かす。
「はい、えぇっと以上で全部ですよね?」
「うん、そうだよ」
俺達のテーブルの上に音をたてずにそれでいて恐ろしい速さで料理を並べる。 俺とアリアと黒猫さんがポカーンとしている内に全部並べ終えてしまった。 ちなみにネイはその時、私の後ろで縮こまって受付嬢から隠れようとしていた。
「?そこの方、どうしたんですかぁ?」
「あ、ああ気にしなくて良いよ。 大丈夫だから」
受付嬢が私の裏に隠れていたネイの猫耳を見つけたらしく、頭から疑問符が見えそうな感じで質問して来たので俺が適当に話を流そうとする。
「あ、獣人族の事ならここは大丈夫ですよぉ。 ここはそう言う人も来ることは重々承知ですからぁ」
「……え?」
受付嬢の少女のその言葉にネイは驚いたらしく口を小さく開けていた。
「だって、ここは色々な依頼人や冒険者が居る場所ですよぉ。 獣人族の方がただ物を盗むだけの人だなんてここの職員はみんな思って居ませんよぉ」
「そ、そうなの?」
受付嬢の言葉にネイが俺の横から顔だけを出してくる。 そんなネイに少女は笑顔で首を縦に振る。
「まあライヴァン同盟自体に獣人族の人が来ることは珍しいけどねぇ……やっぱり鍛冶職人の人とかは獣人族が嫌いだからかなぁ?」
「……」
ペラペラと喋る少女を呆然と眺めるネイ。 何かこの子アルカさんと雰囲気似てるな。
「まあ、頭の堅い職人共の事は気にしない気にしない。 さ、料理を食べて下さいよ」
「あ、うん……」
『じゃ、じゃあ』
「頂きます」
「……頂きます」
受付嬢の初対面からの弾丸トークに戸惑いながら食事を始める俺達。 ……流石に2日連続芋はキツいな。 っと思いながら俺は隣にいるネイを見る。 ネイは口に出して貰えたおかげで少し安心したようだ。 にしてもこんな気遣いが出来るあの受付嬢はかなりのプロのようだ。
「えっと……あなたの名前は」
「ミカですよぉ。 あなたはレイって言うんですよね?」
食後、食器を素早く片付けた受付嬢のドワーフの人は俺の質問に何のためらいもなく答えた。 初めて会う人にちょっと警戒感薄くないか?っと思ったが女子同士だから大丈夫なのだろうか。 ……って
「あれ? 何で私の名前を」
「ん? ここに書いてあったからですよぉ。 ほら、これあなたですよね?」
そう言いながらミカは俺の前に紙の束を出してきた。 そこには「月刊ガレーナニュース」の文字が書かれている。
「えっと、「波乱の闘技大会優勝はEランク冒険者!」あ、私だ」
そこには大きく見出しが書いてあり、その下に俺の絵がカラーで描かれている。
「あ、これハイルズの時の」
「今日ちょうど届いた所なんですよぉ」
「あ、だからレイさんの名前分かったんですね」
ミカがのんびりとした口調で説明をして来る。 それを聞きながら俺はページを一枚捲る。 その次には「「平原の主」謎の死亡!」と書いてある。 ……俺的にはこっち表紙にしたほうが良さそうだけどな~っと思いながら文字を流し読みする。 大体の内容は記者さんが言っていたのと殆ど変わらない。 さらに何故Uターンしたのか等の考察が書いてあった。
「へ~あの人本当に記者さんだったんだ……」
「レイさんあの人の事信用してなかったんですか?」
「いや、何か記事を見たら本当に記者さんなんだな~何となく感じちゃって……」
俺が少ししみじみしてるとミカが隣から話し掛けて来る。
「ところで皆さん、ここには依頼とかで来たんじゃないんですかぁ?」
「……あ、忘れてた」
「レイちゃん、相変わらずだな~」
俺の反応にネイが苦笑いしていた。