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第66話 エルフ達の思い出話

視点変更 クルルシュム→レイ


 夜、俺が周囲にモンスターを【召喚】して1人で見張る。 アリア達は仮眠をしている為、今は1人だ。 今日は珍しく黒猫さんやアリアも疲れていたようだ。


「……にしても暇だ」


 自分の白いながらも健康的な体をマントど覆いながら思わず呟く。 ライヴァン同盟は昼は少し暑いくせに夜はやや冷たいようだ。 つまり中途半端な砂漠の様な気候だなぁ……っと思いながら息を吐く。 吐いた息は白かった。


「火でも焚てよ」


 多分ネイ達も寒さで大変だろうし、寒さで寝れなかったら大変だろうな……っと思い火の出し方を考える。 あ、良い方法思いついた。


「【召喚バーニングラット】」


 俺はそう呟くと地面に小さな魔法陣が浮かび上がる。 そこには茶色い大きめなネズミ……のようなモンスターが出てきて、こっちを見ている。 見た目はハムスターみたいな体型のモンスターが某電気ネズミ位の大きさだと言えば分かり易いだろうか……分かりづらいな。 まあそれだけなら可愛い感じに見えるが全身は茶色い岩で覆われていて岩の隙間から炎がメラメラと出ている。 バーニングラットは見た目の通り炎属性の【奥義】や【魔法】が中心のモンスターで初めて戦うプレイヤーはよく苦戦する事で有名なモンスターだ。 HPと防御力が少なく攻撃が当たれば直ぐ倒せるのだが、動きが速すぎて攻撃が中々当たらない。 しかもこのモンスターは動きを止めることが少なく、ヒットアンドラン……つまり攻撃をしては逃げるという動きをするため相当厄介なのだ。


「まあ、今回はその逃げ足の速さは役に立たないけどね~」

「チュウ?」


 俺の独り言にバーニングラットが鳴きながら首を傾げる。 ああ、今日色々有った分このモンスターの仕草に癒されるな……。 ちょっと大きめとは言え見た目はハムスターみたいな感じなのでかなり可愛らしい。


「そこで動かないでね……」

「チュウ?……チュウ!」


 俺の命令を聞き、動かなくなるバーニングラット。 そして俺はバーニングラットの背中から出ている炎に手を近づける。


「ああ、あったか~い」


 俺は思わず呟く。 そうだよ、炎が出ているモンスターを召喚すれば簡単に暖が取れる。 こんな事を考えつく俺頭良い!


「はぁあ……」


 バーニングラットの背中の炎の暖かさに思わず声が漏れる。


「……そう言えばこうやって話し相手の居ない夜は初めてかな?」


 俺はふとそう思った。 こっちに来てから最初の夜はアリアと一緒に野宿をした。 その時もアリアとは【召喚】に関して軽い会話をしたのを覚えている。 その後、黒猫さんが増えてからもずっとみんなで居た。 そう思うと急に寂しくなる。


「そう言えば昔はいつもこんな感じだったな……」


 中学二年生の頃、男子にいじめられいつも何処か寂しかったあの頃。 そしてその頃に「マジック・テイル」のβテストをやった。


「懐かしいな……」


 俺はふと呟いてしまった。 あの頃は自分言うのも何だがかなり鬱気味だった。 女友達に心配されても何時も「大丈夫」「心配かけてごめんなさい」としか言わなくて友達をさらに心配させてたな……。 ん?


「……そう思うと、今のネイもそんな気持ちなのかな?」


 俺はふとそう思った。










視点変更 レイ→サラ


「……あれ?サラまた居たの?」

「ええ、仕事がまだ終わってなくてね」


ハイルズの冒険者ギルドの受付に座り私は書類の確認をしていた所、先に帰ったアルカがやって来た。 空はもう暗くなり、室内はランプの明かりだけの状態。 さっき見たときは綺麗な星空が出ていた。 何でこんな時間に戻って来たのだろうか?


「アルカ、何か忘れ物でもしたの?」

「え? サラ何で分かるの?」

「アルカの事だしそんな事かな~って思って」

「え、酷いよ~サラ~」


 アルカが口を尖らせて不満そうに怒る。 とは言っても何時ものやり取りなので私は気にせず話を続ける。


「……で何を忘れたの?」

「ん、手鏡を更衣室に忘れちゃったの」


 手鏡……そう言えばアルカって何時も緑色の手鏡を使ってた。 あれ以外の鏡を使っている様子を見たことは無い。


「でも別に明日でも良くない? わざわざこんな暗くなってから来るなんて……」


 冒険者ギルドは夜は開いていない。 夜、酔った冒険者に受付嬢が暴行される等の被害を防ぐ為である。 なのでギルドの中には私達以外誰もいないが、夜に女性が1人で外を歩くのは余り宜しくない。 それに天然気味のアルカが歩くとなると心配は増える。


「でもあれ村から出るときにお父さんがプレゼントしてくれた物だし……」

「ああ、そうだったの」


 アルカはハイナ教国の小さな村から首都ハイルズに来たと知り合った最初の頃に聞いた気がする。 まあ、それでも私は明日取りに来れば良いような気がするが、アルカにとっては重要な事のようだ。


「じゃあ、取りに行けば? 更衣室の鍵はそこに有るし」

「うーん、ね、ねえサラ一緒に行かない?」

「何で? すぐそこだし私には仕事が残ってるんだけど……」

「だ、だって……更衣室暗いし、私ランプ持ってないし……」


 今このギルドに灯りの点いているランプは私が使っている奴のみ。 別のランプを取りに行くのはそれはそれで時間が掛かる。 アルカにランプを渡して行かせてもいいが、それだとこっちの部屋が暗くなり仕事が結局出来なくなる。 それにアルカにランプを持たせるのは何だか心配ね……ならば


「しょうがないわね……」

「本当! ありがとう、サラ!」


 どちらにせよ仕事が出来なくなるんだ。 ならば1人でランプを持たせると心配なアルカに着いていく方が良いわね。 そう思い書類を1カ所にまとめランプを手に持つ。


「じゃあ、アルカ行きましょうか」

「は~い!」


 私の言葉にアルカが手を挙げて明るく答える。 ……アルカは私の仕事を邪魔している自覚は有るのかしら? 私は後ろをついてくる友人を見て軽くため息をついた。










「あ、あったあった!」


 アルカが木で出来た縦に長い本棚の様な物の扉を開けてしばらく探していたが大声でそう叫んた。 因みにこの箱はロッカーと言いここの受付嬢はみんな1人1つ使える。 そこに各々の仕事に必要な道具や服を仕舞っておく。 世の中には鉄製のロッカーという物もライヴァン同盟辺りには有るそうだ。


「アルカ、夜なんだから少し静かに」

「あ、ごめんなさいサラ」


 アルカが声を小さくしながら私に謝る。 相変わらずの天然ね~っと思いながら何となく視線をアルカから扉の開いているアルカのロッカーの中に移す。 ロッカーの中は綺麗に整頓はされている……が。


「仕事に関係ない物も入ってるわね……」

「別に良いじゃん! ロッカーの中は私の自由なんだし」

「静かに」

「あ、ごめんなさい……」


 ロッカーには受付嬢の制服以外にもスケッチブックと色鉛筆らしき物。 それ以外に幾つか本がキッチリ縦に並べられていた。 私はそれに目を軽く通す。 本の題名から察するにハイナ教関係の本が大体のようだ。 けれどその中の1つに一際古い本が有った。


「精霊神話? アルカこんな本持ってたんだ」

「ん? ああ、それねお父さんが持ってたのを村から出るときに譲って貰ったんだ」

「ふーん……」


 精霊神話……確か100年前の戦争以前から有る神話で、神が自ら作った種族であるエルフが世界を破壊する為に現れた「闇」と戦う話……だったっけ?


 この神話に出てくる「ヤルトス」はハイナ教の唯一神として信仰されてるのでエルフの間には有名だが、ストーリー自体を知っている者は意外に少ない神話だ。


「このお話、最後どうなるんだっけ?」

「え~っとね……確かエルフ達の長であるハイエルフの人が「闇」を操っていた魔物を見つけて「ヤルトス」と一緒に倒して世界は平和になった……ってお話だよ」

「ああ、そうだったけ? おばあちゃんに小さい頃聞いたけど忘れちゃってたわ」


 この話を聞いたのは結構昔だったし、その頃は寝物語に聞いてた感じだったからすっかり忘れてた。


「サラ? どうしたの微笑んで」

「ん?何でもない。 それよりも目的は達成したんだし、さっさと帰りなさい。 いくらハイルズと言えど女の子が1人で深夜に道を歩くのは危ないわよ」

「それ、サラも一緒じゃないかな?」

「私は大丈夫よ。 根拠は無いけど」

「駄目だよサラ。 夜道は危ないよ?」


 私が言った内容をほぼ同じで返される。 早くアルカ帰ってくれないと仕事が出来ないのに……っと内心ため息をつくとアルカが何か感じたかのように俺に提案してくる。


「じゃあ、私もサラと一緒に仕事手伝うよ。 その後に一緒に帰ろう」

「……まあ、それでいいわ」


 アルカの意見に私は賛成する。 どうせこの後何か言っても一緒に帰ろうって部分は譲らないだろうし。


「ま、仕事は増やさないでね」

「サラ、流石にそこまでドジはしないよ」

「どうだか」


 何時もの軽口を言い合いながら更衣室から私達は出る。 アルカは天然でよく仕事をミスするけれど、やっぱり私にとっては大事な親友ね。 後ろから笑顔でついてくるアルカを見て私はそう思った。


「けどサラが徹夜って珍しいね? 何の仕事?」

「今日、アルカがやり忘れた仕事よ。 多分今月は減給されちゃうかもよ?」

「……サラ、今夜の事の証言頼むね」

「了~解」

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