第60話 いつの間にか消えていった物って色々あるよね
今回はかなりの説明回……
「それ、どうゆう事?」
ガレーナニュースの記者の言った言葉にネイが反応した。
「ん? ああ、「平原の主」の死体を学者さん達が調査してたらしくてですね。 他の冒険者から色々情報を貰えましたよ」
「例えば?」
「そうですね……「平原の主」の死因は焼死だとか」
「ああ……」
まあ、俺が神炎の槍で焼いたしな。
「後、実は冒険者が倒したんじゃないかって噂も……」
「へ、へーそうなんだ」
「私がやりました~」なんて言いたいが目の前にはガレーナニュースの記者さんが居る。 別に記者に嫌な思い出とかは無いが、変に話を広められるのもな~っと思い黙っておく事にした。
「まあ、その話は良いや。 それよりも「平原の主」が逃げてきたって言うのはどういう事?」
「ああ、そうですね……」
記者が俺の質問を聞いた後、手帳の様な物を取り出してペラペラと捲る。
「まず「平原の主」が普段どういう風に移動していたかご存知ですか?」
「え? 平原を一周してるんじゃないの?」
「まあ、そうなんですけど……」
「どっち方向にって事ですか?」
俺と記者の会話にアリアが隣から入ってくる。 ……どっち方向?そんなのも決まって行動してたのか。 「平原の主」って意外に几帳面だなぁ。
「はい、その事です」
「え~っと……確かハイナ教国、オルアナ王国、ヴェルズ帝国、バアル氷結地帯、ライヴァン同盟の前を通ってまたハイナ教国に……っていう順番でしたね」
「え、アリア知ってるの?」
「はい、昔本で読みました」
アリアって博識だな~。 何て思いながら俺は頭の中で「平原の主」の移動パターンを思い浮かべる。 確かハイナ教国は南西そこから真西のオルアナ王国、北西のヴェルズ帝国に……。
「ねえアリア、バアル氷結地帯って何?」
「バアル氷結地帯ですか? 何て言うんでしょうね……とっても寒い所?」
アリアがらしくないかなり曖昧な事を言っている。 まあ氷結って付いてるし寒いんだろうな……。
「実際とっても寒いくらいしか分かって無いんだよね。 平原から北東の位置に有って、大陸から突き出てるんだよ。 そして陸続きでは山脈が有ってあっちには中々行けないらしいよ」
「ネイ、中々詳しいね」
「まあ冒険者達にも色々噂が尽きないからね。 そこには魔族の生き残りが住んでるとか、沢山の宝物が眠っているとか……」
「……ん?」
俺はネイの話に少し疑問を感じ、ネイに質問した。
「あれ? 魔族って居ないの?」
魔族と言えば「マジック・テイル」で不人気種族ナンバーワンで有名な種族だ。 何故かと言えばかなりソロプレイ向けだからだ。 ステータスが全体的に高いのは魅力だが、魔族専用のスキルがどれもかなり扱いづらい。 例えばモンスターを倒せば倒す程ステータスが上昇する【奥義 魔族の気迫】は元々高いステータスが上昇するのは魅力だがステータスを上昇させるには敵を全て自分で倒さないといけないと言う大きなデメリットがある。 それ以外にもソロプレイ中は勝手に発動するスキル【奥義 魔族の波動】等明らかにソロプレイさせる気満々なスキルばっかだったのだ。 更に魔族は一部の種族以外の種族とパーティを組むとステータスが下がるスキル【補助 魔族のプライド】等が有った。 そのせいで大体のプレイヤーはこの種族を選ぶ事をやめていた。 でもソロプレイをする気満々の人が居たり、【補助 魔族のプライド】が発動しない種族(ダークエルフ等)と一緒にプレイするも居た。 まあ、そんな「マジック・テイル」の話は置いといて
「魔族が何処にも居ないの?」
「ええ、100年前にパッタリ姿が消えたらしいですよ」
俺の質問に記者が答える。 100年前……戦争の時か。
「まあ、あの時は色々大変だったんでしょうね。 どの本にも「気付いたら魔族は居なくなっていた」って感じにしか書いてありませんよ」
「ふ~ん……そうなんだ」
それぞれの種族が自分達の事で手一杯になってたらいつの間にか魔族が居なくなっていた……って感じかな? かなりのミステリーだな。
「……ところでレイさん」
「ん?何?アリア」
「「平原の主」からかなり話が脱線してませんか?」
「あ」
そういえばそうだったな……。
「もう! みんな話をしっかり戻してよ!」
「いや、レイちゃんかなり真面目な顔で言いづらかったから……」
『以下同文』
え?俺そんなに魔族の事に真剣になってたのか……何でだろ? 何て思って思考の海に入りそうになった所に記者の声が耳に入って来る。
「じゃあ、「平原の主」の事に話を戻しますね。 平原の主は普段アリアさんが行った順番に規則正しく移動します。 けれども今回の「平原の主」の死体が有ったのはハイナ教国とライヴァン同盟の間で1ヶ月前「平原の主」が通過した場所でした」
「ああ、そんな事聞いたな」
確か「平原の主」に一緒に戦ったナルとかがそんな事言ってたっけ。
「その事で「平原の主」が何かを恐れて逆走してきたんじゃないか……って噂なんですよ」
「ああ、成る程」
つまり、「平原の主」が中継地点の近くに来たのは、逃げてきたというのが記者の言う噂の様だ。 もしもそれが事実なら、300年も生きてきたモンスターが直ぐに逃げ出す程の何かが居たって事か?……それって
「ま、あくまでも噂ですよ。 う・わ・さ、正直「平原の主」より強いモンスターとか勘弁して欲しいですよ~」
「だね~」
記者とネイが手を縦にユラユラ揺らしながらのんびりとした口調で会話をしている。 さっきの説明の時とは雰囲気がかなり変わっている。 これが仕事モードって奴か。 まあそんな事はどうでも良い。 ガレーナニュースの記者さんにはもう少し俺が気になった質問に答えて貰おう。
「ねえ、記者さん?」
「ん?何ですか?」
「もし、その噂が本当なら「平原の主」は何処まで行っていた事になる?」
「?何処まで?」
記者さんの目が少し丸くなりポカンという表現が似合う顔になる。
「う~ん、何て言うんだろ……」
『「平原の主」が何処から逆走をしたのか知りたいって事?』
「そう、それ!」
黒猫さんが俺の言いたい事を言ってくれる。 「平原の主」が恐れた程の何か。 俺はそれがかなり知りたくなった。 そして逆走した場所が分かれば……。
「そうですね……約1ヶ月で中継地点まで戻って来たのなら」
記者さんがズボンのポケットから地図を取り出す。 そんな物を持ち歩いてるのか、凄いな記者って。 なんてどうでも良い事で驚いていると記者さんがある一カ所をぺンで囲んだ。
「ここですかね」
「ここは……」
そこはオルアナ王国とヴェルズ帝国の間
「高原の近くですかね。 多分ヴェルズ帝国の国境の近くで逆走したと思いますよ」
「ヴェルズ帝国……」
俺はその国の名前に、何やら不気味な気配を感じた。
「……そういえばレイちゃん」
「ん?何?」
ネイが俺の隣から真剣な表情で見つめてくる。 何かヴェルズ帝国に関して何か気づいたのか?
「注文した料理が中々来ないんだけど」
「……はい?」
ネイが俺の予想斜め上の事を言ってくる。 そういえば確かに記者さんと結構話したはずなのに中々来ないな。 何て思っているとギルドの受付の奥からバタバタと駆け足の音が聞こえてくる。
『ご主人様達の話を盗み聞きしてて料理の事忘れちゃってたみたいだよ』
「……まあ、こういう話は気になっちゃうよね」
「まあ、噂話とか気になっちゃいますからね」
多分アルカさんなら普通に話に入ってサラさんに怒られるんだろうな……。 何てハイルズのギルドの2人に懐かしさを少し、俺は覚えていた。




