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第57話 このモンスターは危険です! 用法容量を守って……

 ジャイアントタートルがゆっくりとけれど大きな一歩を歩く。 現在俺達はボイルの港町を目指してジャイアントタートルの上に乗っている。 もう2時間は経っただろうか。


「……ボイルの港町にどれくらいで着くかな?」

「っていうかこんなモンスターよりは馬を【召喚】した方が良い気がしますけど……」

「え~、だってアリア速く走るモンスターはやだって言ってたじゃん」

「速すぎるのは嫌ですけど馬くらいは大丈夫ですよ!」


 うーん、アリアの速いの基準が分からない。 何て思いながら前を見ていると横からネイが俺に話しかけて来た。


「レイちゃん、話は変わるけどこんな大きなモンスターでボイルの港町まで大丈夫なの?」

「何が?」

「いや、縄張り意識の強いモンスターに襲われたりとか……冒険者から敵とかに思われたりしないかな~って」


 ああ、なる程。 大きいモンスターだとそういう危険性があるのか。


「まあ、きっと大丈夫だよ。 もしもの時には私が倒すし!」

「いや、冒険者は倒さないで下さいよ。 色々問題になりますから」

「決闘は良いのに……」

「それはそれ。 これはこれです」


 じゃあ何でも決闘って銘打てば良いんじゃない? とか思ったがそこら辺にも色々規定が有るんだろうな……っと思いながらジャイアントタートルの甲羅の上でのんびり寝っ転がる。 ああ、昼寝って良いなあ……。


「あ、レイちゃん寝ちゃった」

「……何ででしょうか。 少し嫌な予感がするのですが」


 俺の意識が消える前にアリアの不審な言葉が耳に残った。










「……ねえ、ネイどうしよ?」

「いや、どうしよって言われても」


 出発してから次の日、俺達の乗っているジャイアントタートルが狼のようなモンスターに囲まれてしまった。


「……どうしよう」

「レイさん、このモンスターなら別に囲まれた位何とか出来るんじゃないですか?」

「まあ、大丈夫何だけど……心配な事が有ってね」


 狼みたいなモンスターは見たところグループウルフだ。 まあ、ハッキリ言ってそんなに強くなく序盤の経験値稼ぎモンスターだと言えるモンスターだ。 ただ群れで来るから面倒くさい点がある。 確か設定だと縄張り意識がとても強いモンスターらしい。 ……見事縄張りに入っちゃったようだ。


「まあ、グループウルフは良いんだけど。 ジャイアントタートルの攻撃がねえ……」

「そんなに凄いの?」

「まあ、ここら辺の地形が軽く変わっちゃう位凄いよ」


 ジャイアントタートルは【召喚】で出しても簡単には攻撃しない。 敵から攻撃された時に初めて攻撃を始めるモンスターだ(【召喚】した本人の快諾無視で)。 その攻撃は……終わった後に地獄絵図になるとだけ言っておく。 「マジック・テイル」でそれをやるならまだしもそれを現実の世界でやったら……。


「……と、とりあえずジャイアントタートルに攻撃をさせたくないの!」

「何でそんな危険なモンスターを【召喚】したんですか!?」

「だってアリアが……」

「いやいやレイちゃん。 グループウルフが攻撃してきたよ!」


 俺の言い訳タイムをネイが遮ってくる。 それと同じ位にジャイアントタートルの足にグループウルフの一匹が攻撃を仕掛けてきた。


「あ、ネイ! ど、どうしよう!」

「レイちゃん! 何か【召喚】したモンスターを戻すこととか出来ないの!?」

「……あれ? どうやって召喚解除するんだっけ?」

「れ、レイさん!?」


 俺が思いっきりパニック状態になり、2人も慌てて何をして良いのか分からなくなる。 因みに黒猫さんはどうでも良さそうに欠伸をしながら俺達を眺めている。 流石猫、マイペースだな。


「ってレイさん現実逃避しないで下さい!」

「で、でもどうしたら……!?」


 何て混乱している内にグループウルフの一匹が口を開いてジャイアントタートルに攻撃しようとしてきて……。


「ふん!」

「きゃうん!」


 攻撃しかけのグループウルフが横に吹き飛ばされていた。


「……な、何が」

「その台詞はこっちの台詞だ」


 俺が戸惑っているとジャイアントタートルの足下から低い男の声が聞こえてきた。


「何やらモンスターが騒がしいと思ったらやけにでけえモンスターが居るし……おいお前ら!」

「は、はい!」


 貫禄のある男の声に俺は上滑りながら返答をする。 お前らって俺達の事だよな? 他に人は居ないし、後はいきなり来た男に戸惑っているグループウルフ位しか居ないし。


「このモンスター、お前らのか?」

「は、はい! そうです!」

「こんなでかいモンスター目立つに決まってんだろ! 何で使ってんだよ! 野生のモンスターに挑発をしてるとしか思えねえぞ!」

「はい! すみません!」


 何故か下にいる男は俺に対して説教をしてくる。 顔は上からじゃあ良く分からないがきっと恐いに違いない。


「……レイさんがこんなに恐がるなんて」

「……なかなかだね」


 隣にいるアリアとネイが俺を見て呟く。 うぅ……だって恐いじゃないか。昔から低い男の声は苦手なんだよ。


「まあいい、話は俺がこいつらを全員倒してからだ」


 そういうとその男は巨大なハンマーを構え近くに居たグループウルフに攻撃を仕掛けた。










「……こんなもんだろ」

「お、おぉ……」


 ボッーと立っているジャイアントタートルの周りは荒れ果てていた。 地面のあちこちにクレーターのようなへこみが出来、周りに居たグループウルフはみんな倒れている。 グループウルフは皆息が無くなっていた。 そしてジャイアントタートルの足下に1人の男がハンマーを肩に担いで堂々と立っている。 ついさっきまであの男がジャイアントタートルの周りでグループウルフを暴れる様に攻撃し、ガツガツ倒していた。


「……あの人本当に人間?」

「レイさんが言いますか。 それ」


 俺の呟きにアリアが小さな声で突っ込む。 それに反応してか男がこっちに向いてくる。


「おい、お前らそれ【召喚】したモンスターか?」

「は、はいそうです!」

「ならさっさと召喚解除しろ。 目立つ」


 俺はそう言われると直ぐに召喚解除しジャイアントタートルの姿が無くなる。 アリアと黒猫さんは俺が抱っこし、ネイは勝手に俺の背中に乗り何とか落ちずに降りてきた。 あの男は俺達のそんな様子を見て少し目を丸くしながら小さく呟いてた。


「……本当にあのモンスターは【召喚】で出したのか」

「ん?」

「……いや、何でもない。 お前らあんなモンスターをそう簡単に【召喚】するな。 かなり目立って他の冒険者から攻撃をされたりするぞ。」

「は~い」


 男は2m位の大男で筋肉ムキムキの毛むくじゃら……多分ドワーフだろう。 上半身は何も着ておらず、下はジーンズの様な物を着ている。


「……でお前ら冒険者だよな? どこに行こうとしてた?」

「あ、ボイルの港町に行こうとしてました」

「ボイルの港町……ああ、冒険者ギルドが目的か」


 アリアの答えに納得する男。 雰囲気は恐いが悪い人では無さそうだ。


「あ、後五師匠にも用事があるんだよ」

「五師匠?」


 ん?ネイが喋った時に男が少し怪訝な顔をしたような……。


「はい、ハイナ2世女王様から五師匠に対しての紹介状を貰っていますよ」

「ほう、それは凄いな。 見せてくれるか?」

「え、紹介状を?」


 いくら色々と助けて貰った人物でも偉い人に渡す紙を見せるのはどうかと……。


「それはちょっと……」

「ああ、五師匠にしか見せられないってか。 大丈夫だ」

『何が大丈夫なの?』


 俺が戸惑っているといまいち理解できない言葉を言ってくる男。 あ、もしかして五師匠と関係があるとか?


「そりゃ……俺が五師匠の1人だからだ」

「え」

「「「ええぇええ!!」」」


 目の前の男の予想のやや右上の答えに俺とアリアとネイが思いっきり驚きの声を上げた。

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