第5話 ちょっとした寄り道?
朝、目を覚ましたらアリアが目の前にいました。 ……うん、ちょっと落ち着こう。 確か寝た時は別々のベットで寝てたはずだ。
「ん?あれレイさん何で私のベットにいるんですか?」
「それ、こっちのセリフです。」
「え?ああ!本当です!すみません!」
アリアが慌ててベットから出る……微妙にパジャマがはだけているのがエロイ……イカンイカンなんか興奮してきた。
「とりあえず準備しましょうか?」
「は、はい!分かりました!」
乾かしていたアリアの服をたたむ。 アリアの服の汚れは落ちたが、所々破けており、やはり着れたものではなかったので魔導院の制服をアリアは着た。 俺はワンピースの皺を伸ばし、着る。
「おや、もう行くのかい?」
「はい、ありがとうございました。」
「別に感謝される事はないよ。 これが仕事だからね。」
「じゃあ、アリア行こうよ~。」
「はい!」
「冒険の巣」を離れルーブの町の街道に出る。 昨日に比べると人が多く、露天も賑わっている。 町には冒険者らしき格好の人や行商人のような格好の人が多く見られる。
「……レイさん、私の格好かなり目立ちますよ。」
「可愛いからいいんじゃない?」
「可愛いからって……一応王国から違法で出る前ですよね?」
「だからといって。 コソコソするのは私には出来ません!」
「断言しないでくださいよ……この服予想以上に下がスースーするんですけど。」
「ミニスカート穿くの初めて?」
「スカートはいつも穿いていたんですけど、ミニスカートを穿いている人は数える位しか見たことないです。」
「じゃあ、初めての経験って事でいいじゃない!」
「まあ、そういうことでいいのかな?」
二人で露天を眺めながら国境の反対側の門へ向かう。
「あ、ポーション売ってる。」
「ポーションはもってないんですか?」
「生ものはアイテムボックスに入ってないよ。 腐らせると大変だからね。」
「レイさんは入れたらそのまま忘れそうですよね。」
「アリアはいちいちメモとか取ってそうね。」
「そこのお嬢さん達ポーションを買うのかい?」
露天の商人が意外そうな顔をして聞いてくる。 多分こんな軽装(見た目は)の美少女(俺基準)二人が露天で冒険者や商人しか買わないような物を見ながら会話していたからだろう。 ちなみにポーションなどの生ものがアイテムボックスに入っていない理由は神様がアイテムボックスの中の生ものがあると知らずに腐らせて、においが大変になりそうだから。というかなり現実的な理由で生肉などは抜いたらしい。
「じゃあ、ポーションを50個ください。」
「えっ!?」
「レイさん、その人そんなにポーション売ってないですよ。」
「うーん、まあないならいっか別に買わなくて。」
「……レイさんの金銭感覚中々スゴイですね。」
「いや、回復魔法も使えるし別にいいかな~って。」
「一応言っときますけど、回復魔法を使えるのは十人もいませんよ。」
「え?そんなにいないの? 昨日の夜に魔法を使える人は少ないって言っていたけど、どういうこと?」
「それはですね……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!お嬢さん達!」
ちょっと大事な話がされそうな時に露天の商人が話に割って入ってきた。 意外と気になっていた事だったので不機嫌気味に答える。
「何ですか? 個人的には大事な話の途中だったんですけど。」
「いや、お嬢さん回復魔法が使えるって言っていたよな!」
「まあ、使えますけど。」
「俺の妻が病気で、ポーションじゃあ直せないんだ! なんとか治してもらえないか!」
「ポーションで、直せないのに回復魔法なら治せるって言うの?」
「……確かに、薬じゃあ直せなかった病が魔法で治せたって話は聞いたことがありますけど。」
「報酬はいくらでも出す! だから治してくれないか!」
「一応……やってはみましょうか。」
「レイさん、いいんですか?」
「いいも何もここまで頼まれちゃやるしかないでしょ。」
「ありがとうございます! あのいますぐでいいかお嬢さん達。」
「ええ、かまわないわ。」
商人が露天を片付けると、街道の家と家の間の脇道を三人で移動する。
「……迷路みたいね。」
「はい、ハイナ教国にはこんな道は少ないですから私も初めてです。」
「迷ってしまいそうだね~。」
「はい、道を覚えるのに大変そうです。」
「まあ飛べば何とかなるけどね~。」
「……それはあくまで最終手段ですよね。」
「ま、この後その最終手段を使わざる得ないけどね。」
「……そうでした。」
「着きましたよお嬢さん達。」
着いた家は周りの家と比べても見た目は大して変わらないレンガ造りの家だ。 家の中に入るが、写真で見たようなヨーロッパの家を彷彿とされる部屋だ。 その家の二階の部屋に寝ているヒューマンの女性がいた。
「……アイナ、回復魔法が使えるという人を連れてきた。」
「回復魔法? どちらさまですか?」
「レイです。 そしてこちらが共に旅をしているアリアです。」
「どうも。」
目の前の女性は見て分かるくらい弱っている。 目の下には隈が出来ており。 顔が青白い。 手が常に痙攣しておりいつ死んでもおかしくないというのは誰が見ても分かる。
「……若いわね。 本当に使えるの?」
「ええ、一応は。」
「……そう。」
とりあえず、俺は目の前の女性に【補助 サーチ】を使う。
アイナ ♀ レベル15 ヒューマン 町人
ステータスをもっと細かく見たいと念じる。
HP 23/300 MP 30/30 状態異常 病
病?「マジック・テイル」にはなかった状態異常だ。 とりあえずアイナの震える手を握り、全ての状態異常を治し、HPを回復させる【魔法 フェアリーライト】を使う。 アイナを光が覆う。
HP 300/300 MP30/30 状態異常 なし
「どうですか?」
「ええ、こんなに体が軽いのは3年ぶりです。 ありがとうございます。」
「いいえ、私が出来ることをしただけです。」
正直言って思っていた以上に簡単にできてしまい少し拍子抜けだった。 しかし状態異常病とはなんなのだろうか? 後で調べないとな。
「レイさん、治療終わりました?」
「うん、出来たよ~」
「も、もうですか!お嬢さん!?」
「そうですよアイガ。 この人は私の命の恩人です。 感謝しても仕切れません。」
「いえ、出来る事をしただけです。 たいしたことはしていません。」
「レイさんってほんと何でも出来るんじゃないですか?」
いやいや、流石に出来ない事はあるよ?
「とりあえず、何かお礼をさせてもらいたいのですが……」
「う~ん、なら……この事を他の人に話さないでくれるかな?」
「え、それだけですか?」
「ええ、それだけです。」
いわれると面倒臭くなりそうだしね。
「分かりました……何か用事があるのでしょう。 このことは黙っておきます。」
「うん、よろしく。」
とりあえず、アリアと二人で家から立ち去るが何故かアリアは不思議そうな顔をしている。
「どうしたの?」
「いえ、ちょっと意外というかなんというか。 もうちょっと堂々と治したんだぞ~ってアピールするかと思いました。」
「……そうしたい気持ちもあるけど。 自慢したら病人がたくさん来て今後の事に支障をきたすと思ったの。 そうしている内に「魔神」が来たら色々と大変じゃない。」
「意外と考えていたんですね。」
「むしろ私は、アリアに何も考えていないと思われていたのね……」
「いえ、そういう意味で言ったわけじゃ。」
「お母さんは、悲しいわぁ~。」
「あなた私のお母さんじゃないでしょ!」
「ところで、アリア一つ聞いてもいい?」
「何ですか?」
「……ここ、何処?」
「なんの確信もなく歩いたんですか!?」
「てっきりアリアが道を覚えてると思ってアリアに付いていったら……」
「レイさんが何の迷いもなく進んでいるとおもっていたのに……」
周りにはレンガ造りの家、正直景色がさっきから変わらない……こうなれば。
「空を飛ぶしかないかな~。」
「ま、まだ歩きましょう! 出られるはずです!……きっと。」
こうして俺たちは脇道をまだまだ迷うのであった。