第54話 ライヴァン同盟内へ
かなり今更な設定が有ります……そしていつも通りのぐだぐだ
「お、何か砦みたいなのが見えてきたよ」
「おお、お嬢さんあそこ通ったらライヴァン同盟じゃよ」
のんびりと馬車が進んでいると、巨大な壁が見えた。 どうやらあそこからライヴァン同盟のようだ。
「っという事はそろそろ検問があるのか……」
「そうだね~ま、大丈夫でしょ。 依頼を受けてきたんだし。 そこまで念入りにはされないんじゃない?」
「そうだと良いな~」
ネイは気楽に言っているが、俺としてはそれなりに緊張してしまう。 今回はハイナ教国じゃないし、変な事をされてしまうかもしれない。
「ま、変な事をされたらぶっ飛ばすけどね」
「……レイさん、1人で何言ってるんですか?」
『いつものご主人様』
怪訝な表情をしているアリアに黒猫さんは欠伸をしながら答えた。
「うわ、並んでるよ」
巨大な砦にあった門には馬車が幾つか並んでいる。 どうやら検問待ちのようだ。
「珍しいのお」
「おじいちゃん、どうしました?」
馬車が列の後ろに並んだ所でおじいちゃんが首を傾げていた。
「列に並んでいる馬車の数が少ない。普段ならもっと並びそうなもんじゃが……」
「たまたまじゃない?」
「そうかのう……」
俺の言葉におじいちゃんは不安そうな顔をいっそう強くする。 俺はあんまり憂鬱になるのが嫌だったので、砦を見上げながら話題を変える。
「そういえばこの砦大きいね。 オルアナ王国のより大きいんじゃない?」
「お嬢さん、この砦に興味が有るのかい?」
「ん?まあね。 こんなに大きい砦を作るの大変じゃないかな~って」
ライヴァン同盟の砦はかなり綺麗だ。 凹凸一つない黒色の砦……つい最近出来たのだろうか。 かなり頼もしさを感じる。
「この砦っていつ頃出来たの?」
「完成したのは10年前じゃ、だが作り始めたのは60年前じゃの」
「10年前でこんなに綺麗なんだ。 凄いな~」
「確か魔集石と鉄を混ぜた物を素材にしてるんじゃないでしたっけ?」
「魔集石……ああ、あれかぁ」
魔集石、「マジック・テイル」では魔力を吸収する不思議な鉱石という設定だったな。 武器に【魔法】に対する耐性を持たせるにはこの鉱石が必須だった。
「そうじゃ、さらに念入りな補修のお陰でまだ壊された事は一度も無いぞ」
「へぇ~、凄いね!」
10年間、一度も壊されたことが無いのか。 俺は建築技術には詳しくないが、人を襲うモンスターが居るのにそんなに保つって事は凄いんだろうな……と何となく感心していた。
「よし、次」
しばらく馬車に乗って順番を待っていたら、いよいよ俺達の番となった。 門の前にはドワーフの男が2人、どちらも筋肉がムキムキでかなり強そうだ。 おじいちゃんが片方のドワーフに何やら紙を渡す。 その紙を貰ったドワーフがおじいちゃんと何か会話をしている間にもう片方のドワーフがこちらに向かって
「ギルドカードを見せろ」
と野太い声で言ってきた。 それに対してネイは無言でギルドカードを見せる。
「よし、次」
「は~い」
男が俺の方を向いて、手を前に出してきたので取りあえずギルドカードを出す。 それを男が見て
「よし」
と一言言った。 ……しかし無愛想な奴だな。
「そっちのエルフは?」
「アリア? アリアは冒険者じゃないからギルドカードは無いよ」
ドワーフは馬車に座っていたアリアの方に顔を向け俺に話しかけてくる。
「ならば通行料が掛かる。 ……エルフなら500Gだ」
「そういう話はアリアに言いなよ。 はい500G」
「……何だかんだ言って払っているではないか」
「ま、私の友達だしね」
無愛想なドワーフが苦笑いしながら俺を見てくる。 このドワーフの表情が変わるの初めて見たな。
「レイさん、何の話してたんですか?
」
ドワーフとの会話を終え、馬車の中に戻る。 するとアリアがゆっくり近付いてきた。
「ん?アリアの通行料だよ」
「……何サラッと言ってるんですか。それは私が払わなくちゃ……」
「500Gだよ? アリアにとっては結構大金じゃない?」
「確かに私じゃあ払えませんけど……」
「じゃあ、私が払った。 それで良いじゃない」
「そ、そうですけど……」
アリアは俺の目を見て何か後ろめたそうに反論してくる。 どうやら俺に頼り気味なのに少し引け目を感じているようだ。 今更な気もするが、アリアはやっぱり良い子だな~。
「じゃあ、後で私のお願いでも聞いてもらおうかな~」
「レイさんの……お願いですか?」
「そうそう、それでチャラって事にしようよ」
「まあ……良いですけど」
俺の話を聞いた後「それぐらいで良いんでしょうか?」という気持ちが丸わかりの顔をアリアはしている。 ふふふ……アリアめ俺に対する警戒心はほぼ無いようだな。 幾ら現女だといても元男(男の娘ではない……多分)美少女を好き勝手したいという気持ちはあるのだよ。
「そういえばアリア~、その服そろそろ返して欲しいな~」
「え、この服ですか?」
アリアは俺が貸している「暗黒魔女☆クラン」のスカートを指で摘む。
「そうそう、幾ら魔法で清潔だからって着替えたくならない?」
今更だが、俺の持っている服一式には修復魔法とでも言う物があるようだ。 分かり易く言うと、「服が破けても暫くすると元に戻る」「泥なんかの汚れはまず付かない」何て言うのが有る。 ハイナ教国でバルテンに腹を刺されても服に1時間後位には何の問題も無くなっていたので間違いない。 中々服が洗えない長期の旅では有り難いが、俺としてはアリアが中々別の服に着替えてくれないのが難点だ。
「……つまりレイさんは私に別の服を着せたいと?」
「そうそう」
「……まあ、それでレイさんが満足するなら良いですけど」
この後、「これで良いんですかね……」と小声で言いながらアリアはため息をついていた。
「レイちゃん、そういう話はもっとプライベートな場所で言おうよ」
「あ、ネイ迷惑だった?」
「いや、別に迷惑じゃないけど……外に聞こえるよ?」
「え……」
ネイが俺に呟いてくる。 ……う~ん、こういう話を他の人に聞かれるのは確かにやだな……しょうがない話題を変えるか。
「そういえば、おじいちゃんは今何してるの?」
「おじいちゃんは……まだ門番とお話中じゃない?」
「けど検問とかあるし、ライヴァン同盟ってやっぱり国みたいだね……」
「そうだよね……私も国じゃない理由はよく分からないんだよね……アリアちゃんは知ってる?」
「……確か村が集まってるだけで国じゃあ無いんじゃないですか?」
俺はおじいちゃんの話が終わるまで、行ったことのないライヴァン同盟について3人であれこれ言い合っていた。
「待たせたの」
数分後、ずっと門番と話していたおじいちゃんが俺達に声を掛けてきた。
『終わった?』
「終わったぞ。 さあ、ライヴァン同盟じゃ」
そうおじいちゃんが言うと馬車がゆっくりと動き出し、砦を通過する。 砦を通った所には中間地点のようなテントが幾つか張ってある。
「ここは?」
「ここは村で作った武器を持ってきて売っている人が居るんじゃ。 中間地点みたいなもんだと思えばいい」
「ふーん」
つまり、出張販売みたいな物か。
「さて、わしが行きたいのはここから一番近い村。 ハース村じゃ、そこまで頼むぞ」
「了解~」
おじいちゃんの馬車はゆっくりとテントの間を走って行く。 そういやライヴァン同盟に入ったけど五師匠って何処にいるんだろ?