表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/142

第51話 お風呂では煙が、ヴェルズ帝国では謎が

「まあ、どうであれ私は温泉に入る!」

「え……レイさんこんな所で堂々と服を脱がないで下さい!」


 ロックキャンサーが露天風呂を作ってから直ぐに裸になりお風呂に飛びこもうとしたところアリアに脱ぐの止められた。


「ん……この光景は……」


 俺は服を脱ぎかけの状態。 その状態でアリアが俺の服を思いっきり握り脱がせないようにしている。 これは見る人によっては勘違いしてしまうかもしれないな。


「アリアちゃん……レイちゃんの服をそんなに脱がせたいの?」

「え、いや! ネイは一部始終見てましたよね!?」


 ネイが俺たちの様子を見て絶句していた。 最初からずっとニヤニヤ見てたからからかっているのだろう。


「アリアってそっちだと薄々思っていたけどそんなに大胆に行動するなんて……」

「そっちって何ですか!? 多分違います!」


 アリアがネイとの会話に集中してるうちに俺は上手く服を脱ぐ。 そしてその勢いでお風呂に思いっきり入る。 あ、体洗うの忘れた。


「うぇ? あ、レイさんいつのまに!?」

「アリアも早く入りなよ!」

「いえ、流石にこんな所で脱ぐのは……」

「おじゃましま~す」

「ネイ!?」


 俺がお風呂に入りながらアリアを説得してると隣からネイがもちろん裸でお風呂に入ってくる。 お湯の中でネイの尻尾がゆらゆらと揺れている……ああ可愛い。


「ほら、入りなよ。みんな入ってるよ。 温かいよ~」

「ですがこんな人の集まる場所で」

「なら、今人が居ない今がチャンスだよ!」

「早くしないと誰か帰って来ちゃうかもよ~?」

「う、うぅ……」


 アリアはどうやら悩んでいるようだ。 女の子だし、体をしっかり洗いたい。 けど人が通るかもしれない場所じゃあ裸にはなりたくない。 そんな所かな?


「大丈夫だよ、誰か来たら私が知らせるから」

「ほ、本当ですか?」

「本当、本当」


【補助 ホークアイ】を使えば周りを監視する事が出来る。 俺も自分の体で知らない男を興奮させるつもりは無いしね。


「じゃ、じゃあ……入りますね」

「うん、良いよ~」

「ねえ、そう言えばおじいちゃんは?」


 アリアがやっと決断してくれた時、隣からネイが聞いてくる。


「おじいちゃんは確か黒猫さんと一緒に馬車の近くにいたよ」

「……レイちゃん、今更だけどこういうお風呂には依頼主を先に入れさせるべきじゃない?」

「でも「わしは後で良い」って言われちゃったし」

「う~ん、なら良いのかな? そう言えば黒猫さんとおじいちゃん珍しい組み合わせね」

「何か2人で会話してたよ。 会話の内容はよく分からなかったけどね」


 ロックキャンサーがお風呂を掘り当てた時からおじいちゃんと黒猫さんは何やら会話をしていたようだし意外と仲が良くなったのかもしれない。 そんな事を思っていると裸になったアリアがお風呂に入って来た。 そして心配そうな目を俺に向けてくる。


「レイさん、周りに誰もいませんよね?」

「ん?居ないよ。 アリアも心配性だな~」

「そ、そりゃ心配になりますよ! こんな姿を誰かに見られたら大変じゃないですか!」

「大丈夫だって。 もし見た人が居たら私が魔法を使ってぶっ倒しておくから」

「それはそれで大変ですからやめて下さい!?」


 え~、アリアの為なのに……。






「やっぱりお風呂はいいね~」

「そうだね~」

「アリアも良いと思うよね」

「ええ、まあ」


 3人でのんびりとお風呂に入る。 う~ん、やっぱりお風呂は良いなぁ……よくよく考えればアリアやネイみたいな可愛い子達と入り放題だもんな~。 なんて思いながらアリアを見る。


「な、何ですか?」

「いや? ただ可愛いな~って思っただけ」

「いきなりですね……」


 アリアに顔を赤くしながら睨まれる。 やっぱり可愛い。


「やっぱりその気が有るんじゃないのかな~?」

「だ~か~ら! 有りませんって!」


 ネイが茶化しアリアとネイがまた2人で盛り上がっている。 こういう光景を見てるとついつい笑っちゃうな。


「レイさん! 笑わないで下さい!」

「レイちゃんはどう思う? アリアちゃんにそっちの気があると思う?」

「有ってもいいんじゃない? 減るもんじゃないし」

「レイさん!?」


 何かアリアが悲鳴みたいな声を上げていたがまあ良いんじゃないかな? 例えそっちに気があっても。


「そう言えばネイ、そっちって……何?」

「知らないで答えてたんですか!?」

「アリアちゃんは分かっちゃうんだ」

「……い、いえ分かりません! 知りません!」


 アリアが精一杯首を横に振っている。 ……何かとても必死だな~なんて思いながら俺はお風呂に浸かっていた。 やっぱりお風呂は良いなぁ……。










視点変更 レイ→レオーナ


「……ここもか」


 私達はヴェルズ帝国の村のような場所に居た。 何故「ような」なのかと言うと


「また誰もいない……」

「三回連続は流石に異常ですね……」


 人が1人も居ないのだ。 私達がヴェルズ帝国に入ったからこれまで2回、こんな村のような所に入っている。 最初はモンスターや盗賊に襲われたのかと思ったが村への被害が無さすぎるし、村の貴重品等もそのままであった。 その時の私達は気味悪がりながらも村の食糧などを貰い、直ぐに出た。


「その時はまだ冗談も言えたんですけどね……」

「そうだよな……」


 俺の後ろの部下達が顔を青くしながらため息をつく。 そう、最初の村の時はまだ恐さもあったが「食糧が手に入って良かった」なんて話を笑いながら出来た。 ヴェルズ帝国に入ってからモンスターに一度も遭遇してなかったし、余裕があった。 しかし2回目となると流石にそんな冗談も言えなくなる。 私もこんな事態は初めてだ。 その時は部下も怖がっていたので直ぐに村から立ち去った。 そして今この村が3回目だ。


「ど、どうします? 団長?」

「……とりあえず食糧を貰うか。 村に人が居ないというのは好都合だ」


 略奪しなくて済むからな。 流石に敵国と言えど一般市民から物資を奪うのは気が引ける。


「りょ、了解」

「は、早く済ませようぜ」

「おう……」


 部下が怖がりながら村の散策を始める。


「しかしどうしたらこんな事になるんだ……」


 私は村を見渡しながら呟く。 オルアナ王国でも見られる木造の建築物が中心の普通の村。 しかし一体何があったのか。


「だ、団長! 地下室に人が!」

「何?」


 1人の騎士の声に俺は聞き返しながら私はその声の元にゆっくりと歩いていった。










「……で、彼女達がその地下室に居た人か」

「はい」


 声を発した騎士が居たのは、村の中でも大きな家の中だった。 私が来たときには私の部隊ではない少女が2人居た。 片方はヒューマンであり年齢は15歳位。 衣服は埃などで汚れているが豪華な物だろう。 私の顔を見て、怯えている。 もう1人はエルフであり、ヒューマンの少女と比べるとやや年上の少女なのだろう。 だが服はヒューマンの少女の物に比べると明らかに粗末なものだ。 おそらく奴隷だったのだろう。 私達を目をキョロキョロと動かしながら見ている。


「……とりあえず事情を聞くとするか」


 おそらくヒューマンの少女はこの家の娘でそこそこお嬢様だったのだろう。 そしてエルフはその家の奴隷大方そんな感じだろうな。 私は無言で騎士達を見ている少女達を見てそう思った。










「予想通りでしたね……」

「ああ」


 私はある木の家の外で部下の1人と話していた。


「あの家は村長の物でヒューマンの方は一人娘、そしてエルフの方は……」

「村長の奴隷か……」


 ヒューマンの少女もエルフの少女も簡単に事情を説明してくれた。 ヒューマンの方は結構難しいと思っていたが彼女にとっては身を保護してくれる方が大事だったようだ。


「けど謎が増えただけでしたね……」

「ああ」


 少女達に村で何が起こったのか聞いても分からずじまいだった。 首都の方から黒い何かが向かって来たのを見て、不審に思った両親が2人を避難させたらしい。 ちなみにエルフの方は助けるつもりは無かったがヒューマンの少女が「1人だと心細いから」という理由で無理やり両親を納得させたようだ。


「2人は仲が良かったようだな」

「そのようですね」


 理由は分からないがヴェルズ帝国にもこういう人が居るのは良いことだ。 そんなこと思いながら部下と2人で立っていると、騎士が1人私の方に歩いてくる。 確か少女達から事情を聞いていたものだ。


「どうだ。 何か分かったか?」

「いえ、少し少女について分かった位です」

「例えば?」


 私が催促すると部下は直ぐに喋る。


「あの地下室の扉は内側からは開かない仕組みだったようです。 ですから自分では開けられず中にあった食料で何とか生きていたようです」

「あの中には生で食べられる物は無かった筈だが?」


 少女達の居た地下室は野菜などはあったが調理しなければ食べられそうに無い物ばかりだった。


「彼女達は必死だったようですから……そうだ、後地下室に居たとき魔法輪が外れたとの話が」

「魔法輪? あの捕獲用の道具か?」

「はい」


 魔法輪とはオルアナ王国でも使われている有名な捕獲の道具である。 見た目はシンプルな金の輪っかで、捕まえたいモンスターを弱らせてから首に掛ければモンスターを捕獲出来るという代物でかなり有名な道具だ。


「だがあれに関係は有るのか?」

「はい……そのエルフの少女の首に掛かっていたそうで……言うことを聞かないと魔法で電流が走る仕組みだったそうです」

「……奴隷用か」


 ヴェルズ帝国にはそんな物が有るのか……。


「で、それに何の関係が?」

「はい、地下室に入ってからしばらくして魔法輪が勝手に取れたそうです」

「取れた?」

「はい、その魔法輪は持ち主が手動で解除するまで絶対に外れない仕組みらしいのですが、勝手に外れたとの事です」

「……」


 魔法輪が勝手に外れた。 何か関係が有りそうだが分からないことが多すぎるな。


「……」

「団長?」

「やな予感がするな」


 不可解な事が余りにも多すぎる。 私は1つため息を着いた。 今、ヴェルズ帝国では何が起こっているんだ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ