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第48話 自分勝手はいつものこと?

 今持っている槍は「神炎の槍」。 炎属性の槍では一番強いSランクの槍だ。 確かビッグホーンは炎属性が苦手だった筈だからこの装備で戦うことにした。 ちなみに「平原の主」の頭に刺さっているのは「グングニル」。 光属性の槍でこれまたSランクの装備だ。


「つまり、私はあの槍を何とか取り返したい」

「そんな高価な装備なら大事に扱え!」


 黒髪の男は「平原の主」の突進を避けながら俺に突っ込む。 ……って俺の心の声聞こえてたのかよ。 っと思ったがどうやら声に出ていたようだ。


「いいじゃん! 私の武器だし!」

「それはそうだが、ああいう使い方をするなら後の事も考えろ!」

「と、ところでレイさん、ガイン! どうやって勝つつもりですか!?」


 俺と男が睨み合っていると嫌な雰囲気を察してか茶髪の少女が後ろから話しかけてくる。 あ、この男ガインっていうのか。 なんて思いつつ俺はガインを視界から外し、少女の方に向く。


「う~ん……取りあえずあの槍を回収したいんだよ」

「レイさんは「平原の主」を倒す気何ですよね? なら倒した後槍を回収するっていうのは……」

「ダメ、あの槍も無くなっちゃうくらい凄い威力の攻撃を使うから」


 「マジック・テイル」では攻撃で装備が壊れる……何てことは無かったがこっちの世界ではそういう事も考慮しておいた方が良いだろう。 グングニルを作れる人何て今じゃあ何処にも居ないだろうし。


「そ、そうですか……」

「だから私は何とかして槍を回収するから……そっちは何とか足止めしてね」

「いやいや!レイ! おかしいだろ!」


 俺が意見を言うとガインは直ぐ反論するな~。


「何さ?不満?」

「不満も何もおかしいだろ! そんな凄い攻撃が使えるなら最初っから使えよ!」

「まあ、正論だけど。 こっちにも色々と準備が必要なんだよ……メンタルとか」


 俺が意見を言い終えた所で「平原の主」の角が思いっきりこっちに振るわれる。 俺たちはそれをそれぞれの方法で避ける。 俺はともかくあの二人も意外に強いのかもしれない。


「良し!じゃあ私は槍を取りに行くから……頑張って」

「え……おい!待て!」


 ガインが何か言っているが無視をし、【召喚 シムルグ】を発動し、出てきた所で直ぐに飛び乗る。 その後、急上昇する。 一気に「平原の主」より、高い高度まで来た所で


「さてどうやって取ろう?」


 槍を構えながら「平原の主」の上を旋回して悩むのであった。










視点変更 レイ→ナル


「あぁ、もう!何なんだよ!あいつ!」


 レイさんが飛んだ後、ガインが大声で文句を言う。


「落ち着いてガイン。 一応、レイさんも協力してくれるんだから……」

「だからと言って何なんだ!ーあの態度は! たくさんの人の命より一本の槍の方が大事なのかよ!?」


 ガインがかなり本気で怒ってる。 いつも優しくて頼りになるガインだが人の命がかかる事となるとこんな風になって冷静さを失ってしまう。 ……まあ、人間としては良い人なのだ、冒険者としはちょっとアレだが……。


「自分の武器に愛着を持っている人なんじゃ」

「だったら槍を投げたりするか!?」


 ガインは完全に頭に来ているようで私の事は一つも聞かない。


「でも今はレイさんの言うことを聞いて何とか時間稼ぎしましょう!」

「……しょうがねえ」


 ガインはレイさんの事は信じてないが、何とか納得はしてくれたようだ。 私はホッとため息をついて有ることを疑問に思った。


「そういえば「平原の主」が中々襲って来ないね」

「あ、ああ……確かにあいつは意外と冷静に動くモンスターだとは思ったが、幾ら何でも何にも無さすぎる」


 そう、さっきから「平原の主」が全く動かないのだ。 一応ガインと会話をしてる時も警戒はしてたがさっきからちっとも動かない。 私は武器を構えながら「平原の主」をしっかり観察し始める。 ……これは


「……糸?」

「何、どうした?ナル」

「ガイン「平原の主」の体に糸が絡まっているの」


 糸だった「平原の主」の体に日の光が反射してやっと見えるくらいの細い糸が身体中に絡まっている。


「確かに……だがあんな糸で「平原の主」が動けなくなるわけが……」

「そうよね……」


 あの糸は正体不明で怪しいがあの糸程度で「平原の主」の動きを止められる筈がない。 なんて考えていると「平原の主」の頭あたりから声が聞こえる。


「お~い!槍抜けたよ~!」


 レイさんの声だった。 しかも「平原の主」に直接乗って。


「……って、え?」


 直接頭に乗ってる? 私はレイさんの命知らずの行動に頭の中が真っ白になる。 その後、空中をまるで散歩するかのようにゆっくりこっちまで歩いてくる。


「いや~ごめんごめん、「平原の主」の動きを止めるのに戸惑っちゃった」

「え、な、何をしてたんですか?」


 私は思わず聞いてしまう。 っというか私がガインと話している間に何かしたの? そういえばちょっと前から突っ込みどころ満載だが今はこれぐらいしか聞けない。


「ああ、大したことはしてないよ。 「平原の主」に空中から【奥義 麻痺突き】で動きを止めて、トラップスパイダー達でグルグル巻きにしてもらっただけ」


 「動けないようにね」と付け足しながら私に解説してくる。


「……」

「……」

「え?何? 2人ともボーっとしちゃって」


 可愛らしく首を傾げるレイさん。 だがこの人はあの「平原の主」をほぼ一人で無力化してみせた。


「って無力化したのは分かったがこれからどうするつもりなんだよ!」


 私と一緒にボーっとしていたガインだがやっと現実に戻ったようでレイさんに文句(いちゃもん?)を言っている。


「ん?今から攻撃するつもりだよ? 動きを止めたのは槍を取りに行くためだし」

「どんな攻撃だ?」

「こんなの」


 と一言言うとレイさんは手に持っていた赤い槍をクルクル回し始める。 すると槍の先端から火が出て、徐々に火の輪が出来る。


「【奥義 ランスブーメラン】」


 レイさんはそう言うと回していた槍を思いっきり「平原の主」に投げる。 槍は赤い円を描きながら「平原の主」の所まで行く。 そして「平原の主」の体に槍が当たった瞬間


「グアアアアアア!」


 「平原の主」の体が一気に火の塊になった。


「うん、これで終了」

「……」


 何か大きな仕事を終えたような清々しい顔をしているレイさんを見て、私とガインは呆然としていた。


「よし、じゃあ帰ろうよ2人とも。 あなたの仲間も中継地点に居るんじゃない? あ、でも逃げたかも……」


 私たちの様子に気づかずにペラペラと話すレイさん。 私はこの人との差にとても大きな壁を感じていた。 私は自分に弓の才能はあると思っていたが、圧倒的な力を奮う自分と同い年位の彼女を見てると自信が無くなってくる。


「レイさん、何者?」

「ん?ただの引きこもりのエルフだよ」

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