第4話 少女の回想と男の娘の苦悩
最初はアリア視点 その後レイ視点になります。
視点 アリア
私は絶望していた。
私はハイナ教国にある小さな村の教会の神父の娘。 神父はハイナ教国では地位の高い役職であり。 村の中では他の家と比べて裕福な方だったがお父さんはそのお金をいつも村のために使い、国からも村からも信頼されている人だった。
しかし、村の入り口の近くで一人で遊んでいたら。 人さらいに攫われてしまった。 真っ暗な馬車の中でこの後どうなるのか不安だった。 オルアナ王国は奴隷制がないので多分ヒューマンを第一とし、他の種族を奴隷にしたりしているヴェルズ帝国に送られてしまうのだろう。 そう思いながら、後悔していた。 どうして一人で遊んでいたのだろう、どうして商人だと思い近づいてしまったのだろうと。 感じているのは振動だけ。他は何も感じない、真っ暗、音一つない。
しかし、いきなり目の前が光で満ちた。 誰かが馬車の扉を開けたのだ。 最初は、ヴェルズ帝国にでも着いたのかと思ったが違った。 目の前には銀髪で白いワンピーズを着ていて真っ白で金の装飾の施された弓を手に握っているエルフの女の人……エルフは二十歳になるまではヒューマンと同じように成長するので大体17歳くらいだろうか? 彼女はその後人さらいと口論をし、人さらいが逃げ出していった。 そして彼女は私に手を差し出してこう言った。
「大丈夫?私はレイ。あなたは?」
私にとって彼女は姫を救うおとぎ話に出てくる王子のように見えた。 ……まあ、世間知らずな所もある人だったが、彼女が召喚をしたのには驚いた。 【召喚】は100年前の戦争の時には一人でも出来たらしいが、今は4~5人が命をかけて使わなければいけないらしい。 彼女はそんな事を気にせず【召喚】を5回汗一つ流さずしてんのけた。 ちなみに何故【召喚】が命がけになったかと言うと戦争の時に人々が殺し合い魔法が使える人や奥義を使える人……様々な技術が失われたらしい。 今はなんとか持ち直したらしいが100年前には何もかも劣るらしい。 しかもその後には伝説にしか出てこないようなペガサスすらも出した……飛んだときは気絶しかけましたよ……
色々と破天荒で世間知らずちょっと天然も入っているが彼女は嫌いにはなれない。 なんだかんだ言って彼女を私は信頼していた。 精霊から聞いた「魔神」の話というのもすぐに納得してしまった。 彼女に私はメロメロなのかもしれない……別に好きって事じゃないからね!
視点変更 アリア→レイ
「お風呂ですか~いいですね。」
風呂……女主人から聞いたその言葉に俺はふつうに答えた。
「じゃあレイさん一緒に入りましょうか。」
「そうね一緒に……えっ?」
一緒に……だと。
「あれ?レイさん公衆浴場とかには入った事ないんですか?」
「え?……ええ。」
しまった、俺は今女だった……という事は。
「アリアと一緒に入るっていう事?」
「それ以外に何があるのですか?」
……そういえば中学の頃修学旅行で班決めの時、女子の班に入ることになった事があった。 女子達が勝手に班を決め、先生に決まったと伝えたらしい。 俺は最初女子の班になっていても先生がおかしい事に気づくだろうと思っていたが何故か採用されてしまい女子と部屋を同じにするという出来事があった。 しかも女子は俺を女子風呂に連れて行こうとし、俺がなんとか抵抗して男子風呂に入ったが、その時男子から。
「なんで女子が……って陸は男か。」
っと言われ傷つきうなだれていたところ女子は男子がやらしい事をしたと勘違いし、俺のクラスがなにやらアメリカとソ連みたいな状態になった事があった。
あのときとは違い俺は女の子だ。それもかなりかわいい。 だが心は男だ!
「ちょ、ちょっと。 二人でっていうのは……」
「?別に大浴場だから大丈夫だよ? もしかして小さな風呂だと思ってたのかい?」
ちょ、ちょっと何言ってるんですか! それじゃアリアと……いやむしろ最高じゃね?いやいやいや!
「私とでは、ダメですか?」
「うっ……」
何でそんなにかわいい顔で上目遣いをしてくるんですか! こ、これでも俺は男で……
「わかりました。 入りましょう。」
「はい。」
俺の男というプライドが軽く砕けた気がした。
風呂は宿屋の一階のロビーの奥にあった。 風呂は、男と女で分かれており木製の扉で分けられていた。 こういうのを見るとのれんを懐かしく思ってしまう。 そして当たり前だが女の方の脱衣所に今居る。 ちなみに冒険者は男と女の比率が9対1くらいらしい。 そしてこの宿は冒険者しか泊まらない為女風呂はめったに人が入らないらしい。
「?レイさん、どうかしました?」
「い、いいえ。 何でもないわよ。 何でもない。」
「?そうですか。」
スルスルとアリアの服が擦れ合う音が聞こえる。
「そういえばアリアの服とても汚れてるわね。 私の服貸そうか?」
「えっ? いいんですかありがとうございます。」
しまった! アリアの服がやけに汚れているのに気付きつい声を掛けてしまったが。 今アリアは全裸じゃないか! アリアの体は健康的な体をしており胸は少し控えめだが形がいい……中々いい体だ。
「レイさん、早く服脱がないんですか?」
「え、ええ。 他の人(女性)と一緒に入るのって初めてだから。」
「へぇ~森の中では一人だったんですか?」
「まあね、ずっと一人でしたよ。」
そういえば森の中でひきこもりっていう設定でした。 自分で忘れていたよ。 さてずっとウダウダしていてもしょうがない意を決してワンピースを脱ぐ……あれ、ワンピースが胸に突っかかってうまく脱げない。
「もう、何してんですか。 レイさん。」
アリアが脱ぐのを手伝って……目の前でアリアの裸体を直視しました。
「ご、ごめんなさい。」
「何がですか? そんな事より早く風呂に入りましょうよ。 もう7日間は入ってませんから。」
「……ああ、人さらいに攫われて。」
「……ええ。」
服が汚れていたのもそれが原因か……
「まあ、じゃあ7日間分入りましょうか。」
「レイさん……はい!」
アリアの笑顔がとても眩しかった。 ちなみに、アリアと洗いあいました。 とてもスベスベだったよ!
夜、部屋に戻りネタ装備のパジャマを二人で着る。 ちなみにアリアの服と俺のワンピースは女主人が洗ってくれると言っていたが自分たちで洗って部屋で乾かしている。
「この服とかどう?」
「……何でこんな位の高そうな服しかないんですか?」
「えーいいじゃない女神官の服。」
「私、父が神父ですけど、父もこんないい服着てませんよ。」
「え、あなたの父さん神父なの?」
「はい、ハイナ教の神父です。」
「ハイナ教?確か明日行く国の名前って。」
「はい、ハイナ教国です。 エルフの人は大体ハイナ教ですよ?」
「へぇ~例えばどんな教えがあるの?」
「例えば、食事の時は殺された者に謝罪と感謝をしなさいとか。」
「常識だね。」
「ですが、エルフ以外の人種は殺されて当たり前だという事を言いますから。」
「へぇ~ あ、この服はどう?」
「さっきのに比べればマシですが……」
「どう?魔導院の制服だけど。」
「魔導院……100年前にあったといわれてる魔法の学校ですね。」
「今はないの?」
「今じゃあ魔法を使えるのはごく一部の人だけですから……っていうかこんな服もどこで手に入れたんですか?」
「内緒だよ。」
「内緒ですか……まあこの服にします。」
「うん、一応Bランクだから大切にしてね~」
「Bランク……ですか? 騎士の人も滅多に着れませんよ。」
魔導院の制服は分かりやすく言えば黒と赤のセーラー服のような感じの服である。 デザインがいいと評判のBランク装備の一つだ。 まあ、魔導院の依頼を500回以上やれば誰でももらえるから別に特別珍しいって訳じゃないけどね。
「捨てないでね~」
「捨てませんよこんな高そうな服。」
アリアがその服を割れ物でも触るかのような扱いをしており少し笑ってしまった。
追記 服を買う女子の気持ちが少し分かってしまった俺だ。