第46話 中継地点周辺での闘い
「……全然動きませんね」
今は馬車の近くで見張り(お留守番)をネイや黒猫さんと共にしている。 私としてはレイさんと一緒に露天を見たかったのだがネイに強制的に止められた為に、現在ロックキャンサーの観察をしています。 ロックキャンサーはさっきから一歩どころか身動き一つせず自分の作ったクレーターの前に居る。
「……そういえばさ」
「何ですか?」
私がジッとロックキャンサーを観察していると馬車の上からネイが話しかけてきた。
「アリアって凄いよね……良くもまあレイちゃんと平原を渡るつもりになったねえ」
「ああ……レイさんに着いていくってお父さんにも言っちゃいましたし」
「え、親公認?」
「はい、そうですよ」
私は普通に答えたがレイさんの決闘の事を知らなければ誰でも驚きますね。
「あ、両親は反対していたんですけどレイさんが認めさせたんです」
「どうやって?」
「決闘で」
「ああ、レイちゃんらしいね……」
ネイはウンウンと頷いている。 決闘でらしいって……。
「いや、レイちゃんって良くも悪くも猪突猛進じゃない」
「……まあ、それは分かりますけど」
「だから大体アリアちゃんの為にやったんじゃないかな~っと思ってね」
「……なる程」
何か納得してしてまったがそう言われると何だか恥ずかしいですね……。 ちょっと恥ずかしくて顔を反らすと有るものが目に入ってきた。
「あ」
「アリアちゃん?」
ネイが私のつぶやきに反応してくる。
「あ、いえ……そこのロックキャンサーが少し動いたので」
「え?あ、本当だ」
私が指を差しながらネイに説明する。 さっきに比べてちょっとハサミを上げた気がする。
「お、もっと手を上げたね」
「一体何をするつもり何だろうね?」
『あなた達は何をしてるの?』
黒猫さんに変な目で見られつつも私とネイはロックキャンサーの様子を2人で仲良く観察していた。 ……そういえばレイさんで無しでネイと居るのは初めてな気がしますね。
視点変更 アリア→レイ
「おじいちゃん、他に何買うの?」
「……いや、ちょっと休憩しないかの?お嬢ちゃんも疲れたろ」
中継地点でしばらく買い物をしているとおじいちゃんが俺に提案してきた。 俺が荷物持ちをしているのにおじいちゃんから提案するのはおかしくないか?するならこっちからじゃないか?とか思いつつおじいちゃんに返事をする。
「ん?私はまだまだ大丈夫だよ? おじいちゃん、疲れたの?」
「いや、まさかお嬢ちゃんがそんなに荷物を持てるとは思っとらんかったわい」
「え、ああ意外と軽いよ」
俺の両手には俺が見たことがない野菜のような物がたくさんある。 全ておじいちゃんが買った物だ。 重そうに見えたが意外と軽い……俺の筋力も「レイ」になったからだな……流石エルフマスター。
「お嬢ちゃん、見た目よりもずっとたくましいのお。 わし一人では大変だったぞい」
「という事は私は役に立ったって事だね」
おじいちゃんの言葉に俺はやや嬉しくなる。 俺は意外とこういう手伝いは嫌いじゃない。 高校に入ってから直ぐ、小さな女の子が困っていた所を助けたら「ありがとう!綺麗なお姉ちゃん!」と言われしばらく落ち込んだりもしたが基本的には人助けをついついしてしまう性格なのだ。
「そうじゃの、わしは助かったぞ。 お嬢ちゃん、ありがとう」
「ふふん、どういたしまして」
こうしておじいちゃんとのんびりと会話をしているとテントの一角からヒューマンの男が中継地点に入って来た。 その男は血が出ている右手を左手で抑えていて、右足を引きずっていた……明らかに満身創痍の状態だ。 そしてその男が今出せる限りの大声で中継地点に居る人達に有ることを伝えた。
「「平原の主」だ!「平原の主」がこっちに向かって来るぞ!」
「!?」
その男の声に俺の周りの人々が一気に静かになる。 よく見るとおじいちゃんも目を見開いて、動きが止まっている。 ……そしてみんなが一斉に逃げ出した。
「と、とりあえず逃げないと!」
「ちょっと待って! 「平原の主」はこっちに来てるの?」
「ああ、俺の馬車がついそこで粉々にされた!」
「じゃあ、もうすぐに来るじゃない!」
「いや、俺の仲間達が応戦してる! 誰か!誰か仲間の援護に行ってくれないか!」
満身創痍の男の言葉に何人かの人が男の方を見るが、直ぐにまた走り出す。 おそらく自分の馬車の所に行って直ぐに逃げるのだろう。
「お、お嬢ちゃんも早く逃げないと」
「……」
おじいちゃんが俺に対して話しかけてくる。 話し方からしてかなり焦っているようだ。 ……なら
「【召喚 ウッドナイト】」
「お、お嬢ちゃん!?」
俺の近くに木で出来た騎士が現れる。
「お願い! おじいちゃんを私の居た馬車まで運んで!」
「……」
ウッドナイトは木で出来た顔らしき場所で頷くとおじいちゃんをお姫さま抱っこする。
「お、お嬢ちゃん!? 一体何をするつもりじゃ!」
「「平原の主」と戦っている人達を助けに行ってくる! おじいちゃん!食べ物をお願い!」
「そ、それは無理じゃ! お嬢ちゃん!やめなさい」
俺はおじいちゃんの上に野菜を置くとヒューマンの男の所にダッシュで向かう。ヒューマンの男は逃げていく人達を見て絶望的な表情をしていたが俺を見て、明るい顔をになる。
「エ、エルフのアンタ……まさか俺の仲間を助けてくれるのか!?」
「ま、そういう感じです【魔法 フェアリーライト】」
とりあえず仲間云々よりも男の怪我が最優先だと思い、回復魔法を男に掛ける。男の怪我はみるみるうちに無くなり、傷跡一つ無くなった。
「あ、ありがとう……ってそれよりも! 俺の仲間だ!今「平原の主」と戦っていて危ないんだ」
「けどあなたも死にそうでしたよ。 それにあなたの仲間も助けに行くつもりです」
俺の言葉を聞き、焦っていた男の顔もやや落ち着いてきたのでさらに質問する。
「で、仲間はどこに?」
「あ、ああ……結構近いぞあっちだ」
「あっち?」
男が指を指した方向を向く。 そこにはやや黒い影が微妙に見える。
「分かった。 ちょっと待ってて【召喚 スレイプニル】」
「お、おい。 本当に助けてくれるのか?」
「だーかーらー! 助けるって言ってるでしょ! ちょっと黙って!」
「あ、ああ……」
俺は一々聞いてくる男の事を面倒くさがり、とりあえず男を黙らせる。 そんな事をしている間に八本の足がある純白の馬が俺の前に現れる。 そして【補助 マジックボックス】を発動し、中から金色の槍を一本取り出す。
「よし、じゃああなたも急いで逃げてね」
「あ、ああ……気をつけて」
俺は男に挨拶をし、スレイプニルに乗り一気にダッシュで走る。 するとみるみるうちに黒い影が段々大きくなる。 確かに結構近いな。
「よし、じゃあ行くよ!」
俺はスレイプニルにさらに速く走るように命令をし、黒い影の元へ急ぐのだった。