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第44話 知らないことはまだまだあるねbyレイ

視点変更 サラ→レイ


 ハイルズから出て約5日。 ハイナ教国の国境で検問なんかがあり、今馬車は平原を走っていた。


「ネイ」

「ん?何?」

「ギルドカードって便利だね」

「あ、レイちゃんってギルドカード最近作ったんだっけ?」

「うん、まさかこのカードを見せるだけで通れるなんて思わなかったよ」


 俺が言っているのはハイナ教国の検問での事だ。 馬車は積み荷などを結構しっかり確認していたが、俺の場合はギルドカードを見せただけで簡単に許可されてしまった。


「ま、それはハイナ教のおかげでもあるけどね」

「あ、そういえばそうか」

「でもライヴァン同盟に行くならギルドカードは作っておいて正解だね。 あっちはハイナ教とか関係なしだから」

『ご主人様はいつも行き当たりばったりなのに意外と上手くいくよね』

「黒猫さん意外とって何よ! 意外とって!」

「……レイさんって初めて会ったときは知的な人だと思うんですけど、中身は意外と猪突猛進なんですよね……」

「ひど! アリア酷いよ!」


 確かに最初に比べてハメが外れているような気はするがアリアが言っているのとは違う! ……と思いたい。


「まあまあ、お嬢さん方。 そろそろ中継地点に着くから大人しくしてなさい」

「中継地点?」

「あ、レイちゃんそういうのも知らないんだ」


 俺は初めて聞いた言葉に思わずおじいちゃんに尋ねる。 すると馬車の荷台で黒猫さんと遊んでいたネイがこっちの話に加わって来た……ネズミを見つけた猫のような目をして。


「う、うん全然知らないよ」

「知らないんだ~」

「し、知らないってば」


 ネイがやけに鋭い目でこっちを見てくるのでやや引きつつネイにさらに尋ねる。


「ふふふ、私が教えて進ぜよ~」

「ネイ、さっきからどうしたの?」

「いや~、レイちゃんにえらそうに出来る場面がこういう時くらいしか無いからね」

「いや、別にネイに聞かなくても良いんだけど……」

「え~、私に教えさせてよ~」


 ネイが何か涙目で訴えてくる。え~っと、つまり自分の知識をどや顔で自慢したかったって事?


「まあ、いいや。 ネイ、中継地点って何?」

「うん、中継地点っていうのはね呼んで字の如く。 ハイナ教国とライヴァン同盟をの間にある商人や冒険者の集まる所だよ」

「ホント字の如くですね……」

『これなら別に説明して貰わなくても……』

「……うぅ」


 ネイの説明にアリアと黒猫さんが厳しい言葉を掛けられネイががっくりと頭をうなだれる。 ……流石にかわいそうだと俺は思い一応フォローする事にした。


「ちゅ、中継地点には何があるの? ネイ」

「!レ、レイちゃん、中継地点にはね! 色々とあるんだよ!」

「例えば?」

「テントの宿屋とか、商人の露天とかあるよ」

「へー、別に村って訳じゃないの?」


 俺はネイの話に興味を持ち、話を促す。 するとネイは指を横に振りながら「チッチッチッ」と何か懐かしさを感じる動きをし、話を続ける。 ……ちょっとネイをウザく感じたが気にしないようにしよう。


「ううん、村じゃないよ。 平原には平原の主が居るからね。 あくまでも簡易の休憩所だよ。 平原の主と会わないために位置を変えたりとかしてるし」

「平原の主?」

「あ、レイさん平原の主も知らないんですか。 ……ちょっと意外」


 またまた聞き慣れない言葉に俺が聞き返すとアリアが目を丸くしていた……なんかこのリアクションは久々な気がする。


「意外? アリア、どういう事?」

「あ、レイさんならモンスターの事には詳しいんじゃないかな~っと思ってました」

「モンスターには詳しいけど……平原の主って何? 何かの二つ名?」

「平原の主っていうのは……ある野生のモンスターが突伝変異で超大型化したものでしたっけ?」


 アリアが恐らく本で得た知識を俺に教えてくる。


「超大型化?」

「まあ、大きくなって凶暴になったモンスターだと思えばいいよ」

『簡単にし過ぎじゃない?』

「相手には簡単に伝わるのが一番良いんだよ」


 途中から黒猫さんとネイが話に加わる。 けど突然変異か……そういう事もあるから全部俺が知ってるモンスターって訳じゃないのか……っと俺はなんだか感慨深い気持ちになっているとおじいちゃんが俺たちに対して言葉を掛ける。


「お嬢さん達、ホラ!見えてきたぞ」

「え?ホント!」

「ホントじゃ、ホントじゃ」


 おじいちゃんが指を指している方向に目を向ける。 そこにはまだ遠いがテントらしき尖っているものが見える。


「やっと到着かぁ~。 これでゆっくり休めるよ」

「……見張りの時にずっとモンスターを【召喚】していて結構のんびりとしていたレイさんの言うセリフですか……」

「出来る事はやっておいた方が良いじゃ無い」

「レイちゃん……モンスターで気づいたんだけど……」


 俺達の夜の会話(色々な意味で)にネイが混ざってくる。 ネイの真剣そうな顔からして余り良い内容では無いようだが……。


「私たち……全然モンスターに会ってないよね?」

「あ、そういえばそうだね」

『ご主人様のモンスター達も?』

「うん、一度もHPは減ってなかったし何か攻撃した形跡も無かったよ?」

「HP?」

「あ、体力のことだよ」


 そうか、HPなんて言っても伝わらないのか……ってそこじゃなくて確かにおかしい。 オルアナ王国からハイルズに行くだけでもスライムとかには会った。 なのに今までモンスターが一度も出てきてない……つまり。


「どういう事?」

「いや、ただおかしいな~って思っただけだから。 レイちゃんは気にしなくて良いよ」

『……何か変な物が立った気がする』


……黒猫さん不吉な事言わないでよ。


「まあまあ……そろそろ着くぞ。 中継地点じゃ」

「……ま、私はお風呂に入れば良いや」

「……レイちゃん、中継地点にはお風呂は無いと思うよ?」

「え、そうなの!?」

『当たり前じゃん』


 それもそうか……キャンプ場違うもんな……っと俺はしみじみ思っていた。


視点変更 レイ→彰


 「経験の腕輪事件」これは「マジック・テイル」のサービスが始まって大体1年後に起きた事件だ。 その事件の大元が「試練の洞窟」にあった。 「試練の洞窟」は初心者~中級者向けのダンジョンで地下に潜れば潜る程レベルが高くなるという「マジック・テイル」では意外に珍しいダンジョンだった。 そして「試練の洞窟」の最下層に居るボスはチャレンドラゴンというモンスターだ。 事件の前のチャレンドラゴンは強いがそんなにレアなアイテムを落とさない、ハッキリ言うと戦っても無駄なモンスターとされていたので初心者のプレイヤーが力試しに挑戦する程度の過疎っているダンジョンだった。


 しかし、そんなダンジョンに1人のプレイヤーがチャレンドラゴンを捕獲するために入っていった。 それが「レイ」こと「白崎 陸」で、この時陸が手に入れたアイテムが「経験の腕輪」だった。 そして事件が始まった。

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