第42話 アリアから学ぶ歴史の授業
視点変更 精霊ズ→レイ
「どうしてネイが怒ったのか……ですか?」
「うん、何か差別に関して厳しそうだったからね」
夜、馬車の周囲を俺とアリアで見張って居る。 この後しばらくたったらネイと黒猫さんに見張りを交代する予定だ。
「多分、昔の獣人族に対する差別が有ったからでしょうかね……」
「そんなの有ったの?」
「はい、私も本でしか知らないんですけど……」
「別にいいよ。 何が有ったの?」
俺がアリアに促すと。 アリアはやや自信なさげに話し出した。
「昔、戦争が有ったのは言いましたね?」
「うん、聞いたよ」
「その後、人々は貧困に苦しんだそうなんです」
「まあ、凄い戦争だったらしいからね」
俺は頷きつつアリアの話を聞く。
「ただ貧しいだけじゃなく凶暴な魔物も沢山居る。 けれど魔物に対抗出来る人達はみんな戦争で亡くなった」
「うん」
「それでも人達はなんとか生き延びようと集まって新しい街を作ったんです……それが今の国々の始まりです」
「それは分かったけど……獣人族とどんな関係が?」
俺はアリアに質問した。 俺は世界史とかは好きだが今は関係ない。 俺はネイの事が気になるのだ
「ですが、様々な危険を避ける為に出来たのは国だけじゃないんです」
「ライヴァン同盟とか?」
「ライヴァン同盟もそうですが……あれは最早国みたいな物です」
「じゃあ、ライヴァン同盟以外に何が?」
「ガシータの集いです」
「ガシータの集い?」
アリアから聞いたことのない言葉が出てきて思わず聞き返した。 何か痛い個人ギルドの名前みたいだ。
「はい、昔有った獣人族の集まりの事を言うそうです……ですが他の地域とはちょっと違うそうなんですよ」
「違う?」
「はい、わかりやすく言うと犯罪組織だったそうです」
「犯罪組織……?」
確かに「マジック・テイル」で獣人族と言われれば「盗賊」だ。 他の種族に比べ素早さや回避力が高く、「獣人族といえば盗賊」と言われる位盗賊向きの種族だ。
「……でも極端すぎない?」
「ですが獣人族は力仕事が苦手な種族で、時代も時代でしたから……」
「えーっと……つまりガシータの集いが他の地域から一杯物を盗ったりしてたから獣人族全体が嫌われちゃったって事?」
「はい、そのせいでガシータの集いには所属していなかった獣人族も他の地域から嫌われてしまったんです」
「へ~」
何か歴史の授業を聞いているような気分だ。
「ガシータの集いのせいで獣人族全体が嫌われてしまったらしいんです」
「そんな事有ったんだ……」
「地域によってはその差別が非道くなって他の種族全体を嫌うようになったそうです。 例えばヴェルズ帝国とか」
「なんかものすごい話になってきたね」
「今はそれ程非道くはないですけど。 多分、ネイは何処かでそういう差別を実感したんじゃないでしょうか?」
「やっぱネイも大変だったのかな……」
俺はこっちの世界でも差別が有ることを改めて感じていた。 やっぱ見た目が違ったりするから有るんだな~。
「……ですがレイさんはそんなに意識しなくても良いと思いますよ」
「え、どうして?」
アリアの言葉に俺は思わず聞き返した。 流石に相手の事情は気にしないといけないような気もするけど……
「……正直レイさんがそういうの気にすると少し可笑しいというか……変?」
「へ、変って……」
そこまでアリアに言われるとは……。
「ま、まあレイさんは変に意識しない方が良いんですよ。 そっちの方がレイさんらしいですし、ネイも気が楽だと思いますよ」
「ふーん……まあ、ネイもあまり知られたくない事情みたいだしね。 そういうのは気にしない方がいいね」
俺もそういう事情なら一杯あるし……俺が実は違う世界から来たとか絶対言えないしね。
「あ、そろそろネイ達と交代の時間かな?」
「あ、もうそんな時間ですね」
その後はアリアのシイラ村での思い出を聞きながら見張りをしていたら、俺がアイテムボックスから取り出していた時計が交代の時間を示していた。
「じゃあ、ネイ達を起こしにいきましょうか」
「あ、ちょっと待って色々としておくから」
「……色々と?」
アリアがゆっくりと立ち上がった所で俺はアリアに話しかけた。
「うん、【召喚】で何体かモンスターを出しておくの」
「……ああ、なる程」
視点変更 レイ→黒猫さん
『ねえ、ネイ』
「ん? 何?黒猫さん」
今、ネイと二人で(一人と一匹)見張りをしているが、暇なのでネイに話しかけてみた。
『ネイってさ、こんな平原でもそんなに露出の高い服を着てるんだね』
「露出が高いのは動きやすくするためだからね……何?黒猫さん蚊に刺されるとか心配してるの?」
『ん、まあね』
私がネイの言葉を肯定するとネイは不思議そうな顔をしていた。
『どうしたの? ネイ』
「いや、あなたってそういう心配とかするんだな~っと思って」
『ネイ、それは失礼』
「あ、ごめんごめん」
『私はあくまであなたの太ももを心配したにすぎない』
「え、そういう事!? 私の太もも以外の心配は無し!?」
そりゃ私は太もも大好きだし。
『私は別に獣人族やらエルフやらの事は興味ないからね』
「黒猫さん……そうなんだけどね」
『私は人の事についてはご主人様とご主人様の友達くらいしか興味ないよ。 差別云々は興味無し』
ネイは私の言葉を聞くと顔を伏せてしまった。 一応私はネイにフォローする。
『だから私はネイの事をネイとしてか見ないから獣人族とか興味ない。 ネイはただのご主人様の友達。 それだけ』
「黒猫さん……ありがとう。 そんな事言ったのはあなたくらいだよ」
ネイはやや涙混じりに私に感謝する……私は言いたいことを言っただけなのに何この反応? これは何かオチを付けないと……
『さあ、私に感謝しながら膝枕をするのだ』
「え、黒猫さんいきなり何?」
『太ももをふもふもしたい』
「あ、いきなりそれは……あぁ」
こうして二人の夜が過ぎていった……ネイって太ももが弱いんだね。