第40話 ライヴァン同盟への同行者
「う~ん無いな~」
「無いですね~」
『無い』
掲示板を見ながら二人と一匹は呟いた。 依頼を見ているのだがライヴァン同盟までの護衛の依頼が見つからない。
「CランクにはあるのにEランクには無いな~」
「ん? レイちゃん達ライヴァン同盟に行くの?」
俺がEランクで護衛の依頼を受けられないか探していると後ろからアルカさんが話しかけてきた。
「はい、そのついでにお金を貰えたらいいな~っと思って依頼を探しているんですけど」
「ライヴァン同盟は遠いし、平原を通らなくちゃいけないからね~Eランクには無いんじゃないかな……」
「マジですか……」
「マジだよ」
アルカさんが残酷な事実を突きつけてくる。
「う~ん……どうしてもダメ?」
「どうしてもダメ。 ここは流石に譲れないよ」
『闘技大会で優勝したのに……』
「それはそれ、これはこれ」
う~んアルカさんが真面目に仕事をしていてかなり困った。 どうにか依頼を受けられないかな……。
「アルカさん、どうしても受けられないんですか?」
「レイちゃんだけじゃ駄目だね。Cランクより上、つまりBランク以上の冒険者と依頼を受ければ依頼を受理出来るよ」
「え、本当!?」
「本当、本当。こんなところ嘘つかないよ~」
アルカさんの言うことがその通りならまだ依頼を受けられる可能性はあるな。
「ねぇ、アリア」
「何ですか?レイさん」
「……ネイってBランクだったよね?」
「ネイ?……多分そうだと思いますよ」
「やぁ~私の事噂してた?」
「うわっいつのまに!?」
『私たちが来たときからテーブルに居てこっちを見てた』
俺たちがどうやってネイを見つけて説得しようか考えていたとき。 後ろからネイが話しかけてきた。流石義賊隠密行動はお手の物だな。
「で、何々何の話~?」
「あ、ネイえっとですね……」
とりあえず「ライヴァン同盟までの護衛の依頼を一緒に受けませんか?」のような内容をネイに伝える。 するとネイは
「う~んライヴァン同盟ねぇ……」
「ダメですか?」
「いや、ダメって訳じゃないんだけど……」
どうやらネイはそんなに乗り気じゃないようだ。 ライヴァン同盟で嫌な思い出でもあったのかな?とは思いつつも俺は交渉をネイに試みる。
「報酬をはずみますよ?」
「……どれくらい?」
「白金貨一枚」
「その話乗った!」
「決断早!?」
ネイのあまりにも変わり身の早さにアリアが驚いていた。 流石義賊お金の事が第1のようだ。
『いや、そんな大金出されたら誰だって乗ると思うよ』
「え、そう?」
ま、それもそうか。 俺も「100万円あげるよ」とか言われたら何でもしそうだしな。
「じゃあ、私とレイちゃんでこの依頼を受けるね」
「え、でも本当に良いんですか?」
「いいって、いいって。 ライヴァン同盟は私も行きたかったしね」
『さっきは行きたくなさそうだったのに』
「それは気のせいだね」
ネイが先ほどとは打って変わってノリノリで依頼を受け付けへ持って行った。 ちなみに持って行く時に「白金、白金」と口ずさんでいたのに俺は苦笑した。 どんだけ現金なんだよ……。
「この依頼は明日の午後からだから、明日の12時にここに集合ね!」
『凄いテンション高いね』
「ネイってお金が好きなんですね……」
受付で依頼を受注し終えたネイが俺たちに早口で待ち合わせの約束をしてきた。 黒猫さんとアリアはそのネイの様子にやや引いていた。
「じゃあ私はライヴァン同盟に行く準備をするから。 レイちゃん、アリアちゃん、黒猫さんじゃあね~」
「ネイ、また明日~」
「うわ、走るの早!?」
ネイが俺に負けない位の猛ダッシュで冒険者ギルドから出て行ったのを俺たちが見送る。 やる気満々だなネイ。
「じゃあ、私たちも行きますか」
『何処へ?』
「ライヴァン同盟に行くための準備をしに行くんですか?」
「そうそう、それそれ」
「ん?レイちゃん達もう行っちゃうの?」
俺がアリア達と冒険者ギルドを出ようとしたときにアルカさんに話し掛けられた。
「うん、明日の準備をしなくちゃいけないからね」
「え~もっとお喋りしようよ~」
「アルカさん……すみませんがやっぱり行かなくちゃ行けないんで」
「で~も……」
アルカさんが何故か駄々をこねているのをアリアが何とか説得している。 ……あれ?アルカさんの後ろから何かオーラが出ている人がこっちに向かってきてるぞ?
「ア~ル~カ~」
「ゲッ!?サラ……」
オーラを出していた人はサラさんだったようだ。 けど珍しいね、サラさんがめちゃくちゃ怒ってる。
「アルカ、私に書類仕事を押しつけておいてレイちゃん達と会話なんていいご身分ね」
「だって私書類仕事苦手だし……」
どうやらアルカさんはサラさんに書類仕事を押し付けていて、さらに俺たちと話していた事にサラさんは怒り心頭のようだ。
「とりあえずアルカには良いものプレゼントして上げるわ」
「ゲッ、それってもしかして……」
「そう、竹箒よ。 ギルドの周りを掃除しなさい」
「ええ~……」
「書類仕事はしたくないんでしょう?」
「……は~い」
涙目になりながらアルカさんが竹箒を持ちながらギルドの外へ出て行った。 それを見ながら「よし」と呟いたサラさんが俺たちの方に目を向ける。
「ごめんなさいね。 色々あって」
「あ、別にいいよサラさん」
「はい、ちゃんと仕事はしていたと思いますよ……多分」
……この時のサラさんの気迫には俺は一生かなわないと思いました。