第38.5話 ハイルズの夜 お城にて
タイトルからお察し下さい
視点変更 彰→ハイナ2世
「あれ? レイとアリアさんは寝てしまったんですか?」
「私とハイちゃん以外はみんな寝たよ」
夜、ベットに四人で入った後しばらくみんなとお話をしていたら自然に口数が減っていった。 そしてレイとアリアさんは寝てしまったようです。
「黒猫さん……でしたよね」
「うん、そうだよ」
私は起き上がって、黒猫さんの方を向く。 黒猫さんの姿は暗くて見えないが金色の目だけが宙に浮いているので居場所は分かりました。
「レイってどう思いますか?」
「ご主人様の事?」
「そう、あなたのご主人様のことです」
黒猫さんは目しか見えないが了承してくれたようで、コクンと目が頷いてくれた。
「変な人」
「え……」
「だから変な人」
「変な人ですか?」
「そう」
黒猫さん曰くレイの事は「変な人」らしい。 何というか……
「私と意見が合いましたね」
「ハイちゃんも?」
「ええ、変わったお方だなーっと大会の時から思っていました」
会食の時もあんなに堂々としていた人を私は初めて見た。 私に対して謙虚にもならず、偉そうにもしないあの人を私はますます気に入ってしまった。
「大会……」
「どうかしました?」
「大会と言えば……ご主人様は強いのに全然戦い方を知らなかった」
「そうなんですか?」
「うん、強い魔法や技は知っているのに全然敵とは戦ったことがないみたい」
「へえ……」
黒猫さんがいきなりレイについて語り始めた。 黒猫さんはレイに対してこんな事を考えていたんだ。 とても主人思いなんだなぁっと私は思っていたら。
「ちょっと待てぇ彰ぁ……」
「ん? レイ?」
「またか……」
レイがぼそっと言葉を発した。 黒猫さんの反応によると何度かあったよう言い方でしたが……。
「これは、寝言っていう物ですか?」
「ん?そうだと思うよ。 ご主人様は寝てるとき時々寝言を言うから困る」
黒猫さんの姿は見えないがため息の声が聞こえる。 何か嫌なことでもあったのだろうか?
「PSP版には優雨ルートがあるんだよな!? なぁ!!」
「ぴーえすぴー?」
「真面目に聞いちゃダメ」
寝言にしては大きめの声でレイが呟いています。 どうやら黒猫さんも知らない単語のようです。 レイの地元で使われてる特別な言葉なのでしょうか?
「パソコン版はやったけどそっちもやらないとな……PSP版貸してくれ!」
「何か頼まれてますよ……どうしたらいいのでしょうか?」
「いや、寝言だから」
あら、あまりにも大きな声で言うからてっきりもう起きてると思っていたのだけれども……まさかまだ寝ているとは思いませんでした。 ……関係ないですけどその隣で寝ているアリアさんって凄いですね……。
「俺の優雨ちゃんにエロシーンはいらない! だって優雨ちゃんかわいすぎるから!」
「え、えろ?」
「ハイちゃん、もう寝た方が良いよ……話を聞いているときりが無い」
黒猫さんが何やら言っているが私にとってはそれどころでは無い。 さっきの言葉はまさか……
「レイに恋人が居るのでしょうか!?」
「どういうこと?」
「だ、だってさっきから一人の女性に対する褒め言葉しか言っていないのです!」
「いや、多分恋人は無いでしょ」
黒猫さんの声はかなり確信したような口調だ。 何か根拠があるのだろうか。
「だって、ご主人様って……「可愛い女の子はみんな大好き!」って感じだし」
「そ、そうなんですか?」
「うん……っていうかご主人様に恋人がいるかいないかなんてハイちゃんが知ってどうするの?」
「い、いえ何でも無いですよ?」
「そう」
黒猫さんは特に興味があるわけではないようで私の言葉を聞いたら、直ぐに目を閉じた。
「じゃあ、おやすみなさい」
「……うん」
さあ、私も明日仕事があるから直ぐに寝なくちゃね。
「……そういえば金髪の子も攻略出来るんだよな!?」
「き、金髪!?」
「反応しちゃ駄目だってば」
結局、私と黒猫さんはレイが寝言を言わなくなるまでずっと起きていました……。