第36話 ケーキ!ケーキ!
「お待たせしました。 レイ様」
「ん?……ああ!女王様! 閉会式以来だね!」
「レイさん!? 何で女王様にため口なんですか……」
「いつもの事じゃん」
精霊の間で椅子に座って待つこと5分、扉から女王様が女官や護衛を連れて入ってきた。 女王様は純白のドレスを着ていてかなり綺麗……っていうかこの城は白という色しか知らないのか。
「あ、ダジャレ出来た」
「?レイさん?」
「い、いや何でも無いよ」
「まあ、とりあえず食事をしながらゆっくりお話しましょうか」
俺たちのやりとりを微笑みながら見ていた女王様の一言俺たちに話しかけてくる。
「そうだね!……おぉ!ケーキだよアリア!」
「そういえば食べたがってましたね」
「まあ、ケーキを食べたがっていたのですか?」
「うん!甘いのはこの頃食べてなかったからね」
こうしてほのぼのと会食が始まった。
「まあ、ではアリアさんはヴェルズ帝国に連れて行かれそうだったんですか!?」
「あ、はい。 ですがそこでレイさんに助けて頂きました」
「なるほど……それが二人の出会いですか」
「そうそう」
女王様とは色々な事を話した。 俺の出身地とかはあやふやにして、アリアと出会っでからの話を中心に女王様と会話する。 女王様は俺達の話に直ぐ驚いたり、笑ったりと俺が思っていた以上に感情が豊かなようだ。
「では、そちらの……使い魔さん……ですよね?」
「そうだよ」
「こちらの方とはいつ頃から?」
「アリアと出会ってからちょっとの時に私が捕まえたの!」
「へー、使い魔を自分でですか……まだそんなに若いのに凄いですね」
女王様がキラキラという音がなりそうな目で俺を見てくる。 やめて!何か罪悪感が沸いてくるからやめて!
「いやいや、女王様もまだ若いじゃないですか」
「レイさん……流石に女王様にその口の聞き方は……」
「いえ、そんな親しく話しかけてくれる人は少ないですから、むしろそういう話し方の方が良いですよ」
「あ、はい分かりました」
女王様って意外とフランクでかわいいな~っと俺は彼女を見て思った。
「レイさん、言わなくちゃいけないことがあるんじゃないですか?」
「あ、そうだ。 あったあった」
「ご主人様……軽すぎ」
「ああ、私に頼み事でしょうか?」
3個目のケーキを食べ終わった所で呆れながらアリアが話しかけてきた。 俺はテーブルを挟んで前に居る女王様に目を向ける。 女王様が俺の食べっぷりに苦笑しているが気にしない様にしよう。
「頼み事というか……言わなくちゃいけないことと言うか……警告?」
「……そういう言われ方をされるとあんまり良くないことの用ですね」
俺の言葉を聞いて女王様が顔を引き締める。 ついでに周りにいる使用人達にも一層の緊張感が湧くのを感じる。
「では、聞きましょうか。警告とは一体何ですか?」
「うん、それはね……」
「とりあえずレイさん……顔に着いたクリームを取りません?」
「言っちゃダメだよアリア。緊張感が台無しだから」
「「……」」
女王様の顔が苦笑いに変わり、クスクスと笑い始めた。 あ、この人知ってたな。 知りながら気づいていないフリをしてたな。
「アリア、女王様って凄いね」
「……いきなり何なんですか」
「ご主人様、早くクリーム拭きなよ」
「え~、黒猫さんが拭いてよ~」
「なめるよ?」
「卑猥だよ!黒猫さん!」
少女の姿で顔をなめられるとか俺と……ゲフンゲフン。
「まあ、黒猫さんについてはいいとして……女王様」
「はい、何でしょう?」
「「魔神」って知ってますか?」
結局自分でクリームを拭き取り、俺は本題を女王様に説明した。
「……それは精霊が本当に言ったのですね?」
「はい、私が居た森でちゃんと聞きました」
とりあえず女王様には「俺が居た森で精霊から「魔神」が来ると言うことを聞いた」程度の内容を伝えた。 まあ、その程度しか聞いてないからそれ以上の事を言えないのだけれども。
「それをどうして私ではなく、あなたに伝えたのかしら」
「精霊に聞いてみたら?」
「いえ、黒猫さん。 精霊達は一人一人に対して言うことを変えているので女王様にしか言わないことがあったり、レイさんにしか言わないことがあるので多分精霊に聞いても無駄だと思います」
「そんなものなの?」
「へ~、そうなんだ」
「……黒猫さんはともかくレイさんもですか」
アリアが呆れた顔をしている。 それに周りの女官らしき人なども俺に対して変な目線を送っている。
「まあ、ともかく精霊が言ったことです。 警戒をしていて損はないでしょう」
「うん、お願い」
う~ん、この人は話が早くて助かる。 もっと信じて貰えないと思っていたのに。
「じゃあ、あなた達はこれからどうするんですか?」
「とりあえず、他の国にも危ないって事を伝えたいんだけど……」
「今のオルアナ王国とヴェルズ帝国は聞く耳を持たなそうですからね……やはりライヴァン同盟に行くべきだと思いますよ」
「あれ? ライヴァン同盟は国じゃないって聞いたけど」
「ですが規模なら他の国と大して違わないですから。 あっライヴァン同盟の「五師匠」に紹介状を書いておきますね」
「五師匠?」
「ライヴァン同盟の中で偉い人達です」
「へー」
五師匠って事は五人で色々と決めているのかな?
「色々とありがとうございます。 女王様」
「いえいえ、アリアさん。 私の事はハイナでいいですよ」
「そ、そんな! 女王様の事を呼び捨ては……」
「呼び捨てがダメならハイちゃんでいいんじゃない?」
「黒猫さん!それ良い!」
「二人とも馴れ馴れしすぎでしょう……」
「まあ!私ニックネームって初めてなんです!」
「女王様もノリノリ!」
おお!ついにアリアがハイちゃんに突っ込んだ! ちなみにこの後、アリアもやけになったのかハイちゃんと呼ぶようになりました。