第35話 きままな女王と生真面目メイド
やっぱ地の文が苦手です……
「よし、確認は出来たよ」
「は~い」
現在6時40分、会食の為にお城に来ていた。 門の前に魔導隊の人達が居たが俺の事は知っているらしく、準備していたかのようにテキパキと俺にチェックをしてきた。 ちなみにエロい事はされず、ギルドカードの確認程度なので色々と安心して欲しい。
「あ、でもアリアはお城の中に入ってもいい?」
「アリア?隣に居るお嬢さんかい?」
「はい、そうです」
魔導隊の人がアリアを見ながらどうしようか困っている。 アリアも顔が緊張している。 アリアは闘技大会に優勝していない。 だからアリア自身は会食に出られる権利自体は持っていないのだが……
「その、いいでしょ? 私が優勝したんだし! アリアがどうしても行きたいっていうから……」
「別に言ってませんよそんなこと! レイさんが「アリアを一人で置いてくのがヤダ~」って言って無理矢理連れてきたんじゃ無いですか!」
「だって……もし私たちがいない間にアリアに何かあったらと思うと……」
「ありません! レイさんはお母さんか何かですか……」
アリアとはずっと旅を共にしてきたのだ、会食も一緒にしたいではないかっという俺の勝手な意見なのだが。
「やっぱダメですかな……」
「い、いやとりあえず女王様に聞いてみるよ。 もしかしたら許可してくれるかもしれないし」
「おお!ありがとう! アリア!女王様とお話しできるかもしれないよ!」
「まあ、女王様に会えるなら嬉しいですけど……」
『まあ、女王様次第だね』
……あれ?俺ってかなり迷惑な人じゃね?とは思ったが時には無茶をすることが大事だってお母さんに言われた気がするので無茶をすることにしたのだった。
視点変更 レイ→ハイナ2世
「女王様、大会優勝者の方が会食に一人招きたい方が居るとおっしゃっているんですが……どうしますか?」
「招きたい方?」
「はい、見たところエルフなので何も企んでは居ないと思うのですが……」
私が会食にどの服で出ようか考えていたところ、魔導隊の方が報告しに来た。 どうやら大会優勝者……つまりレイというあのエルフがお友達を連れてきたようだ。
「まあ、いいのではないですか。 会食なのだから人が増えて悪いことはありませんよ」
「はあ……ですが他の国民から何か言われるかもしれません……」
「そこらへんは大丈夫でしょう。 何なら明日、街に散歩にでも行きましょうか?」
「じょ、女王様……それは」
「ま、仕事がありますから行きませんけどね」
目の前で見て分かるくらい魔導隊の方が動揺している。 エルフの国とは行ってもエルフ以外の人も居る。 エルフ以外の種族には色々と恐い人もいるらしい。 もし、エルフの女王が暗殺とかされたら国家間の問題になるので魔導隊の警備がどうしても薄くなる外に出て欲しくないようだ。 まあ、流石に私も女王なのでそこら辺の事情は知っている。
「じゃあ、ちゃんと伝えてくださいね」
「りょ、了解しました。 女王様」
魔導隊の方が動揺しつつも敬礼をして、部屋から出て行く。 ややテンポが合っていない足音を聞きつつ先ほどやっていた作業に戻る。
「う~ん、やっぱ白いこっちのドレスが……けどやっぱり緑のこっちかな……」
あ、でもレイって方は緑の服を着てたような……服の色が被るのはちょっと気まずいかも知れませんね……。
視点変更 ハイナ2世→レイ
「女王様から許可が出た。 そっちのお嬢さんも入って良いぞ」
「え、本当ですか!?」
「まさか本当に許可を貰えるとは……」
約10分、城の前で魔導隊の人と喋りながら待っていたところ別の魔導隊が来て報告してくれた。
「では、こちらへどうぞ」
「やったー! みんなで会食だよ~」
「レイさん……はしゃぎすぎ」
『いつもの事じゃん』
「……それもそうですね」
アリアが呆れているが気にしない。 俺はテンションが高いまま魔導隊に連れられ女王様の城に入った。
西洋風の真っ白な城の中は予想通りだった。 白い廊下はツルツルに磨き上げられており、壁には絵画が飾られている。 まさしく日本全国の女の子がイメージするお城はこんな感じだろう。 俺は魔導隊に連れられながらあちこちを見渡す、隣に居るアリアも大体同じ感じだった。 彼女もこういう城に入るのは初めてのようだ。 黒猫さんは何事もない感じで四足歩行で歩いている。
「黒猫さんってこういう所には入った事あるの?」
『ない』
「にしては冷静じゃん」
『驚くようなこともない』
「そう?」
『そう』
「レイさん、そういえば抜け毛とかって大丈夫ですかね?」
「大丈夫じゃない?」
『私、ペット扱い?』
「大丈夫です、女王様は猫くらいなら許してくれますよ」
『あんたも乗ってくるんかい』
魔導隊の人に対して関西弁でつっこむ黒猫さん……関西弁ってこっちの世界にあったのか……。 黒猫さんの意外な突っ込みが炸裂していて俺が驚いていると、先頭を歩いていた魔導隊の人が大きめの扉の前で立ち止まる。
「レイ様、精霊の間に着きました。 本日はこちらで会食を行います」
「へえ~精霊の間……言い名前だね!」
「ええ、何でもこの部屋なら森の中じゃなくても精霊と会話する事が出来るらしいですよ」
「ああ、だから精霊の間なんだ~」
「はい、では失礼します」
魔導隊の人は俺に軽く会釈をすると大きな両開きの扉を開けた。
「……凄い」
アリアがポツリと呟いた。 俺も同感だが、予想通りでもありそれ程驚かなかった。 その部屋は分かりやすく真ん中に長い真っ白なテーブルが置かれており、その上に色とりどりの花が純白の花瓶に飾られている。 床も壁も真っ白、白一色だ。
天井には黄色い炎のを出す蝋燭が浮いている……ハリー○ッターみたいと思ったが気にしない様にしよう。 俺たちが部屋を見渡していると今度は魔導隊ではなくメイド服の少女がやってきた。も ちろんエルフだ。 この城を掃除とかして大変なんだろうな~などと勝手に同情しているとメイドが俺たちに話しかけて来る。
「お待ちしておりましたレイ様、席にご案内いたします」
「あ、ありがとう」
「いえ、メイドですから」
うお、このメイド格好いい! メイドはピシッと音が聞こえてきそうな動きで俺たちを椅子に案内する。 しかし席に案内した後、黒猫さんを見て何かを思い出したような顔をしていきなり腰を90度に曲げる。
「……すみません、猫用の食事を用意しておりませんでした」
『キャットフードがないと!?』
「そこで驚くんですか!?」
黒猫さんが絶望的な声を上げ、アリアが驚いていた。 まあ、今まで普通に俺たちの食事を食べていたから驚くのも無理はないが。
「私たちと同じ物を食べていたから、私たちと一緒でいいと思うよ?」
「ですが万が一の事があったら……」
う~ん、このメイドさんは良い人だけど真面目過ぎるな~。 どうしようか……
「あ、そうだ黒猫さん【補助 変身】してよ」
『まさか、キャットフードを諦めろと?』
「まあ、そんな感じ」
『……仕方ない』
黒猫さんはため息を着きながら『ご主人様の命令だし……』と訳あり気味に呟き【補助 変身】を使った。 すると黒猫さんが一瞬光ったと思った瞬間目の前には黒コートを着た色白銀髪少女が立っていた。
「メイドさん、メイドさん大丈夫だよ。 猫はいなくて女の子が居るよ」
「いえ、ですがスキルで見た目が人になっても中身は猫では……」
「猫じゃなくて、使い魔だから問題ないって」
「……そうですか。 分かりました」
ようやくメイドさんは認めてくれたようで「しばらくお待ちください。 食事をご用意します」と言い部屋から出て行った。 ……しかし
「会食前から疲れた……」
「ご主人様、それは私の台詞」