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第33話 大会が終わるとき

 今回で長かった闘技大会が終了します。 


 見返すとテンポ悪いな……。

「やあ、本当にここまで来るなんてね……驚きだよ」

「そのセリフ、あなたに返しますよ」


 闘技大会の決勝、いつも通り弓を装備している俺は闘技場の真ん中でパッキン貴族バルテンと向かい合っている。 俺の隣には黒猫さんが、バルテンの後ろには例の怪しい影……カウンターファントムが居る。


「僕は例え相手が女性でも手加減はしないからね……覚悟はいいかい?」

「私も、例え相手が弱者でも手加減はしないよ」

『ご主人様、本当の事言っちゃダメ』

「……貴様らぁ」


 俺が珍しく挑発をするとバルテンは苛立ちを隠さず、顔を怒りで歪める。 まあ、挑発をしてきたのは相手が先だし、自業自得だろう。


「では! これより闘技大会決勝バルテン対レイ! これより始めます」


 俺たちがやや剣呑な雰囲気になっていると、審判がまるで仲裁するように声を発する。


「……まあいい、この試合で君を倒して僕が優勝するのは変わりないんだ……精々吠えていると良い」

「はいはい、負けフラグ乙」

『フラグって何?』


 黒猫さんが俺のセリフに対して疑問を浮かべていたが、それに対して俺は何も答えなかった……別に知らなくても良いことだしな。


「さあ、勝負をしようじゃないか!」

「そこには同意します!」

『案外余裕そうだね』

「し、試合、開始!」


 俺達の決勝戦らしくないノリに審判が動揺しつつも……あの審判笑ってね? 頑張って堪えてるけど、笑ってね?


「では、行かせてもらうよ!」


 審判の様子に気付かなかったようでバルテンがレイピアを構え突進してくる。 ……しまった、反応が遅れた!


「黒猫さん!予定通り!」

『了解!』


 とりあえず黒猫さんに指示を出す。……だが俺にはバルテンが一気に攻めてくる。 このままじゃあ矢は放てない!


「遅いよ」

「ッ!【魔法 簡易結界】」


 バルテンのレイピアによる突きにギリギリで硝子のような半円球状の結界が発生する。


「……防御魔法か」

「カウンターファントムがいるせいで貴方には攻撃出来ないからね。 私は、ここで貴方を足止めしますよ」

「……! じゃあ、使い魔が!」

「……残念ながらそれもさせない!【魔法 バインドチェーン】」

「なっ!」


 俺の周りの結界が消え地面から銀色の鎖が出てきて、バルテンの体に纏わりつく。


「さあ! 黒猫さん! やっちゃいなさい!」

『ゴメン、結構厳しい』

「……え?」

『相手、闇属性じゃダメージが効かないみたい。 私だけじゃキツい』


 モンスターには攻撃が通りづらい属性というのがある。 どうやらカウンターファントムは闇属性に強いらしい。 黒猫さんは闇属性の魔法しか使えないと「マジック・テイル」の攻略wikiにも書いてあった気がする。 ……捕獲したモンスターなのに属性の相性の事をすっかり忘れていた。


「……これはまずい」

「……それは、僕のセリフだね」


 バルテンが何か言っているがスルーする。 【魔法バインドチェーン】は相手の動きを止める魔法で、モンスターを捕まえる事が出来る捕獲魔法の一種だが、使っている時は他のスキルを全く使えないという弱点がある。


「黒猫さん、とりあえずダメージを与えて!」

『……了解』


 黒猫さんに簡単な命令をした後、俺は考える。 この後、一体どうしたら良いんだ?






視点変更 レイ→アリア


「動きが無いですね」

「うん、決勝戦にしては珍しいね。 もっとドンパチすると思っていたのに」


 レイさんの試合を観戦していたら思わず呟いてしまった。 レイさんの作戦は防御魔法や捕獲魔法でバルテンさんの足止めをし、黒猫さんがカウンターファントムを倒すという物のようだ。 ……けど黒猫さんが予想よりもカウンターファントムに苦戦している。 最初は黒い槍が出てきたり、何故かカウンターファントムの周りが爆発したりしたがカウンターファントムに効果が無かったようで、今黒猫さんはどうやってカウンターファントムを倒そうかお座りしながら考えているようだ。


「バルテンなんて放っておいて黒猫さんを助けに行けばいいのに……」

「そうもいかないんじゃない」

「え~サラ、どういう事?」

「多分レイちゃんが気にしているのはバルテンよりもカウンターファントムが襲ってくること」

「そりゃそうだよ、あんな強そうなドワーフが一瞬でやられちゃったんだもん……警戒するに決まってるじゃん」

「カウンターファントムは主が傷ついても攻撃してくるからバルテンを捕獲したんじゃないかしら?」

「つまり、バルテンさんを放っておけばバルテンさんが自ら傷ついて、カウンターファントムに攻撃されるかもしれないという事ですね」

「ならバルテンを直接攻撃して、一撃で倒せばいいのに……」


 サラさんの予想にアルカさんが疑問の声を上げる。 まあ、アルカさんの疑問は最もだカウンターファントム云々よりもバルテンさんを倒した方が早い、けど……


「多分、レイさんは相手に致命傷を与えたくないんじゃないんですか?」

「何という余裕……」

「レイちゃんなら有り得そうね……」


視点変更 アリア→レイ


「そうだ!」

『何か思い付いたの?』

「僕を倒す作戦でも出来たのかな?」


 バルテンを鎖で捕まえてから約2分。 その間は無言がずっと続いていたがようやく俺が口を開いた。


「黒猫さん! 頑張って!」

『……え?』

「今からバルテンをぶっ飛ばすから」

「僕をぶっ飛ばす? 一体どんな冗談だ? カウンターファントムが攻撃をしてくるんだぞ」


バルテンが見下した顔で俺に言ってくる「何言ってるんだコイツ?」感漂う雰囲気だ。


「だからどうしたの!」

「な、本気か!? カウンターファントムの力を君は知っているだろう!」

「必殺! 吹っ飛びパンチ!」

「話を聞けえええぇぇ!」


 俺が吹っ飛びパンチ、もといアッパーをバルテンの顎に思いっきり当てる。 アッパーをするの初めてだが予想以上にクリーンヒットし、走り高跳びの選手のように綺麗な弧を描いてバルテンが飛んでいく。


『ご主人様! そっちに!』

「え?」

『カウンターファントムが!』


 黒猫さんの言葉を聞いた時、俺の目の前に全身黒い人……カウンターファントムが立っていた。


「ちょ、早!」


 カウンターファントムは殴ろうとしてきたので弓を捨て守りの体制にはいる。


「僕もいるよ」

「……ッ!?」


 カウンターファントムの攻撃に備えていた時、背中から痛みがする。


「……結構飛んだと思ったんだけどな~」

「こう見えてもAランクだしね、モンスターに殴られるのには慣れている」


 気づけば後ろからレイピアで刺されており体を見事に貫通している。 その後、バルテンがレイピアを抜いた瞬間、カウンターファントムにありったけの力で闘技場の壁に殴りつけられる。 元の世界じゃこんなハチャメチャバトルをしたことが無いため激痛という言葉通りの痛みが体全身に走る。 レベル500になって体が頑丈になってもこういう痛覚は丈夫にはならないのか……。


「……」

「君は明らかに甘い。 人を攻撃しようとしない冒険者が僕に勝てるはずが無い」


 意識が朦朧としている俺にバルテン歩きながら近づいてくる。  顔は明らかに勝利を確信した腹が立つ笑み、右手には俺の血で赤くなっているレイピア。  俺はこの世界に来てからこのとき初めて死を覚悟しかけた……けど。


「まだ負けるわけにはいかない……」

「まだ、手があるのかな?」

「……黒猫さん、カウンターファントムを止めといて」

『了解、ご主人様は?』

「バルテンとカウンターファントム、どっちも倒す。 【魔法 フェアリーライト】!」


 やっぱり闘うには死と向き合わなくてはいけない……でも俺はどっちとも向き合わない。 相手を殺したくないし、俺も死にたくなかった。 優柔不断って日本人の特権じゃん?


「!? 一人で回復魔法だと! だが!カウンターファントムが!」

「【召喚 シャイニングユニコーン】! カウンターファントムへの対策はもう済んでるよ!」


 バルテンが焦っている間にスキルが発動し、地面に魔方陣が浮かび上がる。 そしてそこから純白の体に金色の角をもった美しい馬が俺の前に立っている。


「馬鹿な! 試合中に【召喚】だと!?」

「シャイニングユニコーン! 黒猫さんを助けに行って!」

『……私、囮?』


 ……黒猫さんの悲しそうな声がした気がするが気のせいだろう。 シャイニングユニコーンは俺の命令を受けると直ぐに黒猫さんとカウンターファントムの闘っている所に行……かないで立ち止まったまま魔法を放った。 空から何百もの雷が落ちてきて全てがカウンターファントムにぶつかる。 カウンターファントムはそれに耐えきれず悲鳴を上げながらまるで溶けるかのように消えていった。


「格好良く走って助けに行かないの!?」

「……」


 俺の突っ込みに対してシャイニングユニコーンは思いっきり無視してくる……喋れないだけだろうけど。 とりあえず俺はシャイニングユニコーンさんの事は放っておいてバルテンに顔を向ける。 バルテンは顔を蒼白にして、俺たちを見ている。


「僕のカウンターファントムを倒すなんて……君たちは一体何者なんだ……」

「普通の元ひきこもりエルフですよ。 それよりも、これから3対1で闘う? それとも降伏する?」

「……降伏しよう」


 バルテンはまるで呟くように言いながら負けを認め、膝を地面に着け項垂れた。 俺はそれを見つつ、不機嫌そうな黒猫さんといたって真顔のシャイニングユニコーンの所歩いて行く。


「試合終了! 勝者レイ!」


 審判がそう叫んだとき。 ずっと静かだった観客席から大量の歓声が飛んでくる。


「……とりあえず、目標達成だね」

『やっと終わった』


 流石に黒猫さんは疲れたようで眠たそうに目をパシパシしている。


 こうして闘技大会は幕を閉じたのであった。

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