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第31話 貴族って意外と……

「なあ陸、カウンターファントムって捕獲したか?」

「カウンターファントム?……あの黒い影みたい奴?」

「ああ、そうだ」

「捕獲はしたけど、そんなに強くなかったよ。 あれがどうかしたのか?」

「そいつ、ずっと黒い影のまんまだったか?」

「ああ、あいつを攻撃しても何にもなかったし、ホワイトジャイアントがカウンターファントムと戦ってる時に出て来たから直ぐに捕獲してホワイトジャイアントと戦ったからどんなモンスターかサッパリ知らないんだけど……」

「……なるほど、そのホワイトジャイアントがリーダーだったのか」

「リーダー?どういう事だよ?彰」

「ああ、カウンターファントムっていうのはリーダーに従って戦うモンスターの使い魔みたいな奴らしい」

「へぇ~」

「それでカウンターファントムが従っているリーダーがダメージを受けなければ何もしないけどもしリーダーがダメージを受けたら……」

「……受けたら?」

「……カウンターファントムの形状が変わって大暴れするらしいぞ」

「……何ソレ怖い」





視点変更 レイ→ダイナン


「ダイナン! 先に使い魔を攻撃して!」


 俺がレイピアの攻撃を斧で受けたとき歓声のする観客席の方から女性の声が聞こえた気がした。 ……確かこの声は


「おう!お嬢さんか! 悪いな! 今取り込み中だ!」

「って私の声が聞こえた! 耳がいいんですね!」

「お前の声は綺麗だからな! 聞き取りやすいんだ!」

「あなたの声も大きくて聞き取りやすいですよ~!」


 やっぱあのお嬢さん色んな意味でおかしいんじゃないか? こっちはかなりの強敵と闘っているというのに話し掛けてきて。


「で、用件は何だ! こっちは精一杯なんだ! 言いたいことがあるなら早く言ってくれ!」

「あ! はい! そっちの貴族よりも先に使い魔を倒して下さい!」

「それに何の意味がある!」

「使い魔の持ち主がダメージを受けるとその使い魔が暴れ出すんです! 今は互いに怪我をしていないんで大人しいですけど一撃でも与えたらダイナンが死にますよ~!」

「な!」


 俺は上手くレイピアを避けながら周りを見渡す。 すると明らかにおかしい黒い影が存在した。 あれが使い魔か……。


「ッチ、あの女……」

「その反応からしてお嬢さんの言ったことは本当のようだな……」

「ああ、その通りだあれが私の使い魔だ」


 対戦相手のバルテンという男は冷静過ぎる声で俺に話し掛けて来る。 どうやらこの男、何時もは自分の剣だけで闘い、もしも自分が怪我をしたら使い魔に倒して貰うという作戦のようだ。


「だが使い魔を倒しには行かせないよ。 僕も優勝したいからね」

「そんなのは分かっているが小僧! それは俺も同じだ!」


 レイピアによる攻撃を斧で受けつつ、考える。 お嬢さんのアドバイスは良かったがこの後どうする?



視点変更 ダイナン→アリア


「う~ん……防戦一方だね」

「まあ、相手の作戦が分かっても対処法が無いですからね」


 アルカさんが何を考えているのが分からないのんびりとした声を状況を説明する。 レイさんがアドバイスをしてからはダイナンさんが一方的に守る展開になっている。


「レイさん、どうやればダイナンさんが勝てるんでしょうか?」

「う~ん、私なら幾つかあるけど……ダイナンさん弱いしな~」

『っていうかアリアはダイナンを応援してたんだ』

「バルテンっていう人嫌いですから……黒猫さんはどっちを応援しているんですか?」

『どっちも負けてほしいと思っている』

「まさかの不戦勝狙い!?」


 黒猫さん的には優勝すればそれでいいようだ。 ……まあ、優勝が目的だからそれでいいんですけど。


「でも決勝で勝ってこその優勝じゃないですか?」

『優勝すればいいんだよ。 過程なんて知らないもん』

「黒猫ちゃん……何て恐ろしい子!」

「今回はアルカに同意するわ……」


 アルカさんとサラさんが黒猫さんの言葉に戦慄する中試合を見ていたレイさんがポツリと呟く。


「……動いた」

「え?レイさん?」


 レイさんってこんな小さな声で喋れたんですね……。





視点変更 アリア→ダイナン


 バルテンからのするどい突きを斧を使いながら避けていたがその斧を思いっきり振り上げ、そのまま振り下ろす。 やはり俺はちまちまと守るのが苦手だから一撃で決めようとする。 しかしバルテンは素早く横に避け俺に突きをくらわせようとレイピアで攻撃してくる。


「中々強かったけど終わりだよ」

「それはどうかな! 小僧!」


 俺はバルテンからの攻撃がそろそろ当たると言うところで大声で叫び返し。 たまたま思いついた作戦を実行に移す。


「【奥義 砂起こし】!!」

「なっ!?」


 レイピアを素手で掴み、足を地面に踏みつける。 地面からは驚くほどの砂が一気に舞いバルテンの姿を見えなくする。 そして、俺は斧を片手で持ち、相手の使い魔の場所を探しつつバルテンから離れる。 ……さて、あの使い魔は……。


「……っく、私を置いて使い魔を攻撃するつもりか! そうはさせんぞ!」


 バルテンの使い魔を探していたところ。 バルテンの叫び声が聞こえ、視界が一気に揺らいだ。





「グハッ!」

 いきなりの強い衝撃が横から来たようで、壁までぶっ飛んだようだ。 背中から嫌な音がする。 


「一体何が……」


 全身が痛む中目を開け何が起こったか確認しようとする。 すると目の前には全身が黒曜石で出来たような人が居た。 ……いや、人と言うよりは悪魔だろう。 背中には翼が有り頭に当たる部分には巨大な角が二本生えている。


「何だよこいつ……」

「私の使い魔だよ」


 俺が呟くと砂煙の中から人が出てきた……マントを羽織った金髪の男、バルテンだ。


「使い魔……? だが、そいつは主が傷つかないと攻撃はしないはず……」

「そう、だから傷ついてあげたよ。 相手から傷を受けなくちゃいけないって訳じゃない」


 バルテンは左手の手のひらを俺に見せる。 その手は真っ赤に血で濡れていた。


「そんな事も出来るのか……」

「そう、出来るよ……けど君のせいで傷ついてしまったな……この大会は傷一つつかずに勝つつもりだったのに」


 その男は不機嫌を隠さずに俺に話しかける。 そして目の前の男は俺に一言軽く頼み事をするように言った。


「だから、死んでくれない?」


 その言葉を男が発した瞬間。 ドス黒い悪魔がこっちに恐ろしい速さで突っ込んできて……俺の意識は無理矢理刈り取られた。










 目を覚ましたらベットに寝ていた。 俺はあの試合の後、闘技場にある病室に移動され、治療されていたようだ。


「お、ダイナン起きた~。 大丈夫?」

「ん? ああお嬢さん。 悪いな、アドバイス受けたのに全く勝てなかった」


 何故か俺の病室には銀髪エルフのお嬢さんと黒猫、そして黒髪のエルフの少女が居た。 黒髪のエルフは確か決闘の時に一緒に居たな。


「目を覚ましたんならもう大丈夫だね。 アリア、黒猫さん、もう帰ろ~作戦を考えないと」

「え、レイさん!? ちょっと待ってください!? あ、ダイナンさんすみません、失礼します」

『じゃあね~』

「あ、ああ……」


 俺の病室に居た二人と一匹は俺の病室に居るのかに関して何の説明もせずに帰ってしまった。 本当いきなり何なんだ……。 俺が呆然としていると今度は真っ白なナース服を着たエルフの女性がやってきた。 どうやら闘技場にいる看護師のようだ


「ああ、目を覚ましましたか……体調はどうですか?」

「問題はないが……無さすぎて驚いている。一体何がどうなったんだ?」

「それはさっきの少女達のおかげですよ」

「お嬢さんのおかげ?」

「はい」


 俺が看護師に聞いたところ俺は使い魔の攻撃を受け、瀕死の状態だったらしい。 そして治療しても生きられる確率は絶望的だったらしい。 それで医者が諦めていたところ銀髪のエルフが治療室に押し入り、俺に対して回復魔法を使ったらしい。 回復魔法を使ったらみるみるうちに怪我が治り直ぐに安静になり、今に至るようだ。


「何者だよ、あのお嬢さん……」

「本当ですね、回復魔法を汗一つかかずに使い、治療しましたよ」

「……」


 俺はお嬢さんに感謝しつつもやや恐ろしい化け物に会ったような気分になった。

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