第2話 初めての空の旅(少しだけ)
視点変更が少しだけあります。
とりあえず商人の置いていった馬車に二人で乗り、精霊の言っていた町を目指す。 今は背の高い草がない、物語ではよくありそうな、なにもない草原を走っていた。 アリアというエルフの少女(14歳らしい)は自己紹介して馬車に乗ってからは全く会話がない。 ……正直この沈黙は俺は苦手だ。 しかし何か喋りたいけど、今のこの世界のことはよく分からないため何て話しかけたらいいか分からないという状態に陥っている。
「……あの。」
「ん?何?」
「今、何処に行こうとしているのですか?」
「うーん、とりあえずこっちに行けばいいって精霊は言ってたんだけどねー。」
「何処の国の町かは聞きましたか?」
「ん?知らないって精霊は言ってたよ?」
「そ、そうですか……」
なんか、アリアは俺に不安げな目を向ける。 まあ、何処に行ってるかさっぱりだから気持ちは分かるが。
しばらく移動し続けてきたが、日も沈みかけてきたので、アリアちゃんと野宿の準備をする。 とは言っても、馬は周りの草を適当に食べていて、俺は【召喚 ナイトウルフ】を発動していた、ナイトウルフはレベル50くらいででてくるモンスターだが一回に五匹くらいで出てくる事が多く初心者キラーとも呼ばれたモンスターだ。 俺は、ナイトウルフを5匹程召喚し、モンスターが来ないかどうか見張らせている。
「……あの、召喚どうやったんですか?」
「どうやったって……スキルを使っただけだけど?」
「でも……召喚は三人がかりでやらないと出せないって……」
「え?そんなに必要なの?」
「えっ」
「えっ」
「……あなた何者ですか?」
「何者って言われても……言うなら森の中でずっと引き籠もり生活をしてたとか?」
「……とかって言われても……」
ひとまず世間知らずキャラで行けばなんとかなる!……きっと。
~次の日~
とりあえず、起きて商人の置いていった食料を適当に食べ、ナイトウルフの召喚を解除する。 【召喚】で出されたモンスターや使い魔は大体12時間で自然に解除される。 それ以外にもプレイヤーが解除を命令すれば消えてくれる。 「マジック・テイル」では攻撃を一緒にしてくれたり、空を飛べるモンスターなら乗って移動したり等は出来たが。 こっちの世界ではもっと細かい命令を聞いてくれるようだ。
馬車にアリアと乗っていると大きな砦が見えてきた、ここが国境なのだろう……多分。
「……あの。」
「ん?何?」
「入るのには通行証とか必要じゃないんですか?」
「……あーそうだよねーそうだろうねー。」
俺はとりあえず捨てられていた所をおじいさんに拾われ、森の中で生活していた世間知らずなエルフという風にアリアに説明したので通行証は無いと確信しているのだろう。
「とりあえず中に入ってギルドカードでも作れば国民扱いされますのでとりあえず中に入る方法を探したいんですけど。」
「……私いくつか思いついたけど……どうする?アリア?」
「中に入る方法ですか? では言ってください。」
「……砦を破壊する。」
「……却下です。」
「な、なんでダメなの!」
「むしろ聞きますけどどうやって破壊するんですか!」
「そりゃあ、【魔法 エクスプロード】で……」
「明らかにダメです!目立ちます!」
「じゃあ、あそこで見張っている騎士を皆【奥義 パラライズアロー】で……」
「ダメです!とりあえず目立ってもいいから他の人達に迷惑を掛けないようにしましょう。」
「うーん、ならモンスターを召喚して……」
「召喚して?」
「砦を跳び越えちゃおう!」
「……まあ、それでいいです。」
アリアはとても重いため息を吐いていた……流石に誘拐されて、いきなり見ず知らずの人と旅をしているのだつかれが貯まっているのだろう。 俺は、とりあえずアイテムボックスを喚びだして、破魔の弓と矢筒を入れる。 そしてアイテムボックスの中から純白の杖を取り出す。 この杖はシャイニングワンドというSランクの装備である。 魔法攻撃力の高さと回復量の増加、光属性の魔法の威力上昇といった能力を持っている。 何故破魔の弓からこっちに変えたかって? 破魔の弓は、矢筒も一緒に持たなければいけないから重たいという微妙な理由なので気にしない事。
「【召喚 ペガサス】」
「はい!?」
なんかアリアがとても驚いているがそれを無視して真っ白な翼の映えた白馬が現れた。 おお、現実で見るとなかなか格好いい! ペガサスは一年に一週間しかおきないイベント「伝説の駿馬を探せ!」でしか出てこないボスモンスターである。 HPは高いし、上級魔法をガンガン浴びせてくる、そのくせ本人はよく逃げるとめんどくさいモンスタートップ10には入るくらいのモンスターである。
「ほ、本物?私、物語でしか聞いたことが無いんですけど……」
「本物、本物。さあ!乗って乗って!」
私が素早く跨がってその後ろにゆっくりとアリアが乗る。 ……ちなみに馬車は置いといて、馬車を引いていた馬は私の使い魔扱いになってましたよ、商人から盗った時に捕獲した事になったのだろうか?
「うわ!本当に空を飛んでる!」
「そうだねー。」
ペガサスで空を飛ぶと風が直に当たり中々気持ちいい。 しかも俺は、飛行機にすら乗ったことがないのでとてつもなく興奮していたが、アリアはかなりおびえているようだ。
「見て見て!砦があんなに小さい!」
「ちょっ!こんなに高く飛ばないでください!砦を越えるだけなんですからもっと低く飛んでください!」
俺はもっと飛んでいたいが、アリアがあまりにもおびえて俺の体に抱きついて胸とかがくっついているので、砦を越えて、一気に高度を落として地面に着地する。
「空の旅楽しかったじゃん?」
「こ、こんなのだったら、本当に砦を壊した方がよかったかもしれません……」
「もう、そんなにすねないで、ね?」
涙目になっているアリア……中々かわいいなぁと思いつつも二人で国境沿いの町に歩いて進む。 ペガサスは目立つから召喚解除した方がいいとアリアが主張するので召喚解除しておいた。
視点変更レイ→レオード
「ふむ、では行ってくる。」
「了解しました団長!このルードの町は必ずやお守りいたします!」
「ハハハ!その調子だ。」
私は、今オルアナ王国の国境沿いの町ルードにいる。 今日、私の部隊任務は、ハイナ教国とオルアナ王国の間にあるアルネの森周辺の調査だ。
アルネの森は、戦争の後100年間足を踏み入れた者を返さなかったという魔の森としても知られている。 その理由は異常な程レベルの高いモンスター達が原因である。 そのせいで、今もどちらの国の領域になっていない森だ。 私の部隊はその森に足を踏み入れる予定はないがアルネの森からモンスターが出ていないか周りを調査するのである。
「ルブラ隊長!あ!レオード団長も!」
「うむ、どうした!」
「砦をモンスターが飛び越えてオルアナ王国に入りました!」
「何!何故止められなかった!」
「そ、それが。 そのモンスターがペガサスでして……」
「……ペガサス!?」
ペガサスは100年前の戦争の話にも出てくるモンスターである。 飛びながら魔法を使い、空から雷を降らせて騎士や冒険者達を苦しませたという。 そんなモンスターがオルアナ王国に入った!?
「もし、王都に入られたら!大問題になるぞ!急いで騎士を集めろ!ペガサスを探して討伐しろ!」
絶対に、王都には入らせん!