第27話 あのなんかイラつく貴族に関する考察?
「バルテン・リヴィル?」
「ええ、大会に出場してるらしいんですけど知っていますか?」
今俺は大闘技場の観客席にアリアと黒猫さん、それにサラさんとアルカさんの四人と一匹で集まっていた。ちなみに今日は午前と午後に一回ずつ試合があったのだが三回戦目の相手が前回の俺の試合を見てビビったのか棄権したらしく午前は暇になりアリアと一緒に試合を見学する事にした。
「あ~そこそこ有名ね。貴族なのにAランク冒険者に成ったらしいから話題に成ってたよ」
「貴族が冒険者になるのって珍しいの?」
「そりゃ命がけでモンスターと戦わなくても遊んで暮らせるくらいのお金なら持っているだろうしね」
「サラさん……流石にそれは偏見ですって……よく分からないけど貴族にもやることはあるんじゃないですか?」
『ふ~ん』
そして今は昨日会ったややムカつく男……バルテンについてギルドの受付嬢をしている二人に聞いている。
「……そういえばバルテンっていう人さ盗賊の逮捕とかの人に関する依頼ばっか受けてたよね」
「あぁ、そういえばそうね」
「……対人戦は完璧って事だよね」
成る程、バルテンが対人戦云々言っていたのはそういう事か。
「後、使い魔を何人か持っていたらしいよ」
『私に話をふっかけてきたのはそのためか』
「使い魔の事を過大評価していたのは使い魔の強さを知っていたから何でしょうか」
「……例え使い魔を持っていたとしてもね」というバルテンの言葉。この言葉は黒猫さんの事を甘く見ていないとも取れるのか……。
「……本当に厄介そうだね」
「レイちゃんがそういうのなら厄介なんだろな~」
『アルカが言うとそうには聞こえない』
「黒猫ちゃん酷いよ~」
アルカさんと黒猫さんのせいで話がそれ始めたがサラさんが溜め息を着きながら話を修正する。
「あの二人は置いといて……リヴィル家の事を冒険者達から聞いたけど何かと悩みがあったみたいですね」
「悩み?」
「ええ、長男はリヴィル家の跡継ぎで次男はオルアナ王国の騎士隊長の一人……なんか自分だけ何も名誉な事はしていないって酒場で愚痴を言っていたらしいね」
『名誉が欲しいから闘技大会に出たって事?』
「ふ~ん」
やっぱりああいう男にも悩みがあるもんなんだな。 俺は闘技場の試合を見ながら呟くのであった。
視点変更 レイ→彰
「マジック・テイル」であった有名な事件が幾つかある。 運営の気まぐれで作られたモンスター、ジャイアントスパイダーが街にやってきて荒らして回り初心者プレイヤーが大量に死んだ「ジャイアントスパイダー襲撃事件」。 そしてジャイアントスパイダーを捕獲したあるプレイヤーが戦争中に召喚し敵味方関係なしに大混乱になった「ジャイアントスパイダー召喚事件」。 そして運営のミスで起こした大問題「経験の腕輪事件」。この三つを「マジック・テイル三大事件」と呼んでいる。 ……よく思えば陸はあの三つの事件全てに関わっていた特に「経験の腕輪事件」には……。 あの事件は良くあんな丸く収まったのか不思議に思うくらい大事件で大問題だったと思う。
「アキ~!何ボッーとしてるの?」
「あ、わ、悪い!」
「もう~これからソウルユニコーン捕獲しにいくのに」
同じギルドのアルナに呼びかけられ俺はふと意識が戻る。 今は「マジック・テイル」で獣人族の「アキ」としてプレイしているちなみに男のアバターである。 俺の友人みたいに女のアバターではない。
「友達が行方不明なのは分かるけど……そんなに落ち込んでると友達が帰ってくる前に鬱になっちゃうぞ」
「……まあ、軽く欝になってるけどな」
「も~そんな事また言って……あの頃のアキはどうしたのさ」
「……悪い」
アルナは「マジック・テイル」のβテストの頃に知り合った女ユーザーでなかなかの美人だ明るくて気の利くいい人だ。 年は俺の一つ上の18歳らしい。 俺的には好みだ。
「どうしたの?アキ何かいやらしい目して」
「……いや何でもない」
……どうやら俺は思っている以上に神経が太いのかもしれないそして何か陸に謝りたくなってしまった。 お前の心配より下心の方がはっきりと顔に出てしまった。
「じゃあ行くか。 ソウルユニコーンを捕獲しに」
「うん!レッツゴー!」