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第21話 闘技大会の始まり

視点変更 アリア→レイ


 なんだかんだあって大会当日になった。 え?早い?だって何にも無かったからしょうがない。

 闘技大会は首都ハイルズの東にある大闘技場でやるらしい。 場所はアリアと一緒に探索したおかげで分かっていた。 闘技大会の受付も九時にきちんと済ませてあるので問題無い。 今は、選手待合室で黒猫さんと共に居る。 アリアは観客席の方に行ってしまった。 

 選手待合室には他にも筋肉ムキムキのドワーフ……あれ?アントシア卿に雇われた人じゃね?こっちをチラチラと見ていて中々怪しい人だ。 他には細身でマントを着ているエルフや胸と下半身の大事なところ以外全て丸見えの中々きわどいネコミミ獣人族のお姉さんも居る。


『あれ? あのドワーフって……』

「言っちゃダメ! あっちの負けた人に迷惑でしょ!」

「ちょっとお嬢さん!聞こえてるよ!」


 しまった聞こえてた。 俺はとりあえず筋肉ムキムキのドワーフに顔を向ける。


「お嬢さんも闘技大会に出場するのか?」

「そりゃ、もちろん! ここにいるんだし。」

「そ、それもそうだな……。」


 ドワーフの男が体格に似合わない小さな声を上げたがすぐに大きく笑った。


「ハッハッハ! まあ、勝負する時になったら今度こそ正々堂々と勝ってやるぞ!」

「こっちもまた勝負して打ち負かしますよ!」


 その後は二人で握手をした後に簡単な自己紹介などをして喋っていたのであった。





視点変更 レイ→サラ


「レイちゃんいつ出場かな?」

「6組目だから……午後一時頃ね。」


 アルカがのんびりとした口調で私に聞いてきたのでパンフレットを見ながら答えた。 今は大闘技場の観客席に二人で観戦に来ている。


「レイちゃん……大丈夫かな?」

「大丈夫って……どういう意味?」

「いや……勝てるかな~って。」

「それなら大丈夫でしょ。」


 Aランクの冒険者のドワーフに決闘で圧勝したエルフがいるってギルドで話題になっていたし、心配はないだろう。


「でも怪我とかしたら嫌だな~って。」

「怪我はしょうがないでしょ冒険者なんだから。」


 むしろ怪我しない冒険者はいない……当たり前だが。 こんな風にアルカいつも通りといえばいつも通りの遣り取りをしていたのだが。


「あ、お~い! アリアちゃ~ん!」

「あ、サラさんにアルカさん!」


 アルカがレイちゃんといつもなら一緒に行動しているアリアちゃんを見つけ、声を掛けた。


「今日はレイちゃんと黒猫さんは一緒じゃないんだね。」

「レイさんと黒猫さんは、大会に出ますから選手待合室にいますよ。」

「当たり前でしょアルカ。」


 アリアちゃんが私の隣の席に座る。 まだ会って間もないがアリアちゃんはいつもレイさんと一緒だから一人なのは珍しい気がする。


「あ、開会式が始まりますよ。」

「っという事は女王様見れるかな? サラ!」

「開会の言葉で出てくるんじゃ無いかな?」


 華やかな音楽と一緒に選手が出場してくるが……。


「一人目立ってるね~。」

「まあ、白いワンピースだからね。」

「レイさんだけですね……あんな軽装。」


 周りが屈強な男が多く、体が細い人が数えるほどしかいない(なんかずいぶん露出が多い人もいるが)のに一人だけ真っ白で明らかに戦いには不向きそうなワンピースはかなり目立っていた。


「本当にあの服で闘うの? レイちゃん。」


 アルカの表情からして心配しているようだがアリアちゃんはやや苦笑いしている。


「まあ、レイさんですから。」

「レイちゃん……実はとんでもない子なの?」


 レイさんを見ているアリアちゃんが平然としているのにアルカと私は色々とレイちゃんに驚いていたのであった。


視点変更 サラ→レイ


 開会式……この言葉を聞くと校長の挨拶を思い出す。 体育祭の時の挨拶中に熱中症で3人倒れたという話が俺の高校では語り継がれているくらい俺の高校の校長の挨拶は長い。 しかも校長はハゲでめがねを掛けているよくある感じの校長だはっきり言って地味だ。 そんな地味な人の話を延々と聞かされていて飽きないわけが無い。

 だが、今回は女王様が開会式で話をするらしい。 俺は、どんな美人が出てくるのかワクワクしながら女王様が出てくるのを待つ。


「えー……大会のルール確認が終了したので次は女王様の挨拶です。」

(キター!)


 俺が心の中で歓喜していると観客席の所にある女王様専用の見学席から一人の女性が顔を出す。 長い金髪で目は大きめで青く、エルフの特徴的な長い耳……彼女がハイナ2世なのだろう。 中々美人だ。 俺は静かに【補助 サーチ】を使う。


【ハイナ2世 レベル18 ハイエルフ ♀】


(おおー、本物のハイエルフだ~。)


 「マジック・テイル」でも俺以外のハイエルフは見たことが無いのでやや感動する。 ヒューマンの最上級種族の仙人は1回だけ見たことあったが。


「皆さん、本日は……。」


 ハイナ2世がよくある感じの挨拶を始めるが俺は彼女の姿をジッーっと眺めて一つ思った。


「かわいいなぁ……。」

「……お嬢さん、何言ってるんだ?」


 隣に居たドワーフの冒険者が小声で聞いてくる。


「……いや、女王様かわいくない?」

「お前……女王様にかわいいって……。」


 彼は俺を見て、やや呆れた目で見ていた。 かわいいものはかわいいんだからしょうがないじゃん。


 




 闘技大会のルールはいたって簡単。 1対1の勝ち抜き戦で相手が気絶、もしくは戦闘不能と審判に判断されたら勝利。 逆に自分が気絶、戦闘不能になれば負け。 そこら辺は決闘と変わらないが制限時間がこの大会にはあり、一定時間がたてば審判が決闘を止め、勝敗を審判が決めるとのこと。 後、使い魔は一体なら決闘前に持ってきていいが決闘中に【召喚】すれば何体でもいい(出来れば)。


「う~ん、どうやって闘おうかな~。」

『またヴァイオリンじゃないの?』


 俺は、待合室で黒猫さんと武器を選んでいた。 俺の前にはアイテムボックスが置いてあり、中に弓と槍、ヴァイオリンなどの武器が入っている。


「いや、ヴァイオリンでもいいけど……目立つじゃん?」

『それ、ものすごい今更。』

「……うん、そうだね。」


 ……なんだろうものすごく俺が異常だと言われてるみたいで落ち込む。


「……まあ、ギルドカードに書いたし、弓を使おうかな。」

『あー、うん、いいんじゃない?』

「何その曖昧な返事。」

『だって、今更じゃん?』

「また言うの!?」


 俺は、アイテムボックスから破魔の弓と矢筒を取り出して顔を伏せて弦を弄ったりして自分の番を待っていたら、周りの大会出場者やスタッフから引かれてさらに落ち込んだ俺であった。


視点変更 レイ→ハイナ2世


「今、何組目?」

「5組目ですね。 女王様。」


 大会は順調に進んでいる。 大闘技場の中心には剣と盾を持つヒューマンの男性と露出が多めでナイフを握っている獣人の女性が闘っている。 ヒューマンの方が鎧も着ていて有利そうだが、獣人の方は素早い動きでヒューマンを翻弄していて中々良い勝負をしている。


「ねえ、どちらが勝つと思いますか?」

「……それは賭だと思って良いですか?」

「いいえ、単純に予想です。」


 私の秘書は頭が硬い。 現実主義で事務的で……数少ない友人からは夢見がちなあなたにはちょうどいいと笑われたが、私はそんなに夢見がちなのだろうか? 秘書は質問に対して少し考え込むと


「では、ヒューマンが勝つと思います。」


 っと答えたので私の予想を答える。


「なら、私は獣人が勝つと思います。」

「何故?」

「だって、彼女はあんなに動いているのに顔にはまだ余裕がありますから。」

「……ですが、あの守りも相当堅いですよ?」

「そろそろ動きますよ。」


 私がそう答えるか否かの所で獣人が急に早く動き相手の背後に回り、相手の首を捕らえる。


「私の、予想が当たりましたね。」

「……女王様の予想はよく当たりますね。」


 秘書がため息をついている所でヒューマンの負けを審判が宣言している所だった。


「次は、確か……唯一のEランクでしたよね?」

「ええ、そうです……あの開会式の時に目立っていたエルフですね。」

「ああ……。」


 そのエルフはとても目立っていた。 皆、鎧を着ていたりと闘う気満々の面々の中で一人だけ白いワンピースだったので覚えている。


「あの方……大丈夫ですかね?」

「Eランクでも出場したのですからそれなりに実力はあるのかもしれませんよ? 一応使い魔持ちだそうですから。」

「へぇ……。」


 私が使い魔持ちという所に不思議に思っていた所で銀の髪の少女と黒い猫が大闘技場に現れる。

 私は、彼女がどんな闘い方するのかとても興味を持っていた。 相手はやや細身のヒューマンで手には弓を持っている。 エルフの少女も弓を持っているので射撃の精密さが出てくる矢の打ち合いになる。


「では、両者共、準備!」


 審判の合図によって二人がそれぞれ静かに矢を矢筒から取り出し、黒猫が静かに体制を低くする。


「開始!」


 審判が叫ぶと少女が素早く弦を引き矢を放つのだが……。


「早!」


 隣の秘書が驚いた声を上げる……私も同意見だが。 軽く解説を入れると弓を放つまでがかなり早い。 手の動きが影しか見えないくらいの早さだったのに、正確に相手の肩を狙って打っていた。


「うっ!?」


 相手もその早撃ちに驚いた様子だが、無理矢理体をずらして何とかよけ、また狙いを定めようとするが……。


「あら、ヒューマンさんの足が……。」

「地面に引き込まれてますね……。」


 秘書が驚きをまだ隠せないようだがしっかり状況を説明してくれる。 秘書の言うとおり、ヒューマンの足が黒い穴に引き込まれていて。 まるで底なし沼のようにズルズルと地面に落ちていく。


「う、うわぁ!?」


 ヒューマンが驚いて悲鳴を上げるが、そこに驚くほどの速さで少女が走り、相手に近づき一言。


「チェイサー!!」


 と叫び、相手の腹に飛び蹴りを一発華麗に決める。 ヒューマンは見事に目を白くして泡を吹いて気絶した所で、審判が仲裁に入る。


「……予想以上に圧勝でしたね……。」

「いや、でもまさかここまでとは……。」


 秘書もややうろたえているのを私は楽しく見ながら、今回の大会はおもしろそうだとワクワクしていた。

 だけど、飛び蹴りしたら相手にパンツ丸見えじゃないのかな?




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