第20話 アリアの教会探訪
視点変更 彰→アリア
「レイさん……ダラダラしすぎじゃないですか?」
「でもすることがないじゃない~。」
決闘の次の日、レイさんがだらけきっていた。 もう凄いくらいに。
「任務とかはどうですか?」
「え~、任務の次の日だし休みたい~。」
「……まあ、そうですか。」
レイさんの魔法は凄いしその反動なのだろうか?とも思ったが単純に面倒臭いだけのようだ。
「アリア~、今日は自由行動にしよ~。」
「ま、まあそうしましょっか。 私は教会に見学に行きたいので。」
『うん、じゃあね~。』
「あ、アリア~これ。」
私が教会に行こうと準備をしていたところレイさんから何か白い石が手渡される。
「何ですか? これ。」
「精霊石だよ~もしもの事があったら守ってくれるんだよ~。」
「何て曖昧な……。」
まあ、レイさんが言うのだから能力は確かなのだろう。 とりあえず魔導院の制服の胸ポケットにしまう。
「じゃあ、行ってきます。」
「いってらっしゃーい。」
私は、レイさんに見送られながら。 宿屋から出た。
とりあえず私は、ユグドラシルの方に向かう。 首都ハイルズには教会が一つ、ユグドラシルの近くにある。 その教会ではハイナ教関係の大きな行事は殆どそこでやるらしい。 ちなみに女王様はその教会の隣にある城で暮らしている。 首都ハイルズはユグドラシルに近づくほど冒険者向けの店は減ってどっちかと言えば実用品やハイナ教関連の物を売っている店が多い。 私は、商品を眺めつつも街道を進む。
「う~ん……。」
久々に一人になったので気づかなかったが私は目立っているようだ。 ずっとだが私の服は魔導院の制服、周りの人達の服とは雰囲気が違う。 私は今更だが周りとは違うことに恥ずかしさを感じた。
「い、今更そんな事考えてもしょうがないです!」
私は、自分の考えを頭から消す為にやや小走り気味に教会に向かうのであった。
「……うわー。」
小走りで移動すること約5分、ユグドラシルの木の根元に荘厳な建物が一つあった。 窓のほとんどがスタンドグラスで出来ている。 どうやらこれが教会のようだ。 その隣にもまた大きな真っ白い建物……女王様の城があった。 表現が直球だがどちらも絵本に出てきそうな建物……かなり子供っぽいがこういう表現しかできなかった。
私は、とりあえず教会の中の庭に入る。 教会には人が少ないが何人か居る。 庭の中ではシスター服の女性が掃除などをしていたがこちらに気付きトタトタと歩いてきた。
「巡礼者の方ですか?」
「ん?ああ、そんな感じですかね。」
間違っては無いだろう……うん。
「迷惑でなければ案内して差し上げましょうか?」
「いいんですか?」
「ええ、こちらも今日の仕事はもう終わりそうですから。」
「じゃあ、お願いします。」
私は、彼女の厚意に甘えて一緒に見学することにした。
「まず、はじめに本堂がここですね。」
「……うわぁ。」
シスターに連れられ本堂に入る。 本堂はステンドグラスから入る光によってとても美しく輝いているように感じられる。
「ここに人が集まるのは降臨祭とお祈りくらいしかないですけど、巡礼者も多いですから一番入念に掃除するところですね。」
「……軽い裏事情が漏れてますよ。」
「ここは広いですから掃除も大変なんですよ。」
降臨祭、ハイナ教が出来る前からあった神話に出てくる唯一の神「ヤルトス」が世界を創り神の住む世界に帰ったという伝説がある。 その後に一度だけ「ヤルトス」が地上に降りてきた事があると言い伝えられてきた。 その日を祝うのが降臨祭だ。 私の村でも村総出でやっていたが、多分その比にはならないのだろう。 私が、ボンヤリと眺めているとシスターが私に話しかけてくる。
「後、こっちにヤルトス神とハイナ1世女王様の石像があるけど見に行く?」
「あ、はい! 行きます!」
このとき、私はほとんどの事に驚きつつシスターに着いていくのであった。
「そういえば、あなたの服見たこと無いわね、何処で売っているの?」
シスターが私に何気なく聞いてくる。
「この服ですか? ……この服は私の友人……というか仲間?から今借りているんです。」
「仲間? あなた冒険者なの?」
「いえ、私はその友人について行っているだけですので冒険者じゃないです。」
こういう言い方すると自分が少し邪魔なんじゃ無いかとも思ってしまう。
「友達は大事よね。」
「はい。」
「ハイナ教でも、「友を絶対に裏切るな」っていう教えもあるしね、知ってると思うけど。」
「常識です。 そして「友に絶対に裏切らせるな」という教えもありますからね。」
友が裏切るような行為をするな、そうすれば友は絶対に裏切らないっていう一言をハイナ1世女王様が発したことから生まれた言葉らしい。
「そういえばそろそろ闘技大会ね。」
「そうですね。」
「あなたの友達は出るの?」
「出ますよ。 Eランクですけど。」
「……それ大丈夫なの?」
「本人が大丈夫だと言ってますから大丈夫ですよ……きっと。」
「心配ね……あっ着いたわよ。」
「何処ですか? ああ!ほんとだ!」
こうして私は教会中を案内してもらったのであった。
「少し時間がかかりましたね。」
教会から出たときには夕方になっていた。 教会でシスターと話していたらいつのまにか……という感じで時間が過ぎていたのであった。
「レイさん流石にもう大丈夫……だよね?」
レイさんならまだだらけきっていそうで困るがそれもまたいいかも……と思いつつも宿屋に向かう。
「ん?」
宿屋が見えてきた所だった。 宿屋の前に人影と猫の形の影が見える。 白いワンピースに銀の髪、そして真っ白な肌……レイさんと黒猫さんが宿屋の前に立っていた。
「あ、アリア~。 おかえり~。」
『教会どうだった?』
「レイさん……黒猫さん……どうしたんですか? 宿屋の前に立って?」
レイさんに質問するとレイさんはやや笑いながら答える。
「いや~、ダラダラしたのはいいけど午後暇になったんだよね~。」
『午後になってもアリアが中々帰ってこないから待ってたの。』
「そうだったんですか。」
笑いながら答えるレイさんと猫の姿の黒猫さん……私は、この二人に絶対に裏切らないようにしたい。 そして、絶対に裏切るような事をさせたくないとふと思った。
「じゃあ、もう宿屋に戻りましょう。」
『うん。』
「夕食を食べようよ~。」
「そうですね。」
……裏切るような事はないと思いますけどね。